インタビュー記事

第十回 幸せになれる野菜づくり 「農家」 國吉美貴さん【前編】

今回のお相手:國吉美貴くによしみつきさん

鳥取とっとりけん大山だいせんのふもとで、「國吉農園のうえん」を経営けいえいしている。家族かぞく仲間なかま一緒いっしょに、「べるとおいしくてしあわせになれる野菜やさい」をつくるため、日々ひび頑張がんばっている。大学時代じだいにアフリカのタンザニアに行ったことがきっかけで、野菜とお米をつくりはじめた。毎年まいとし小学校に行って、6年生に農業のうぎょうの話をするなど、子どもたちにも農業のことをつたえる活動かつどうをしている。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは國吉美貴さん。農家のうかです。農家って、いったいどんなお仕事なのでしょう?

ケイティ・かのぴ:
よろしくおねがいします。

國吉さん:
よろしくお願いします。

食べることが大好きだった子ども時代

かのぴ:
子どものころ、どんな大人になりたかったですか?

獣医じゅういといって、動物のお医者いしゃさんになりたかったです。家でっていた犬が時々ときどき体調たいちょうをくずすことがあったので、たすけてあげたいと思っていました。動物だけではなく、生き物が好きでしたね。

獣医になれなかったら、料理りょうりにんになりたいとも思っていました。

給食きゅうしょくなど、食べることが好きだったんですよ。とくにおこめきで、おかずがなくても食べられるくらい。おいしいものを食べると元気が出るので、自分でもつくりたいと思っていました。3、4年生のころから、よく自分じぶんで料理をしていました。 

ぼくには双子ふたごのきょうだいがいて、一緒にお菓子かしや料理をつくっていたので、その影響えいきょうが大きかったかなとおもいます。

ケイティ:
その2つ以外いがいにもなりたいものはありましたか?

テニスを小学校5年生くらいからやっていたので、プロになれたらいいなと思うことはありました。スポーツが好きでした。

かのぴ:
あこがれていた人物はいますか?

図書館としょかんりた漫画まんが偉人いじんでんで『ヘレンケラー』を読んだんですが、目も見えない、耳も聞こえない、話せないの三重さんじゅうなのに、勉強べんきょう努力どりょくですごい人やなと。勇気ゆうきをもらえました。こんなふうに強く生きたいと、尊敬そんけいしていましたね。

ケイティ:
それはいまの仕事に影響していますか?

そうですね。仕事してて大変たいへんな時、くじけそうな時にほかの人も頑張っているなと思うと、「自分も頑張ろう」と思えます。勇気をもらえるので、影響をけているんでしょうね。

ケイティ:
そうなんですね。

かのぴ:
では國吉さんの職業しょくぎょうめいは何ですか?

農家。農業をやっています。

ケイティ:
つまり何をしているお仕事なんですか?

お米や野菜など、食べ物をつくっています。鳥取とっとり大山だいせんって聞いたことある?

ケイティ・かのぴ:
うーん……ないです。

大山ちょうは、中国地方ちほうといわれる岡山おかやま、鳥取、広島ひろしま山口やまぐち島根しまねの5県の中で、一番いちばん大きい山がある町なんです。その山の名前が、大山。そのふもとでお米や野菜をつくって、スーパーやホテル、レストラン、個人こじんのおきゃくさんに販売はんばいをしています。 野菜は、年間30~40種類しゅるいつくっています。

國吉農園でつくられている野菜たち

個人=この場合はお店や会社の人ではない、町の人たち

ケイティ:
わたしのおばあちゃんの実家じっかが農業をしているんですが、朝早くからはたらいていると言っていました。國吉さんもそうですか?

時期じきによるかな。日中に収穫しゅうかくするのでなつはけっこう早くて、うちは6時くらいからやります。でもそんなに早いほうではないですね。早い農家さんは、夜中よなかの2時くらい。

たとえばこのあたりの地域ちいきは、ブロッコリーがいっぱい作られています。ブロッコリーは日が当たるとどんどんやわらかくなって、おいしくなくなってしまいます。なのでそのまえに収穫しなくてはいけません。そうすると、収穫が夜中になってしまうわけです。

夜中10時くらいから、日が出るまでの間収穫している人もいます。大変で体をこわす人もいるので、僕は6時くらいから(笑)。

早くらないといけないものは早いうちに、日が当たっても大丈夫だいじょうぶなものは後にしています。普段ふだんは8時半から働いています。

実家=生まれてから家族などと過ごした家のこと

収穫=育った作物を採ること

かのぴ:
みんな朝の4時くらいからやっているんだと思ってました。

このへんの農家さんは8時や8時半くらいからですね。ブロッコリーの収穫も毎日ではないので、夜中に採るのは5, 6月。他の時期は早くても7時くらいの人が多いかな。

うちの場合は、はたけに出ているのはほとんど午前ごぜんちゅうだけのことが多いです。午後は収穫した野菜をふくろめたり、だんボールに入れておく準備じゅんびをしたりしています。

かのぴ:
なるほど。お米や30~40種類の野菜をつくっているということは、土地はものすごく広いんですか?

広さは、農家の単位たんいで4ちょうたんあります。1反は10m×100mなので、1反×45がうちの広さです。

ケイティ・かのぴ:
広い!

1人じゃできないので、僕とおくさんと働いてくれている友達ともだち2人の、合計ごうけい4人で畑の面倒めんどうを見ています。

豊かな自然の中でつくられている

大山でめちゃくちゃおいしい野菜をつくる

ケイティ:
なぜ大山町でやろうと思ったんですか?

いい質問しつもん!(笑)

ブナの木って知ってる?大山は、ブナの木がたくさんあります。っこがふか地中ちちゅうって、っぱをとす落葉らくよう広葉樹こうようじゅのひとつです。

それが、山の地面じめんに雨水をめる役割やくわりをしています。その雨水をきれいにして川にながしてくれるので、水がきれいでおいしい。それに標高ひょうこうが1,729mあるので、けっこうゆきるんでよすね。このあいだ50センチくらい降りました。そのゆきけ水が川に流れるから、夏でも川の水の温度おんどが7, 8度しかない。水がつめたくてきれいなんです。

野菜の体はほとんど水分でできているので、使つかう水がおいしいと野菜もおいしい。水がきれいというのが、大山をえらんだ理由のひとつです。

もうひとつは、土にミネラルがいっぱいふくまれていること。大山はむかし火山だったので、火山ばいが降っていたんです。ミネラルを含んでいる火山灰が、地面に降りもってかさなって、そこに植物しょくぶつが生まれ、れて、それをかえして土ができる。

その土で野菜をつくると、ミネラルがたくさん含まれます。野菜は水分とミネラルであじまりますから、めちゃくちゃおいしい野菜ができるようにと大山を選びました。

標高=山などの高さ

雪解け水=雪が解けて水になったもの

ミネラル=栄養分のひとつ

火山灰=火山が噴火するときに出る粉のようなもの(灰)

かのぴ:
なるほど!もうすこくわしく仕事内容ないようりたいです。

野菜のたねをまいてが出たものや、それをもう少し大きくして畑にえたものに水をあげてそだてます。普通ふつうはここで農薬のうやくを使います。虫がつかないように、雑草ざっそうが生えないように、野菜が病気びょうきにならないように使うんですが、じつはうちは農薬を使っていません。

かのぴ:
え、すごい!

僕はもともと、自分の食べたいものをつくって、おいしくできたらみんなにも食べてほしいなと思って農家の仕事をしています。くすりを使ったものはあまり食べたくないという思いがありました。

育てるときは、できるだけ作業さぎょうです。雑草をいたり、たおれないように土をせたり。そして収穫してお客さんのもとにとどけて、お金をもらっています。

畑や田んぼは、使わないと土地がれてしまう。雑草だけでなく、木が生えてくることもあります。畑や田んぼを使うことは、景色けしきまも役割やくわりもあるんですよ。

あとは水をよく使うので、水路すいろや川の掃除そうじをしています。農業をすることで、野菜を育てるだけではなく、地域の景色やまわりの整備せいびをすることにもつながっています。

手作業=機械を使わず、人間の手で作業をすること

水路=農業などで水が通る道

愛情いっぱいに育てられている

ケイティ:
天候てんこうが悪くて野菜が採れないときはどうするんですか?

そういうこともありますね(笑)。今回も雪で収穫できないことがありました。そういう時はあきらめて雪がけるのをつか、どうしても野菜がしいと言われたときは、雪かきして野菜をるときもありますね。

他にも「なたまめ」という、ジャックとまめの木のお話のモデルになった豆を育てていて。大きいので、ささえられるように3, 4mくらいのたなをつくっていたんです。広さが2反ほどなので、 20×100mのはばいていたんですが、台風たいふうで棚が全部倒れてしまいました。それはもう収穫できないので諦めました(笑)。

天候=天気の状態じょうたい

ケイティ・かのぴ:
えっ、大変!

ケイティ:
つぎはどんな野菜を育てるのに挑戦ちょうせんしたいですか?

いま興味きょうみがあるのは……僕じつはカレーがきなので、インドまいをつくってみたいですね。

ケイティ・かのぴ:
カレー!好きです!

日本のお米は、水分をたくさんふくんでいるのでもちもちでおいしいんですよね。インド米はほそながくてぱさぱさしています。でもそれがカレーにすごくうんです。

まだ日本でつくっている人がいるとは聞いたことがないので、やってみたい。ちゃんとつくれるのか、日本のお米とかたちちがうから精米せいまいできるのか、などの問題もんだいもあるけど、挑戦してみたいと思っています。

精米=お米から「ぬか」といわれる部分を取って、白米にすること

ケイティ:
野菜を料理などにして販売はんばいすることもありますか?

たけのこはすぐ掘って料理しやすいように水煮みずににしたり、大豆だいずをお味噌みそにしたり、干芋ほしいもをつくったりします。りょうすくないのであまり販売はしていないんですけどね。自分たちで加工かこうするというよりは、おとどけ先のおみせ商品しょうひんにして販売してくれています。

水煮=水や塩水えんすいたもの

加工=この場合は、調理ちょうりするなどして野菜に手をくわえること

無農薬、そして手作業で大切に育てている

生きることは、食べること

かのぴ:
なぜその仕事をしようと思ったのか、そしてしているのかを教えてください。

むずかしくかんがえるのが苦手にがてで、シンプルに生きたいとずっと思っていました。大学生になったときに、バックパッカーとしてアフリカのタンザニアに行ったんです。タンザニアの都市とし都会とかいで、アメリカなどの大手おおて銀行ぎんこうやファストフードもありました。英語えいごも通じるし、道路どうろ整備せいびされている。

でも田舎いなかは道路がコンクリートじゃないし、雨が降ると水たまりが大きくなってみずうみのようになるので、車も通れなくなります。

また水道がなく、水をくみに行かないといけない。マサイ族は家をわらや牛のふんでつくるなど、昔ながらの方法でらしている人もいます。

田舎のむらに行ったとき、現地げんちの人にめてもらいました。かれらが大事にしていたのが、農業。「生きるために、食べ物をつくらなきゃいけない」と言っていました。じゃないと家族も生きられないし、それをしないと何も始まらない。女性じょせいが特によく働いてましたね。男性はあまり働いていなかったな(笑)。

その時に、「自分もシンプルに生きたい」「人間は食べなきゃ生きられないから、日本にかえったら食べ物をつくれるようになりたい」と思いました。日本に帰ってきて、大学の畑や田んぼで野菜とお米をつくりはじめました。

大学を卒業そつぎょうして、お米づくりや野菜づくりが体験たいけんできる会社に就職しゅうしょくしました。その時は実際じっさいにはつくらず、場所の管理かんりをしていたけど、自分のつくったおいしいお米や野菜を届けたいと思って今農家をしています。

生きることは食べること。シンプルに生きて、自分で育てたおいしいものを食べて幸せになりたいと思っていました。

バックパッカー=少ないお金をうまく使って外国を旅する人。バックパックはリュックのこと

都市部=人が多く、政治や文化の中心になっている場所

大手銀行=扱う金額が大きく、またいくつかの銀行があわさってできた大きな銀行

マサイ族=タンザニアに昔から暮らしている民族みんぞく(人たち)

現地=実際に行われている場所、現場

就職=学校を卒業した後に働くこと

ケイティ:
どうやったら農家になれるんですか?資格しかく必要ひつようですか?

農家になるのに資格は必要ありません。開業かいぎょうとどけといって、「農家になります」という届を出せばなれちゃう(笑)。

地域によって違いますが、うちの地域で必要なものは、農地を最低さいてい2反、つまり100m×20mの広さの土地があって、野菜かお米をつくっていて、それに合った道具どうぐがあるというのが決まりです。

そんな風に、地域の決まりがそれぞれあると思います。うちの地域ではトラクターと、2反以上の土地が必要です。

農地=畑や田んぼ

かのぴ:
じゃあ土地と必要な道具と家さえあれば、開業届を出して農家になれるんですか?

簡単かんたんに言うとその通り。作業場もあるといいね。野菜を収穫してきれいにする場所。かのぴが言ったことと作業場、最低さいていげんその4つがあればなれちゃう。

ケイティ:
資格は必要ないけど、農家になるためにどんな勉強をしたんですか?

とにかくまずは育ててみる。最初は全然うまくいかなくて、ひたすら作って観察かんさつしていました。この野菜はこんな虫がつくんだ、こんな病気になるんだ、じゃあどうすればいいのか?と実践じっせんで学んでいました。

本もいろんな人の経験けいけんあつまっているので、よく読んでいましたね。野菜や土、虫などの生態せいたい、野菜を食べにくるイノシシ、シカ、あらいぐま、たぬき、きつねなどの動物、科学や理科りかの勉強もしました。

農業は現場だけでなく、経営けいえいといって、どうやってお金をかせぎながら仕事をするかということも考えます。算数さんすうはしっかりできているほうがいいな。経営では算数をすごく使うので。

例えば、土地は四角しかくではないので、面積めんせき割合わりあい計算けいさんをします。どういうつくり方をしたらどれくらい収入しゅうにゅうになるかといったことも計算します。機械きかい物理ぶつりの勉強もするし、結局けっきょくはどの勉強も農業にかかわってくる。

インターネットに詳しくなれば、自分でホームページをつくって野菜を販売することもできます。他にも、田んぼを使って田んぼアートをするように花や野菜を育てる人もいます。どの勉強をしてても、農業に無駄なものはないと思いますよ。

生態=生活している様子

科学=ものとその変化へんか研究けんきゅうする科目かもく

経営=会社などの目的を達成するため、計画したり実行したりして進めていくこと

面積=表面の大きさや広さ

割合=全部を100パーセントとしたら、そのうちのどれくらいか

収入=手にしたお金

夏は、あまくてみずみずしいとうもろこしができる

農家のお仕事について、愛情をもってわかりやすくお話ししてくださった國吉さん。後編では農業への想いと楽しさ、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。

國吉美貴さんのSNSと國吉農園のホームページ

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、かのぴ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
サムネイルデザイン・編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO