インタビュー記事

第13回 生活の器をつくる 「建築家」 小泉 雅生さん

今回のお相手:小泉雅生こいずみまさおさん

『日本建築学会しょう作品賞』を受賞じゅしょうしている建築家。東京都立とりつ大学大学いんの先生でもある。「環境かんきょうかんがえた建築」をテーマに、学校・ホール・家の建築や、広場やまちづくりまではば広く活躍かつやく。建物だけではなく、横浜よこはまの「ぞうはなパーク」などまちの風景ふうけいまで設計せっけいしている。子どものころからものづくりが大き。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは小泉雅生さん。建築家です。建築家って、いったいどんなお仕事なのでしょう?

ケイティ:
よろしくおねがいします。

小泉さん:
よろしくお願いします。

設計はなくてはならない仕事

ケイティ:
子どものころは、どんな大人になりたかったですか?

人のやくに立てるような人になりたかったです。あとは、なにかつくったり育てたりする仕事しごとにつきたいともおもっていました。

ケイティ:
つくったり育てたりというと、たとえばどんな仕事ですか?

ものづくりをする職業しょくぎょうや、人を育てることにも興味きょうみがありました。もともと手を動かすことが好きだったからか、自分でものをつくることが好きで。ちょっとずつできあがっていく様子ようすを見ると、ワクワクするじゃないですか。そこが一ばんおもしろいと感じるところです。

ケイティ:
あこがれていた人はいますか?

具体ぐたいてきにこの人、というのはとくにいなかったですね。

ケイティ:
小泉さんの職業名は何ですか?

建築家です。

ケイティ:
つまり何をしているお仕事なんですか?

建物たてものや家の設計をしています。

ケイティ:
仕事内容ないようくわしく教えてください。

まず建物や家を建てるときに「建ててほしい」と依頼いらいがあります。依頼をしてくる人を、建てぬしとか建築主といいますが、その人たちの要望ようぼうを、具体的に図面ずめんにまとめ上げていくのがぼくらの仕事です。

そのながれは「設計」とばれ、そこでできあがるのが「設計図」。その設計図を見て、大工だいくさんや工務こうむてん、建設会社の人が工事を行います。
僕らがやる設計というのは、家や建物をつくるのになくてはならない仕事です。

依頼=ものごとを頼むこと

工務店=地域で活動している建設会社

ケイティ:
なぜその仕事をしようと思ったんですか?

先ほど言ったように、ものをつくるのが好きだったからです。家づくりは大きなものづくりなので、やってみたいなと思いました。昔から、自分の部屋にある家具の配置はいちを考えることが好きでした。その流れで建築をこころざすようになったと思います。

また人々ひとびとが実際に暮らし、活動をするための場所をつくることにも、とてもやりがいを感じます。

配置=合うと思う場所に置くこと

志す=目標や目的を立てて、やろうと決めること

模型をつくってイメージを形にしていく

使う人の生活をイメージする

ケイティ:
設計するときに気をつけていることはありますか?

たくさんありますね。そうだなあ、ひとつ言うと……建物は、実際じっさいに人がらしたり生活したりしますよね?

ケイティ:
はい。

その人たちは、自分とは違うライフスタイルだったり、ちがう考え方をっていたりします。かれらがどういうことを考えて、どういう風にそこで生活をするのだろうかと、想像そうぞうしながら仕事をしていかなくてはいけません。

自分のためにつくるのであれば、好きなようにやればいい。でも人のためにつくるわけですから。 使う人がどういう風に感じるだろうか、どういう風に使うだろうかということを、具体的にイメージするのが大事だいじだと思います。

ライフスタイル=生活の仕方や生き方

ケイティ:
今までにどんな設計をしたんですか?

家を設計したこともありますし、大きいものでは学校を設計したこともあります。ほかにも劇場げきじょうなどのホール、庁舎ちょうしゃ消防しょうぼうしょ。あと建物以外いがいにも、オープンスペースと呼ばれる、公園こうえんや広場のようなものもありますよ。

庁舎=国やどうけんちょうそん事務じむの仕事をする建物

横浜よこはま港南こうなん総合そうごう庁舎

ケイティ:
小泉さんが設計した小学校の画像がぞうを見たんですけど、おしゃれできれいで、すごくよかったです!

ありがとうございます。あれは新しいまちにできる学校ということで、非常ひじょうに大きな期待きたいをされてつくった学校でした。

ケイティ:
小泉さんの本も見たんですが、「環境かんきょうを考えた建築」と書いてありました。それはどういうものなんですか?

今いろんなところで、地球ちきゅう環境について考えることが必要になっています。建築でも、環境への負担ふたん影響えいきょうをできるだけかるくしていかなければいけません。
じゃあ具体的にどういうことかというと、例えば「CO2シーオーツーをできるだけ出さない建築」を提案ていあんしています。他にも断熱だんねつ性能せいのう気密きみつ性能せいのうを高めるとか、効率のいい設備せつび機器ききを使うとか。あとは光や風などの自然しぜんのエネルギーをうまく組み合わせて、よりよい建築をつくろうと努力どりょくかさねています。

CO2=二酸にさん炭素たんそ

断熱性能=熱をカットし、外の気温の影響や無駄なエネルギーを減らすもの

気密性能=建物の隙間すきまらすもの

小泉さんが設計した、宇城市立豊野小中学校

想像力が自分の幅を広げる

ケイティ:
建築家には、どうやったらなれるんですか?

まずは建築を理解りかいするための基礎きそを、きちんと学ばなければいけませんね。どういう風に建築が出来上がっているのか、出来上がっていくのかをしっかりと理解をします。さっき言ったように図面にまとめていくのも仕事なので、図面を技術ぎじゅつ必要ひつようになってきますね。

建築にたいしてきちんと理解をする力と、それを図面にこす力をにつけることが必要です。結構けっこう大変です。

技術=ものをつくり出したり、生み出したりする方法

図面に起こす=図面を書いてつくること

ケイティ:
資格しかくは必要ですか?

「建築」という資格が必要です。設計できる建物の大きさによって、一級、二級に分かれています。

ケイティ:
この職業の魅力みりょくは何ですか?

自分が想像もできないような暮らしや世界に出会えることが、この仕事の魅力です。自分とは違う人たちの生活を相手にするわけですから。お金持ちの家を設計することになったり、有名ゆうめいじんのプロジェクトのお手伝いをすることがあったりします。そういった世界をのぞけるのは楽しいです。

ある俳優はいゆうさんが、「役をえんじることでさまざまな人生体験たいけんができる」と言っていました。それとたような感覚があります。建築家も多くの建物や家を設計することで、何パターンもの暮らし方を体験できます。それもおもしろいし、魅力ですね。

それに、学校や公園、劇場など、大勢おおぜいの人に使っていただけるのも魅力のひとつです。たまたま出会った人が、僕の設計した建物の利用りようしゃだったときは、その人にしたしみがわきます。いつの間にかたくさん知り合いができている、といった感じです。

プロジェクト=目標もくひょうを達成するための計画

ケイティ:
なるほど。他の建物を設計するときに、人生体験が役に立ったことはありますか?

いろんなパターンを見ることで、だんだん想像力がきたえられてきますね。鍛えられると、「子どもはこういうときにこんな行動をするんじゃないか?」「ここに気をつけたほうがいい」「こういうことをしたらよろこぶだろうな」などがわかってきます。そうすると自分の考えの幅が広がってくる。それが次の仕事にもつながっていく気がします。

ケイティ:
では、大変だと思うことはありますか?

大変であると同時に魅力のひとつでもあるんですが、つくった建物が長くのこることです。仮設かせつ建設物という、つくったらすぐにこわすものもありますが、普通の建築物は10年、20年、場合によっては50年、100年と長続きするわけです。それはとても魅力的なことですが、設計する立場としては責任せきにんおもいですね。

万が一失敗しっぱいしてしまった場合、なかなかその建物がなくならないというのはプレッシャーを感じます。料理だと、失敗しても食べちゃえばすぐなくなるじゃない?なかったことにできるじゃない?(笑)

ケイティ:
はい(笑)。

だけど建築はなかったことにできない。それが大変なことだと思います。

大勢の人が使用する千葉市美浜文化ホール

設計した場所の歴史を大切にする

ケイティ:
小泉さんは横浜の象の鼻パークを設計していますよね。設計したときに気をつけたところはどこですか?

あそこは、すごく歴史れきしてきな場所なんです。横浜の開港かいこうの地、いや、日本の開港の地といってもいいですね。江戸えど時代じだいわりに日本が海外と貿易ぼうえきはじめると決めて、初めてつくった港の場所が、あの象の鼻地区です。

象の鼻地区は、その後もいろいろな歴史がみ重なってできています。なのでその歴史を大切にしなければいけないなと思いました。歴史がある分、設計するのも重みがありましたね。

開港=外国と貿易するために港を開くこと

貿易=海外ともののやり取りをすること

多くの人でにぎわう横浜・象の鼻パーク(茶色の屋根が象の鼻テラス)

ケイティ:
小泉さんが普段設計している建物と、象の鼻テラスの設計に違いはありますか?

今まで僕がやってきた仕事の中では、そこまで大きな違いはないと思います。ただ象の鼻テラスは、今まで僕が設計してきた建物に比べて、大勢の人がおとずれる地区にある建物です。より様々な人たちが快適かいてきに使えるようにと考えて、設計しました。

快適=気持ちよく

ケイティ:
象の鼻パークで一番見てほしいところはどこですか?

夜景やけいを特に意識して設計したので、ぜひ見ていただきたいですね。

ケイティ:
そうなんですね!では、生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか?

多分やっているんじゃないですかね(笑)。

ケイティ:
どうしてそう思うんですか?

とてもやりがいがあるし、おもしろい職業だと思うからです。

小泉さんがこだわった、横浜・象の鼻パークの夜景

一人ひとりの生活に寄り添う建築の仕事

ケイティ:
建築家は、今の子どもにおすすめできますか?

おすすめできると思いますよ。建築物をつくるというのは、人間の生活のうつわ、つまり生活せいかつする場所ばしょをつくるわけですから。どんなに時代が変わろうとも、必ず必要な技術だと思うんですよね。

AIエーアイ発達はったつしてくると、だんだん人間の仕事が減ってくるなんて話も出ていますけれども。そういう時代になってくると、「自分ならではの暮らし方」や「他人たにんとの違い」に、どんどん価値かちが出てくると思います。一人ひとりの生活にった建築を提案する建築家の仕事は、ますます重要になってくるんじゃないでしょうか。

器=入れ物

AI=人間の脳ができることを、代わりにコンピューターができるようにする技術

価値=どれほどすばらしいか、またどれくらい大切かということ

ケイティ:
これからやっていきたいことはありますか?

図書館や美術館など、建築家としてまだまだ手がけていない種類しゅるいの設計にもトライしていきたいです。最近さいきんは建築だけでなく、その中でり広げられる生活を充実じゅうじつさせることにも興味があります。

まだ手がけていない種類の設計をするときに、工夫したいことはありますか?

工夫したいことは、プロジェクトごとに出てきます。なので一言では言いにくいけど、これからの大きなテーマの一つである「環境」を考えた設計をしていきたいですね。

環境を考えて設計した『アシタノイエ』

働くことを楽しめるようになろう!

ケイティ:
ここからは、「働く」と「お金」についても聞いていきます。小泉さんは「働く」ことについてどう思いますか?

大事なことでしょうね!働くことでお金をるというのもありますが、実際に何かを達成たっせいするわけですよね。充実感もありますし、それを通じて生きがいができるんじゃないかと思います。

現実には充実感のある場面だけではないのが、頭のいたいところですが。

得る=手に入れる

頭が痛い=こまったりなやんだりすることをたとえた言い方

ケイティ:
「お金」についてはどう思いますか?

「世の中お金だけではない」といいつつ、実際はお金をかせぐことも大事です。バランスを考えなければいけないなという気はします。

ケイティ:
お金はどうして大事なんですか?

生活をしていくうえで、お金が必要な場面があります。それに、生きていくためにはお金のことを考えなくてはいけない場面もたくさんあります。働くことを通じて、お金を稼ぐことも必要だと思いますね。

ケイティ:
「お金を稼ぐ」ということについてはどう思いますか?

大切なことなので、稼ぐことをあまり悪者わるものにするものでもないと思います(笑)。

ケイティ:
たしかにそうですね(笑)。

ただあんまりお金のことばかり考えすぎると、だんだん窮屈きゅうくつになってくるので。お金を稼ぐことばかりになるのはいやだなと思います。

ケイティ:
給料きゅうりょうはどうやって決まりますか?

描いた図面に対して、設計料が支払しはらわれます。その設計料で給料は決まります。

ケイティ:
お給料に満足していますか?

うーん、満足かなあ……。日本はまだまだ、アメリカやヨーロッパに比べて設計料を払うことへの理解があまりないんです。正直いろいろな場面で苦労くろうすることがありますね。

ー大変なお仕事なのに、なかなかわかってもらえないことがあるんですね。

建築士は考える部分がたくさん&細かい!

ケイティ:
小泉さんは何のために働いていますか?

何でしょうね(笑)。お金のため、家族のため、自分の思いの実現じつげんのため。どれも当てはまると思います。

実現=実際にすることがかなうこと

ケイティ:
「働く」と「お金」の関係についてはどう思いますか?

お金のために働くわけではないと言いつつ、「働く」と「お金」はふかく関係していますね。でも働かなくても自由じゆうしないくらい十分なお金があっても、僕は働くと思います。だから「働く」と「お金」は、イコールではないのかもしれません。お金のためだけに働くのではないんだろうなと感じます。

ケイティ:
では最後に、子どもたちにメッセージをおねがいします!

勉強べんきょうはしなければいけないものです。でも学校の勉強だけではなくて、いろんな体験をする必要があると思います。おいしい食事しょくじをしていないと、おいしい食事がつくれないのと同じで、建築家もたくさんの経験があると、経験の分だけいい建築ができる。わかいうちにできるだけたくさんの経験をんで、自分の中の経験を増やすことが大事です。

学校は、経験を効率こうりつよく教えてくれる場所です。せっかく学校に通うのなら利用りようしましょう!ただ学校だけでは足りないので、学校以外でも体験や経験をたくさん増やす努力をした方がいいと思います。

建築家というのは、人が生活する器をつくることなので、すごく前向きな仕事です。依頼をしてくれる人たちや新しく生活をつくりだそうとする人たちと一緒に、生活する場所をつくりあげる仕事。おめでたい職業でもありますね(笑)。建築家を目指す子は、いろんなことに意欲いよくてきに取り組んで、「働く」ことを楽しめるようになるといいですね。

効率=この場合は、ムダを少なくして経験を教えてくれるということ

意欲的=やる気がある

ケイティ:
ありがとうございました!

建築家ってどんな仕事?

・建て主や建築主の要望を、設計図にする

・使う人がどういう風に感じるか、どういう風に使うかを、具体的にイメージする

・地球環境について考えながら設計をする(小泉さんの場合)

建築家の魅力

・自分が想像もできないような暮らしや世界に出会える

・つくった場所を大勢の人が使ってくれる

・想像力が鍛えられる

大変なこと

・つくった建物が長く残ること

・責任が重い

・失敗しても、なかったことにできない

「働く」と「お金」の関係について

・何かを達成する充実感があり、それを通じて生きがいができる

・充実感がある場面だけではない

・世の中はお金だけではないが、お金を稼ぐことも大事

・仕事とお金のバランスを考える

・「働く」と「お金」は深く関係している

小泉さんが思う大切なこと

・使う人のことを考えながら設計をする

・学校の勉強だけではなくて、いろんな体験をする

・たくさんの経験を積んで、自分の中の経験を溜める

・いろんなことに意欲的に取り組む

こんなお話もしました

(取材は夏休みに行われました)

ケイティ:
夏休みの自由研究で建物の模型もけいをつくるんですけど、テーマが「自然と組み合わせた家」で。何かアドバイスをいただけますか?

実際にものを見てみないと何とも言えないけど、自然とうまく組み合わせるということであれば……光とか風とか、熱を取り入れる工夫ができるといいかもしれません。

ケイティ:
ありがとうございます!

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO