インタビュー記事

第14回 コーヒーと「あえる」場所をつくる 「バリスタ」 福原 永斗さん【後編】

今回のお相手:福原 永斗さん

東京とうきょうきた赤羽あかばねにある、「AERUアエル COFFEEコーヒー STOPストップ」というコーヒーショップのバリスタ。店主てんしゅでもある。オーストラリアでコーヒーについて学び、バリスタとしてはたらはじめた。子どものころは野球やきゅう少年しょうねんだった。人と話すことや挑戦ちょうせんすることがきで、コーヒーだけではなくデザインの仕事しごとにも力を入れている。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.9 わー:
にわとりの世話を頑張っている。書道の級が上がったことが嬉しかった。

No.15 ぜん:
勉強や友だちと遊ぶ工夫を考えることを頑張っている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。

自分がおいしいと思うものを提供する

ぜん:
この職業しょくぎょう魅力みりょくと、大変たいへんだとおもうことは何ですか?

自分じぶん努力どりょくしてれたものを、目のまえでおきゃくさんが「おいしい」って言ってくれたり、楽しんでくれている姿すがたを見れたりするのは、しあわせです。それがバリスタという仕事しごとの魅力であり、すばらしいところです。

大変なところは、知識ちしき技術ぎじゅつ必要ひつようなので、一回勉強してわりじゃないんですよね。毎年まいとし新しいコーヒーが出てくるし、「こうしたらおいしい」という情報じょうほうもどんどん新しくなってくる。

だからずっと勉強しなきゃいけないのが大変。おいしいコーヒーを淹れるためには、どんどん新しい情報を勉強して、インプットしなくてはいけません。大変だけど、すごくいい仕事だと思います。

インプット=自分の中に取り入れること

ケイティ:
おいしいコーヒーを淹れるための、こだわりはありますか?

こだわりかぁ。こだわりは、絶対ぜったい自分じぶんがおいしいと思ったものを提供ていきょうすること。たとえば、自分がおいしいと思わなくても、だれかがおいしいと思ったとします。でもそのコーヒーは提供しない。

これは自分のおみせだからできることです。みんながどこかのお店で働くとしたら、お店がおいしいと思ったものを提供する必要ひつようがあると思う。でもぼくは自分のお店だから、僕がおいしいと思ったものしか提供しないようにこころけています。そこが結構けっこう、こだわりかな。

同じく東京都北区にある2号店のapollonでも、こだわりのコーヒーが飲める

ケイティ:
コーヒーは、まめから淹れていますか?

豆から淹れています。注文ちゅうもんが入ったら、豆をいてこなにして、そこから淹れます。作りきは一切いっさいしていなくて、注文が入ってから淹れています。そのほうが、コーヒーはおいしいんだよ。

挽く=道具を使って粉々こなごなにすること

作り置き=一度にたくさん作って置いておくこと

ぜん:
豆はどうやってえらんでいるんですか?

焙煎ばいせんって分かるかな?コーヒー豆って、黒いイメージがありますよね。あれ、じつは黒くなる前ってみどり色なの。

焙煎=水や油を使わずに、火だけで乾燥させること

全員:
ええっ?

コーヒー豆は、赤いさくらんぼみたいな、小さな「コーヒーチェリー」とばれる果物くだものたねなんです。その種だけを使つかってコーヒーにするんだけど、種はもともと緑色なのね。その種を仕入しいれて、黒く焙煎する仕事をしている人がいます。僕の知り合いにも焙煎をしている人がいて、その人から仕入れています。

ぜん:
そうなんですね。

豆は、その人がっている種類しゅるいの中から選んでいます。エチオピアや、ブラジルなど数種類の豆の中から「じゃあ今週こんしゅうはこれとこれをください」と注文しています。

好きと楽しいを大切にしたい

わー:
生まれ変わっても、またバリスタになりたいですか?

そうだね。バリスタになりたい気持ちはもちろんあるんだけど、ちがう仕事を経験けいけんしてみたいなとも思う。両親が美容師をやっていたから、僕もやってみたかったなぁという気持ちもすこしあります。学校の先生っていいな、と思っていたこともありますしね。

だからまたバリスタをやりたい気持ちもあるけど、ほかの仕事も経験してみたいです。

わー:
なぜまたバリスタをやりたいって思うんですか?

バリスタをやっていて楽しいからです。大人の中には、楽しくないと思いながらはたらいてる人もいます。だけど僕は楽しいと思って働いているから、この仕事が合っているんじゃないかな。生まれ変わっても、またこの仕事でもいいかなと思えます。仕事は、楽しくできる場所を選ぶといいよ。

わー:
バリスタはいまの子どもにもおすすめできますか?

正直しょうじきに言うと、コーヒーが大好きだったらおすすめしたい。だけど、「何となくバリスタになりたいな」という気持ちでバリスタになるのはおすすめしません。なぜかというと、あまりかせげる仕事ではないから。大人になったら仕事をしてお金を稼ぎたいし、お金持ちになりたいじゃない?(笑)

全員:
はい(笑)。

バリスタという職業しょくぎょうは、なかなか稼げる仕事じゃない。だから、コーヒーのことが好きじゃないと、そしてバリスタの仕事が好きじゃないと、続かない職業だと思います。

ぜん:
ケーキなどのお菓子かし自分じぶんで作っているんですか?それともどこかのお店と協力きょうりょくして作ってるんですか?

僕の店で出しているパウンドケーキなどのき菓子は、僕のおくさんが作っています。奥さんもバリスタなので、コーヒーも淹れられるし、ケーキも作れます。

全員:
えー、すごい!

奥さんと一緒いっしょにお店をやっていて、コーヒーと、奥さんが作ってくれたケーキをおきゃくさんに提供ていきょうするお店です。

ぜん:
奥さんと協力してやっているんですね。

福原さんの奥さんがつくる焼き菓子

プロデュースやデザインもやっていきたい

ケイティ:
これからやっていきたいことはありますか?

お店のプロデュースをしてみたいです。プロデュースというのは、「お店をつくりたいけど、つくりかたがわからない」という人のおつだいをする仕事のことです。僕はお店をつくったことがあるから、どうやったらお店をつくれるのかがわかる。だからやってみたいと思って。

あと、デザインをするのも好きなんです。たとえば、Tシャツにキャラクターをデザインするような仕事。それと名刺ってわかる?自分の名前なまえ電話でんわ番号ばんごうなどが書いてある、自己じこ紹介しょうかいカードみたいなもの。そういうデザインの仕事もしていきたいと思っています。

ぜん:
自分でデザインしたお店のグッズもありますか?

いっぱいあるよ。お店の看板かんばんも自分でつくっています。これまでつくったことあるのは、トートバッグというかたにかけるカバンや、Tシャツなど。これからも、お店のグッズをたくさんつくっていきたいですね。

ぜん:
福原さんがデザインしたグッズは、どこで見ることができますか?

今はまだ見られる場所はないんです。AERUアエル COFFEEコーヒー STOPストップのオンラインショップという、インターネット上で買えるサイトがあるので、これからせていく予定です。載せたら見てみてくださいね。

お店の看板も自分でデザインした

ケイティ:
どうして、お店の名前を「AERU COFFEE STOP」にしたんですか?

アエルには、3つの意味いみめられています。まず1つ目は、「出会う」の「会う」。人と人が会える。

2つ目は「合わさる」。モノとモノが合わさる。例えばAという食材しょくざいと、Bという食材が合わさっておいしいものができるように、「合える」という意味。

3つ目は「える」。「野菜を和える」などで使つか言葉ことばです。人とモノを和えてぜるという意味。

お店にいる人と人が出会ったり、食材と食材が合わさっておいしいものができたり、人とおいしいものが混ざり合ったり。そんなお店にしたいと思ったので、「AERU」という名前にしました。

ぜん:
すごいこだわりですね。

そう。自分のお店だからね。自分のお店はちゃんとこだわったほうがいいと思います。

apollonにも福原さんのこだわりがたくさん!

働くって、楽しい!

わー:
ここからは、「働く」とお金の関係かんけいについて質問しつもんします。働くことについてどう思いますか?

働くことは、楽しいことであるべきだと思います。働くのがつらかったり、仕事に行きたくなかったりする大人はたくさんいるんだけど、それって何だかかなしいと思います。

多くの大人は、しゅうに5日間働いています。7日間のうちの5日間を、「つらい」「つまんない」と思ってごすのと、「楽しいな」と思って過ごすのでは、全然ぜんぜんちがうと思うんです。
お休みの2日間だけ楽しい思いをして、あとの5日間はつらい思いをするのは、自分の人生として悲しく感じます。働いている5日間も楽しかったら、すごくしあわせな人生じんせいになると思わない?

だから、働くことは楽しいことであるべき。好きなことを仕事にするのは簡単なことじゃないんだけど、とてもいいことだと思います。好きなことは楽しいですから。

ケイティ:
福原さんも「つらいな」とか、「つまらないな」と思ったときがあるんですか?

あります。お客さんから、直接ちょくせつではなくインターネットでお店の悪口わるぐちを書かれることがあります。それを見ちゃうと悲しい気持ちになるし、つらいよね。

でも悪口を書くような人は、何回なんかいもお店に来ることはない。何回もお店に来てくれる人は、お店のことが好きな人ですよね。だからその人たちとの時間を大切にするようにしています。悪口を書かれたらつらいけど、楽しいことのほうが多いから、そっちに目を向けるようにしています。

ケイティ:
そうなんですね……。では、お金についてはどう思いますか?

「お金がないとしあわせじゃない」というわけではないんだけれど、お金があったほうが、しいものを買えます。したいこともできる。我慢がまんすることもると思うから、お金は生きていく上で必要ひつようだと思います。

めちゃくちゃたくさんある必要はないけれどね。自分が食べたいもの、欲しいものをある程度ていど我慢せずに買える、食べられる、というかせぎはあったほうがいいですね。

ぜん:
お金を稼ぐということについて、どう思いますか?

子どもの時から勉強すべきことだと思う。小学校でも中学校でも、高校でも大学でも、日本の学校ではお金を稼ぐことを教えてくれません。だから僕は、大人になってから自分で勉強しました。

でも、お父さんお母さんに聞けば、子どもの時から勉強できる。「お金ってどうやって稼ぐの?」って、あとでぜひ聞いてみて。きっと教えてくれるから。そんな風に子どもの時から、なんとなくでいいから「どうやってお金を稼げるのか」を知っておくと、大人になってからやくに立つと思います。

例えば今、社会人になったばかりの人に「お金ってどうやって稼ぐんですか?」と聞いても、うまくこたえられない人がたくさんいると思う。本当はみんなのような小学生でも勉強できるし、勉強するべきです。

お金の稼ぎ方を勉強していると、周りの人から「えっ?」と思われることもあるかもしれません。でも大人になったら絶対ぜったいに必要だから、勉強しておいたほうがいいよ。

ぜん:
福原さんは、お金の稼ぎ方をどうやって学びましたか?

僕はインターネットで調しらべて勉強したし、知り合いに自分のお店を持ってお金を稼いでる人がいたので、その人に話を聞いて教えてもらいました。お金を稼ぐ方法ほうほうは、ひとつじゃなくて、たくさんあります。

「お金を稼ぐ」というと、働いた分だけ給料きゅうりょうとしてお金をもらうイメージがあるんじゃないかな?実はそれ以外いがいにも、お金を稼ぐ方法はいっぱいあるんですよ。

みんなは、まだ働けないですよね。お店でアルバイトもしてはいけない。でも、小学生でもお金を稼げる方法はたくさんある。勉強してみるといいと思うよ。

ぜん:
そうかあ。

お店を好きでいてくれる人たちを大切にしたい

わー:
お給料はどうやって決まりますか?満足まんぞくしていますか?

僕は自分のお店で働いています。会社かいしゃから働いた分を給料としてもらうのではなく、お店の売上うりあげで僕の給料がまります。だから毎月まいつき金額きんがくちがう。お店がいそがしければ、お金はたくさんある。お店がひまだったら、お金はってしまいます。

売上=お客さんにサービスや商品を提供した時にもらう代金のこと

わー:
お給料が増えたら、そのお金で何がしたいですか?

自分がしい物を買いたい気持ちもあるんだけど、もっとお店をよくしていきたいとも思っています。例えばお店で何かがこわれたとき、もう一度買いたくても、値段ねだんによっては売上が上がらないと買えないものもあります。お店の売上が上がったら、お店で必要なものや、壊れちゃったけどもう一回欲しいと思うものを買いたいです。

たくさん発見しよう!

ぜん:
福原さんは、何のために働いていますか?

自分が幸せになるためでもあるけど、両親りょうしんや僕の奥さん、兄弟きょうだいなど、自分の家族かぞくも幸せになれるように頑張がんばって働いてます。人生をゆたかにしたいですね。

わー:
自分と家族の人生を、どんな風に豊かにしたいですか?

家族のことをまもれるようになりたいです。

例えば、兄弟がきゅう病気びょうきになったとします。その病気をなおすには、たくさんのお金が必要です。お金があれば治してもらえるけど、お金がなかったら治せないこともある。その時に僕がお金を持っていたら、治してあげられますよね。

お金がすべてじゃないけど、僕が頑張って働いた結果けっか、守れる人がえるのならば、それはすごく幸せなことだと思います。ちょっとむずかしいけど、わかるかな?

わー:
わかります。ありがとうございます。

ぜん:
「働く」と「お金」の関係については、どう思いますか?

お金を稼ぐためには、働く必要があります。さっき、お金を稼ぐ方法はいろいろあると言ったけど、どれも働く必要がある。そこは、切っても切りはなせません。

働いたら給料をもらえます。でも、働かなかったら給料はもらえない。働くことと稼ぐことは、ずっとくっついているような関係だと思います。

ぜん:
最後さいごに、子どもたちへメッセージをおねがいします!

みんな今、興味きょうみがあることやきなことがありますよね。それに関わるお仕事が、世の中には絶対にあると思います。例えば絵本が好きだったら、絵本をく仕事。電車でんしゃが好きだったら、電車をつくる仕事や運転うんてんをする仕事。

まずは、どんな仕事があるのかを知ってほしいと思う。有名ゆうめいな仕事はみんなが知っているけれど、知らない職業もたくさんあります。だから、まずはどんな仕事があるのかを知るために、自分が興味を持っていることや、好きなものに関わる仕事を調べたり、おうちの人に聞いたりしてみてください。今まで知らなかった発見はっけんがあると思います。

「こんな仕事もあるんだ」という発見が大事だいじです。その発見の数がおおければ多いほど、将来しょうらい自分が大人になった時に、選択肢も多くなります。もし仕事を3つしか知らなかったら、3つの中からどれになるかを決めることになる。

そうじゃなく、どんな仕事があるのかをたくさん知っておく。仕事って、本当にたくさんあるんです。僕が知らない仕事も、きっとあるはず。

だからまずは、自分の好きなこと、興味があることに関係のある仕事ってどんなものがあるのかなって、知ってほしいと思う。そして、「つらいな」「仕事したくないな」と思う仕事じゃなくて、楽しく働ける仕事を選んでほしいと思います。

ぜん:
あたたかいメッセージをありがとうございます。頑張ってみます。

頑張ってください。応援おうえんしています。

全員:
ありがとうございました!

こんなお話もしました

ぜん:
僕はコーヒーを淹れるだけじゃなくて、みんなが気持ちよくごせるカフェをつくりたいです。大人もゆっくり、子どもたちも楽しく過ごせる快適かいてきなカフェにするには、どんな工夫が必要だと思いますか?

すごいね。そこまでかんがえてるんだ!

そうだね、お店の中にはテーブルやイスがありますよね。それをいろんな人が使えるように、いろんな種類しゅるいのものをくといいかもしれない。例えば、高さのあるイスばかりだったら、子どもはすわりにくい。ちちゃうかもしれないし、あぶないです。子どもれの家族が来たら案内あんないできるような、ソファのせきをつくるのもひとつ。

みんなが快適に過ごせることを目標もくひょうにするのなら、いろんなお客さんをイメージしてお店をつくるといいと思いますよ。

ぜん:
分かりました。

あと子どもが来たとき、コーヒーしかなかったら飲むものがありません。だから子どもが飲めるような、オレンジジュースやリンゴジュースなども用意よういするといいかもね。

ぜん:
僕は、ラッシーという飲み物を提供したいと思ってます。

おいしいよね。いいと思う!子どもが来ても提供できるものを工夫くふうして、メニューを考えるのも、みんなが快適に過ごせるカフェをつくるのにとてもいいと思うよ。

ぜん:
ありがとうございます!

バリスタってどんな仕事?

・コーヒーをおいしく淹れて、お客さんに提供する

・お客さんから話を引き出す(福原さんの場合)

・コーヒーの知識と技術を磨く

バリスタの魅力

・自分が努力して淹れたものを、目の前でお客さんが「おいしい」と言ってくれる

・お客さんが楽しんでくれてる姿を目の前で見れる

・コーヒーが大好きな人にぴったり

大変なこと

・知識や技術が必要なので、一回勉強して終わりではない

・どんどん新しい情報を勉強して、インプットしていかないといけない

・お店の悪口を書かれることがある

「働く」と「お金」の関係について

・働くことは、楽しいことであるべき

・お金がないと幸せじゃないわけではない

・お金があったほうが、欲しいものを買えるし、したいこともできるし、我慢することが減る

・お金は生きていく上で必要なもの

・頑張って働いた結果、守れる人が増えることもある

福原さんが思う大切なこと

・商品をお客さんに提供する時は、その商品のことをよく知る

・知識と技術を身につける

・自分がおいしいと思ったものを提供する

・仕事が楽しくできる場所を選ぶ

・お店を好きでいてくれる人たちとの時間を大切にする

・子どもの時からお金の稼ぎ方を勉強する

・自分が興味持ってることや、好きなものに関連する仕事を調べたり、おうちの人に聞いたりする

・「こんな仕事もあるんだ」という発見をたくさんする

福原さんのお店

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、わー、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO