インタビュー記事

第9回 会社と社会の架け橋「広報」 森園 凌成さん【後編】

今回のお相手:森園凌成もりぞのりょうせいさん

株式かぶしき会社ウィルゲートの広報こうほう担当たんとう。「いい意味いみで人をおどろかせる」ことがきで、会社の広報活動かつどうをしたり、自分じぶんでもブログをいたりしている。大好きな会社のことを、もっとみんなにってもらいたいとおもってはたらいている。カレーをつくったり食べたりすることがしあわせ。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

社会のトレンドをつくる

かのぴ:
広報って、どうやったらなれるんですか?

いろんなタイプがあるんですが、こうやったらなれるといったはっきりしたものはありません。たとえば、PRプランナーという資格しかくがあります。広報として仕事しごとをするうえで大事だいじなことを学べたり、知っていることをテストをけて証明しょうめいできる資格です。ただ資格はなくても、広報になることはできます。

証明=はっきりさせること

ケイティ:
ではこの職業しょくぎょう魅力みりょくと、大変たいへんだとおもうことはなんですか?

魅力は、社会のトレンドをつくれるということですね。会社について発信はっしんしていくと、会社を知ってもらったり、いつかはたらきたいなと思ってもらえることがあります。大事なことをつたえていくことで、動きがないところから動きを作っていく。それってすごいことじゃないですか?

発信=いろんな人に知ってもらうために動くこと

ケイティ・かのぴ:
すごいです!

それが魅力でもあり、大変さでもあるかなと思います。

今は家で仕事をしている

かのぴ:
生まれわってもまたこの仕事がしたいですか?

おなじようなことは、またやりたいと思うような気がしています。

ケイティ:
じゃあ今度こんどはどんなところで広報の仕事がやりたいですか?

いろんなところに行くのが好きなので、東京以外いがいもいいですね。でもそれは生きているうちにやりたいと思います(笑)。

かのぴ:
働くときは「好き」と「やらなきゃ」という気持きもち、どちらが強いですか?

どちらかというと楽しいという気持ちかもしれません。いろんな人と話したり協力きょうりょくしたりしてすすめる仕事ですし、会社のことを伝えておもしろいと思ってもらえると、とてもうれしいし楽しいですね。

ただ仕事って楽しいことばかりじゃないんですよね。しんどいと思うこともあります。でもそれをかんがえてえるのは楽しい。くるしさがあるから楽しい仕事になるんじゃないかなと思います。

好きなものを人にすすめたい

ケイティ:
広報の仕事は、今の子どもにおすすめできますか?

全員ぜんいんにおすすめできる仕事って、じつは一つもないんですよね。それぞれ好きや苦手なことがありますから。でも、広報はやってみるとすごくおもしろい仕事だと思うし、合う人には合うと思います。

一人ではなくみんなで何かに取り組むことがき、ついつい自分の好きなものを人に紹介しょうかいしてしまうような人には、おすすめかなと思います。一人で仕事をしていれば十分な人より、人と協力して楽しいと思える人がいていると思います。

いろんな人とかかわる仕事は楽しいですし、社外の人に会社を知ってもらう機会きかいってそんなにないんですよ。会社の中でもかぎられた人が担当たんとうしているような特別とくべつな仕事なので、興味きょうみがある人にはおすすめしたいですね。

知り合いの広報の人たちは、いいと思ったものを自然しぜんと人におすすめしている人が多いです。ぼくは本や音楽がむかしから好きで。

ケイティ・かのぴ:
わたしも本が好きです!

そうなんですね。好きなものを自分だけで楽しむだけだと、もったいない気がしてくるんですよ。友達ともだちや人に紹介したり、あげたりしたこともありました。知ってもらいたいという気持ちがつよかったので。そういう人は向いているかもしれません。

自宅の本棚には本がいっぱい!

かのぴ:
これからやっていきたいことは何ですか?

会社のファンをもっとやしていきたいです。ファンが増えるということは、関わってくれている人が楽しんでくれているということでもあります。一つひとつのかさねで、ファンは増えていく。少しずつを広げていきたいですね。

いい意味いみで人をおどろかすことに全力ぜんりょくで取り組みながら、みんなで喜び合える。そんなことをやりつづけていけたらいいなと思います。

ケイティ:
では「働く」ということについてどう思いますか?

正直しょうじき、「働く」ことはつらくて、たいへんだなあと思います(笑)。尊敬そんけいするスタジオジブリのプロデューサーの鈴木すずき敏夫としおさんも言うように、「仕事は生活のかてるための手段しゅだん」であり、本当ほんとうに大事なのは人生だと思っています。

糧というのは、なくてはならない、必要ひつようなものを得るための手段。仕事というのはただ働くだけではなく、喜びなどをとどけられるしあわせなことだと思っています。

一番いちばん大事なのは人生で、その中に「働く」があって、せっかくやるんなら全力でおもしろがりながら喜びを届けていきたい。

人生において「働く」時間は、とても多くの割合わりあいめています。なので「働く」ことを全力でおもしろがりながら、多くの人に喜んでもらえるように仕事をしています。

割合=全部を100パーセントとしたら、そのうちのどれくらいか

占める=それでいっぱいになっていること

ケイティ:
「お金」についてはどう思いますか?

「働く」ということとちかいかもしれません。お金があるから嬉しいわけじゃなく、それを価値かちのあるものにえられるから嬉しい。お金そのものより、どう使つかうかが大事です。どういう使いかたをするとよりい価値が生まれるか、を考えています。

人によっては、大好きなチョコレートを山ほどうことが楽しみかもしれませんよね(笑)。これが自分の価値と思うことに、お金を使えばいいと思います。お金には好きもきらいもなく、時間や経験けいけん、楽しみに変えられる「モノ」でしかないと思っています。

価値=どれほどすばらしいか、またどれくらい大切かということ

ケイティ:
森園さんの楽しみって何ですか?

すぐ楽しみになるものと、後々あとあと楽しみになるものがあって……すぐ楽しみになるものだと、チョコレートですね(笑)。

ケイティ・かのぴ:
ふふふ(笑)。

後々楽しみなるものだと、本。読んだからすぐにお金持ちになれるとか、広報の仕事ができるとかそういうものではないんですよね。でも知識ちしきを得ることによって、10年後20年後、その本からの知識がついてるからできることがある。それもまた楽しみです。

かのぴ:
私も将来しょうらいお金を使うことになるので聞きたいんですが、森園さんはどんなお金の使い方をしていますか?

どんどん使ったらいいんじゃないですかね!(笑)お金は持っているだけじゃ価値にならないし、お金を使うことで経験を得られる。

例えば大学生のときにアルバイトで100万かせいでそれをめておくより、勉強したり海外かいがいに行っていろんな人に会ったり、ものってみたりなどすると自分の「経験」になります。貯めておくのもいいですけど、どんどん使っていきましょう(笑)。

大学時代には、タイへボランティアに

ケイティ:
「お金を稼ぐ」ということについてはどう思いますか?

簡単かんたんではないですね。「稼ぐ」ってマイナスなイメージを持たれている言葉ですが、実はすてきなこと。それに1,000円を何もないところから生み出すって、すごくむずかしいことなんです。「働く」と同じようにお金を「稼ぐ」のは簡単なことじゃないな、と思います。

かのぴ:
給料きゅうりょうはどうやって決まりますか?

責任せきにんや、やったことの成果せいかたいして給料がはらわれます。責任がおもい人は給料も高いですし、みじかい時間で人からもとめられる成果を多く出せた人も、高いお給料が支払しはらわれます。

例えばおなじイスをつくるにも、10時間など長い時間をかけて1つのイスをつくった人よりも、30 分で1つのイスをつくった人の方が多くの給料をもらうことができます。これを「生産せいさんせいが高い」といいます。

学校は頑張がんばりも評価してもらえるので、もしかしたら30分でイスをつくった人よりも10時間頑張ってつくった人の方が「すごい」となるかもしれません。でも会社ではそうはなりません。

もちろん頑張りも見てもらえるけれど、会社は利益りえきを出さなくてはいけないので、できるだけ時間などをかけずに成果を出すことの方が大事です。

成果=やり遂げたことで得る結果

利益=もうけ。プラスになったお金

かのぴ:
給料きゅうりょうには満足していますか?

すごく評価してもらっていると思いますし、お給料というのは成果がみとめられたあかしでもあります。もっと成果を残したいので、ここで満足せずに頑張ろうと思います。

証=証拠しょうこ

ケイティ:
広報は成果がモノではないですが、どうやってはかるんですか?

おお、いい質問ですね!広報は、目に見えない目標もくひょうと見える目標があります。見える目標は、記事きじなどの発信したものがどれだけ読まれているか。100人より1まん人に読まれた方がいいですよね?

ただ僕たちがしたいのは、たくさんの人に読まれることだけじゃないんです。読まれることで、社会にどれだけインパクトを与えることができるか。そこで目に見えない目標が出てきます。

「いい会社ですね」と明るい意見いけんをもらうことが僕らのやりたいことなので、それがSNSエスエヌエスなどで生まれているかというのは大事なことの一つ。それぞれこまかく目標やそれを管理かんりしているシートがあって、毎週まいしゅうデータを見てチェックしながらやっているんですよ。

SNS=ソーシャルネットワークサービス。インターネット上でコミュニケーションを取ることができる仕組み

かのぴ:
毎週!?

受注じゅちゅうといって、い合わせがどれだけあるかをチェックし、広報活動かつどうとおしてどれだけの利益につながっているかの確認かくにんもしています。

かのぴ:
大変そう……。森園さんは、何のために働いていますか?

人の笑顔えがおを作るためかなと思っています。広報の仕事や記事を作っていくことは、笑顔を作っていくことでもあります。そのためにはレベルの高いもの、おもしろいもの、わかりやすいものをつくる必要ひつようがある。日々ひび努力どりょくしなくてはいけないし、人とは違うようなことをしていきたいと思います。

人の笑顔をつくるには、それだけのレベルやクオリティが必要です。日々努力しなければいけないし、せっかく働くのであれば人とはちがうようなことがしたい。そう考えています。

クオリティ:しつ品質ひんしつ完成かんせいしたものだけでなく、その過程の質をいうこともある

ケイティ:
人と違うことがしたいというのは、例えばどんなことですか?

ちゃんと成果につながるような広報を目指していきたい。記事だけ作っていればいいのではなく、いろんな人に読んでもらった結果が成果につながります。

小さな会社だからこそ、いつも会社のことを見てくれている人や応援おうえんしてくれている人、つまりファンの存在を意識いしきしています。そのファンのを広げていくことを、大切に取り組んでいます。

たとえばSNSを使って広報をし、そこからファンが生まれるというのは、あまりほかではやっていないことです。そういった取り組みもしながら、会社のファンを増やしていきたいですね。

今までの経験を活かしながら働いている

ケイティ:
「働く」と「お金の関係かんけい」についてどう思いますか?

ちゃんと働けばお金が得られるかというと、そうではないと思います。相手あいてにどれだけ喜んもらえるか、認められるかがお金や価値に変わってきます。例えば……最近さいきんどんな本を読んでますか?

かのぴ:
手塚てづか治虫おさむのブラックジャックを読んでいます。

おお、いいですね。じゃあ同じブラックジャックでも、友達からもらうのと手塚治虫本人からもらうのとでは、価値が違うと思いませんか?

かのぴ:
違います!

それは手塚治虫本人からもらった方が、かのぴさんが嬉しいからなんですよね。もちろん友達にもらっても嬉しいけれど、作者さくしゃ本人にもらうのとでは価値が違う。

仕事の場合でも、どれだけ喜んでもらえるか、感謝されているか、その価値がお金にもかかわってきます。

かのぴ:
広報で例えたらどうなりますか?

どれだけ多くの人に記事を読んでもらえるか、読んだ人にどれだけいい感想かんそうや意見があるか。広報をしていればいいというわけではなくて、したことで喜んでくれたりファンになってもらうことが大事です。それが価値になります。

ケイティ:
では最後さいごに、子どもたちにメッセージをおねがいします!

いま活躍かつやくできなくても、活躍できる場所はどこかにはあります。僕は運動は苦手にがてだったし、勉強もだれよりもできるというわけではなく、そんなに得意なこともありませんでした。

「うまくいってないけど大丈夫だいじょうぶかな?」と思うこともあったけれど、大きくなるにつれていろんな世界せかいや場所があると気づきました。

たまたま自分はここに生まれてこういう人たちと出会っているだけで、社会人になってから出会えるすてきな人もいっぱいいる。仕事をするようになると、また新しい発見はっけんがありますし、自分がどういう場で活躍できるのかもわかるようになってきます。

だからできないこと、活躍できないことを自分のせいと思いぎないほうがいいと思いますよ。

そして、「何をするか」より「どうなりたいか」を考えるのが大事。なりたい職業しょくぎょうがあっても、今の時代じだい変化へんかはげしいので、その仕事がなくなるかもしれません。

例えばパティシエなら、「つくるのが楽しい」「食べておいしいと笑顔になるのが嬉しい」「世界一になりたい」など、自分が幸せだと思うことが何かをわかっていれば、もしかしたら違う仕事でも幸せになれるかもしれません。

具体的な目標ももちろんいいけれど、どんな自分になりたいかをえがけたらもっとすてきだなと思います。

かのぴ:
職業よりも、どんな自分になりたいか。

そう。でもなかなか簡単には気づけないんですよね。一つひとつ経験や体験を通じてしか出会えないものだということを、おぼえていてほしいです。

できることが増えると、やりたいことが増えていきます。できることを一つひとつ増やしていってください。

これから「将来のゆめは?」と聞かれることがたくさんあると思います。でもわることもあるし、あせってもしかたない。子どものうちはまだ知っていることが限られていますから、今の自分の好きなことは何かを大事にしてほしいですね。

ケイティ・かのぴ:
ありがとうございました!

広報ってどんな仕事?

・自分の会社と社会とのかけ橋となり、自分の会社を好きになってもらう

・社外広報=会社の外の人に会社を知ってもらう

・社内広報=会社のメンバーにもっと会社のことを知ってもらう

・記事やプレスリリース、アイキャッチなどの企画・作成

・SNSを使って会社のことを周りに伝える(森園さんの場合)

広報の魅力と大変なこと

・社会のトレンドをつくれる

・0からプラスを生み出せる

・動きがないところから動きをつくれる

広報という仕事をおすすめできる理由

・やってみるとすごくおもしろい仕事

・いろんな人と関わる仕事は楽しい

・社外の人に会社を知ってもらう機会ができる

・会社の中でも限られた人が担当しているような特別な仕事

「働く」と「お金」の関係

・「働く」ことはつらくて、大変

・「働く」ということと「お金」は近い

・働いた分お金が得られるかというと、そうではない

・相手にどれだけ喜んでもらえるか、認められるかがお金や価値に変わる

森園さんの思う大切なこと

・ひとりよがりにならず、相手の気持ちを考えて行動する

・大変な仕事も乗り越えてこそ楽しく感じる

・お金そのものより、どう使うかが大事

・いま活躍できなくても、活躍できる場所はどこかにはある

・「何をするか」より「どうなりたいか」を考える

・今の自分の好きなことは何かを大事にする

こんな話もしました

ケイティ:
どうして自分でもブログを書いているんですか?

やはり、いい意味で人をおどろかすことに全力で取り組んでいきたいからですね。

自分でブログを書くことで、気づけることがあります。同じような内容ないようを書いているのに、タイトルやアイキャッチなどの見せ方が違うだけで、読まれている数が変わります。

また、書いた記事をSNSで紹介するときに「書きました!」よりも「こういう内容を書いたので 読んでください!」と書いた方が、みんなが読んでくれることにも気づきました。

自分でやっているからためせるし気づける。ブログはお金もかかりませんし。

人に聞くのもいいけれど、自分で経験してみないと気づけないと思います。世の中には、わからないことっていっぱいあるんですよね。

例えばこのインタビューも、取材しゅざいについて勉強しようと思って一年間図書館に通うより、一ヶ月かけて取材をした方がわかることが多そうな気がしませんか?

ケイティ:
実際じっさいにやってみる方がわかるかもしれないです。

うんうん。勉強するより、まず自分で試しにやってみたほうがわかることもありますからね。僕はブログを書いてみたり、ラジオをやってみたり、いろんなことを試しています。一日二日じゃわからないこともたくさんあるので、最初は「いまいちだな」と思っても、長くやってみるようにしています。

ケイティ:
いまいちだなと思っても続けるのがすごいです!

森園凌成さんのSNSと会社ホームページ

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、かのぴ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO