今回のお相手:森園凌成さん
株式会社ウィルゲートの広報担当。「いい意味で人をおどろかせる」ことが好きで、会社の広報活動をしたり、自分でもブログを書いたりしている。大好きな会社のことを、もっとみんなに知ってもらいたいと思って働いている。カレーをつくったり食べたりすることが幸せ。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.5 かのぴ:
画力を上げることを頑張っている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことが嬉しかった。
社会のトレンドをつくる
かのぴ:
広報って、どうやったらなれるんですか?
いろんなタイプがあるんですが、こうやったらなれるといったはっきりしたものはありません。例えば、PRプランナーという資格があります。広報として仕事をするうえで大事なことを学べたり、知っていることをテストを受けて証明できる資格です。ただ資格はなくても、広報になることはできます。
証明=はっきりさせること
ケイティ:
ではこの職業の魅力と、大変だと思うことは何ですか?
魅力は、社会のトレンドをつくれるということですね。会社について発信していくと、会社を知ってもらったり、いつか働きたいなと思ってもらえることがあります。大事なことを伝えていくことで、動きがないところから動きを作っていく。それってすごいことじゃないですか?
発信=いろんな人に知ってもらうために動くこと
ケイティ・かのぴ:
すごいです!
それが魅力でもあり、大変さでもあるかなと思います。
今は家で仕事をしている
かのぴ:
生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか?
同じようなことは、またやりたいと思うような気がしています。
ケイティ:
じゃあ今度はどんなところで広報の仕事がやりたいですか?
いろんなところに行くのが好きなので、東京以外もいいですね。でもそれは生きているうちにやりたいと思います(笑)。
かのぴ:
働くときは「好き」と「やらなきゃ」という気持ち、どちらが強いですか?
どちらかというと楽しいという気持ちかもしれません。いろんな人と話したり協力したりして進める仕事ですし、会社のことを伝えておもしろいと思ってもらえると、とても嬉しいし楽しいですね。
ただ仕事って楽しいことばかりじゃないんですよね。しんどいと思うこともあります。でもそれを考えて乗り越えるのは楽しい。苦しさがあるから楽しい仕事になるんじゃないかなと思います。
好きなものを人にすすめたい
ケイティ:
広報の仕事は、今の子どもにおすすめできますか?
全員におすすめできる仕事って、実は一つもないんですよね。それぞれ好きや苦手なことがありますから。でも、広報はやってみるとすごくおもしろい仕事だと思うし、合う人には合うと思います。
一人ではなくみんなで何かに取り組むことが好き、ついつい自分の好きなものを人に紹介してしまうような人には、おすすめかなと思います。一人で仕事をしていれば十分な人より、人と協力して楽しいと思える人が向いていると思います。
いろんな人と関わる仕事は楽しいですし、社外の人に会社を知ってもらう機会ってそんなにないんですよ。会社の中でも限られた人が担当しているような特別な仕事なので、興味がある人にはおすすめしたいですね。
知り合いの広報の人たちは、いいと思ったものを自然と人におすすめしている人が多いです。僕は本や音楽が昔から好きで。
ケイティ・かのぴ:
わたしも本が好きです!
そうなんですね。好きなものを自分だけで楽しむだけだと、もったいない気がしてくるんですよ。友達や人に紹介したり、あげたりしたこともありました。知ってもらいたいという気持ちが強かったので。そういう人は向いているかもしれません。
自宅の本棚には本がいっぱい!
かのぴ:
これからやっていきたいことは何ですか?
会社のファンをもっと増やしていきたいです。ファンが増えるということは、関わってくれている人が楽しんでくれているということでもあります。一つひとつの積み重ねで、ファンは増えていく。少しずつ輪を広げていきたいですね。
いい意味で人をおどろかすことに全力で取り組みながら、みんなで喜び合える。そんなことをやり続けていけたらいいなと思います。
ケイティ:
では「働く」ということについてどう思いますか?
正直、「働く」ことはつらくて、たいへんだなあと思います(笑)。尊敬するスタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんも言うように、「仕事は生活の糧を得るための手段」であり、本当に大事なのは人生だと思っています。
糧というのは、なくてはならない、必要なものを得るための手段。仕事というのはただ働くだけではなく、喜びなどを届けられる幸せなことだと思っています。
一番大事なのは人生で、その中に「働く」があって、せっかくやるんなら全力でおもしろがりながら喜びを届けていきたい。
人生において「働く」時間は、とても多くの割合を占めています。なので「働く」ことを全力でおもしろがりながら、多くの人に喜んでもらえるように仕事をしています。
割合=全部を100パーセントとしたら、そのうちのどれくらいか
占める=それでいっぱいになっていること
ケイティ:
「お金」についてはどう思いますか?
「働く」ということと近いかもしれません。お金があるから嬉しいわけじゃなく、それを価値のあるものに換えられるから嬉しい。お金そのものより、どう使うかが大事です。どういう使い方をするとより良い価値が生まれるか、を考えています。
人によっては、大好きなチョコレートを山ほど買うことが楽しみかもしれませんよね(笑)。これが自分の価値と思うことに、お金を使えばいいと思います。お金には好きも嫌いもなく、時間や経験、楽しみに変えられる「モノ」でしかないと思っています。
価値=どれほどすばらしいか、またどれくらい大切かということ
ケイティ:
森園さんの楽しみって何ですか?
すぐ楽しみになるものと、後々楽しみになるものがあって……すぐ楽しみになるものだと、チョコレートですね(笑)。
ケイティ・かのぴ:
ふふふ(笑)。
後々楽しみなるものだと、本。読んだからすぐにお金持ちになれるとか、広報の仕事ができるとかそういうものではないんですよね。でも知識を得ることによって、10年後20年後、その本からの知識がついてるからできることがある。それもまた楽しみです。
かのぴ:
私も将来お金を使うことになるので聞きたいんですが、森園さんはどんなお金の使い方をしていますか?
どんどん使ったらいいんじゃないですかね!(笑)お金は持っているだけじゃ価値にならないし、お金を使うことで経験を得られる。
例えば大学生のときにアルバイトで100万稼いでそれを貯めておくより、勉強したり海外に行っていろんな人に会ったり、物を売ってみたりなどすると自分の「経験」になります。貯めておくのもいいですけど、どんどん使っていきましょう(笑)。
大学時代には、タイへボランティアに
ケイティ:
「お金を稼ぐ」ということについてはどう思いますか?
簡単ではないですね。「稼ぐ」ってマイナスなイメージを持たれている言葉ですが、実はすてきなこと。それに1,000円を何もないところから生み出すって、すごく難しいことなんです。「働く」と同じようにお金を「稼ぐ」のは簡単なことじゃないな、と思います。
かのぴ:
お給料はどうやって決まりますか?
責任や、やったことの成果に対して給料が払われます。責任が重い人は給料も高いですし、短い時間で人から求められる成果を多く出せた人も、高いお給料が支払われます。
例えば同じイスをつくるにも、10時間など長い時間をかけて1つのイスをつくった人よりも、30 分で1つのイスをつくった人の方が多くの給料をもらうことができます。これを「生産性が高い」といいます。
学校は頑張りも評価してもらえるので、もしかしたら30分でイスをつくった人よりも10時間頑張ってつくった人の方が「すごい」となるかもしれません。でも会社ではそうはなりません。
もちろん頑張りも見てもらえるけれど、会社は利益を出さなくてはいけないので、できるだけ時間などをかけずに成果を出すことの方が大事です。
成果=やり遂げたことで得る結果
利益=もうけ。プラスになったお金
かのぴ:
お給料には満足していますか?
すごく評価してもらっていると思いますし、お給料というのは成果が認められた証でもあります。もっと成果を残したいので、ここで満足せずに頑張ろうと思います。
証=証拠
ケイティ:
広報は成果がモノではないですが、どうやって測るんですか?
おお、いい質問ですね!広報は、目に見えない目標と見える目標があります。見える目標は、記事などの発信したものがどれだけ読まれているか。100人より1万人に読まれた方がいいですよね?
ただ僕たちがしたいのは、たくさんの人に読まれることだけじゃないんです。読まれることで、社会にどれだけインパクトを与えることができるか。そこで目に見えない目標が出てきます。
「いい会社ですね」と明るい意見をもらうことが僕らのやりたいことなので、それがSNSなどで生まれているかというのは大事なことの一つ。それぞれ細かく目標やそれを管理しているシートがあって、毎週データを見てチェックしながらやっているんですよ。
SNS=ソーシャルネットワークサービス。インターネット上でコミュニケーションを取ることができる仕組み
かのぴ:
毎週!?
受注といって、問い合わせがどれだけあるかをチェックし、広報活動を通してどれだけの利益につながっているかの確認もしています。
かのぴ:
大変そう……。森園さんは、何のために働いていますか?
人の笑顔を作るためかなと思っています。広報の仕事や記事を作っていくことは、笑顔を作っていくことでもあります。そのためにはレベルの高いもの、おもしろいもの、わかりやすいものをつくる必要がある。日々努力しなくてはいけないし、人とは違うようなことをしていきたいと思います。
人の笑顔をつくるには、それだけのレベルやクオリティが必要です。日々努力しなければいけないし、せっかく働くのであれば人とは違うようなことがしたい。そう考えています。
クオリティ:質、品質。完成したものだけでなく、その過程の質をいうこともある
ケイティ:
人と違うことがしたいというのは、例えばどんなことですか?
ちゃんと成果につながるような広報を目指していきたい。記事だけ作っていればいいのではなく、いろんな人に読んでもらった結果が成果につながります。
小さな会社だからこそ、いつも会社のことを見てくれている人や応援してくれている人、つまりファンの存在を意識しています。そのファンの輪を広げていくことを、大切に取り組んでいます。
たとえばSNSを使って広報をし、そこからファンが生まれるというのは、あまり他ではやっていないことです。そういった取り組みもしながら、会社のファンを増やしていきたいですね。
今までの経験を活かしながら働いている
ケイティ:
「働く」と「お金の関係」についてどう思いますか?
ちゃんと働けばお金が得られるかというと、そうではないと思います。相手にどれだけ喜んもらえるか、認められるかがお金や価値に変わってきます。例えば……最近どんな本を読んでますか?
かのぴ:
手塚治虫のブラックジャックを読んでいます。
おお、いいですね。じゃあ同じブラックジャックでも、友達からもらうのと手塚治虫本人からもらうのとでは、価値が違うと思いませんか?
かのぴ:
違います!
それは手塚治虫本人からもらった方が、かのぴさんが嬉しいからなんですよね。もちろん友達にもらっても嬉しいけれど、作者本人にもらうのとでは価値が違う。
仕事の場合でも、どれだけ喜んでもらえるか、感謝されているか、その価値がお金にもかかわってきます。
かのぴ:
広報で例えたらどうなりますか?
どれだけ多くの人に記事を読んでもらえるか、読んだ人にどれだけいい感想や意見があるか。広報をしていればいいというわけではなくて、したことで喜んでくれたりファンになってもらうことが大事です。それが価値になります。
ケイティ:
では最後に、子どもたちにメッセージをお願いします!
いま活躍できなくても、活躍できる場所はどこかにはあります。僕は運動は苦手だったし、勉強も誰よりもできるというわけではなく、そんなに得意なこともありませんでした。
「うまくいってないけど大丈夫かな?」と思うこともあったけれど、大きくなるにつれていろんな世界や場所があると気づきました。
たまたま自分はここに生まれてこういう人たちと出会っているだけで、社会人になってから出会えるすてきな人もいっぱいいる。仕事をするようになると、また新しい発見がありますし、自分がどういう場で活躍できるのかもわかるようになってきます。
だからできないこと、活躍できないことを自分のせいと思い過ぎないほうがいいと思いますよ。
そして、「何をするか」より「どうなりたいか」を考えるのが大事。なりたい職業があっても、今の時代は変化が激しいので、その仕事がなくなるかもしれません。
例えばパティシエなら、「つくるのが楽しい」「食べておいしいと笑顔になるのが嬉しい」「世界一になりたい」など、自分が幸せだと思うことが何かをわかっていれば、もしかしたら違う仕事でも幸せになれるかもしれません。
具体的な目標ももちろんいいけれど、どんな自分になりたいかを描けたらもっとすてきだなと思います。
かのぴ:
職業よりも、どんな自分になりたいか。
そう。でもなかなか簡単には気づけないんですよね。一つひとつ経験や体験を通じてしか出会えないものだということを、覚えていてほしいです。
できることが増えると、やりたいことが増えていきます。できることを一つひとつ増やしていってください。
これから「将来の夢は?」と聞かれることがたくさんあると思います。でも変わることもあるし、焦ってもしかたない。子どものうちはまだ知っていることが限られていますから、今の自分の好きなことは何かを大事にしてほしいですね。
ケイティ・かのぴ:
ありがとうございました!
広報ってどんな仕事?
・自分の会社と社会とのかけ橋となり、自分の会社を好きになってもらう
・社外広報=会社の外の人に会社を知ってもらう
・社内広報=会社のメンバーにもっと会社のことを知ってもらう
・記事やプレスリリース、アイキャッチなどの企画・作成
・SNSを使って会社のことを周りに伝える(森園さんの場合)
広報の魅力と大変なこと
・社会のトレンドをつくれる
・0からプラスを生み出せる
・動きがないところから動きをつくれる
広報という仕事をおすすめできる理由
・やってみるとすごくおもしろい仕事
・いろんな人と関わる仕事は楽しい
・社外の人に会社を知ってもらう機会ができる
・会社の中でも限られた人が担当しているような特別な仕事
「働く」と「お金」の関係
・「働く」ことはつらくて、大変
・「働く」ということと「お金」は近い
・働いた分お金が得られるかというと、そうではない
・相手にどれだけ喜んでもらえるか、認められるかがお金や価値に変わる
森園さんの思う大切なこと
・ひとりよがりにならず、相手の気持ちを考えて行動する
・大変な仕事も乗り越えてこそ楽しく感じる
・お金そのものより、どう使うかが大事
・いま活躍できなくても、活躍できる場所はどこかにはある
・「何をするか」より「どうなりたいか」を考える
・今の自分の好きなことは何かを大事にする
こんな話もしました
ケイティ:
どうして自分でもブログを書いているんですか?
やはり、いい意味で人をおどろかすことに全力で取り組んでいきたいからですね。
自分でブログを書くことで、気づけることがあります。同じような内容を書いているのに、タイトルやアイキャッチなどの見せ方が違うだけで、読まれている数が変わります。
また、書いた記事をSNSで紹介するときに「書きました!」よりも「こういう内容を書いたので 読んでください!」と書いた方が、みんなが読んでくれることにも気づきました。
自分でやっているから試せるし気づける。ブログはお金もかかりませんし。
人に聞くのもいいけれど、自分で経験してみないと気づけないと思います。世の中には、わからないことっていっぱいあるんですよね。
例えばこのインタビューも、取材について勉強しようと思って一年間図書館に通うより、一ヶ月かけて取材をした方がわかることが多そうな気がしませんか?
ケイティ:
実際にやってみる方がわかるかもしれないです。
うんうん。勉強するより、まず自分で試しにやってみたほうがわかることもありますからね。僕はブログを書いてみたり、ラジオをやってみたり、いろんなことを試しています。一日二日じゃわからないこともたくさんあるので、最初は「いまいちだな」と思っても、長くやってみるようにしています。
ケイティ:
いまいちだなと思っても続けるのがすごいです!
森園凌成さんのSNSと会社ホームページ
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、かのぴ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO