第19回　歌とみんなの笑顔が生きがい 「アーティスト」 ＲｉＲｉＫＡさん【前編】

今回のお相手：ＲｉＲｉＫＡリリカさん

子ども取材班しゅざいはん

生活をするためにお金を稼かせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアＮＡＲＩＷＡＩでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストはＲｉＲｉＫＡさん。歌手かしゅです。歌手って、いったいどんなお仕事なのでしょう？

みかん、伊藤凛、虹太、ばん：
よろしくお願ねがいします。

ＲｉＲｉＫＡさん：
よろしくお願いします。

みんなを元気にしたかった子ども時代じだい

虹太：
子どもの頃ころ、どんな大人おとなになりたいと思っていましたか？

おもしろい人になりたかったです。私の子どもの頃の写真しゃしんは変顔へんがおしかないくらい、ひょうきんでとても明るい子でした。自分じぶんを表現ひょうげんすることがすごく好すきだったんです。

ところで、みんなはどこに住すんでいるのかな？

虹太：
愛知あいちです。

みかん：
滋賀しがです。

伊藤凛：
大阪おおさかです。

ばん：
東京とうきょうです。

ばんくんからは、都会とかいの風かぜが吹ふいているように感かんじるなあ（笑）。私は大阪出身しゅっしんなので、虹太くん、みかんちゃん、凛ちゃんとは出身が近ちかいですね。みんなは吉本よしもと新しん喜劇きげきって知しってる？

虹太：
知ってます。

ばん：
うーん……？

ばんくんは知らないかな？お笑い芸人げいにんがたくさん集あつまって、大阪で毎週まいしゅう舞台ぶたいをするの。週末しゅうまつにはテレビでも放送ほうそうされていて、私はそれを見るのが生きがいでした。

とにかく放課後ほうかごは急いそいで家いえに帰かえって、吉本新喜劇を見ることに力を入れていたくらいです。新喜劇のネタをみんなに披露ひろうするような、ひょうきんな子でした。

多分たぶん目立ちたがり屋やだったんでしょうね。子どもの頃は、そういうエピソードがたくさんあって、過去かこの写真もふざけた写真しかありません。テレビで「昔むかしの写真を出してください」と言われることがあっても、かわいい写真が全然ぜんぜんなくて。白目しろめでピースしている写真ばかりです。

全員：
（笑）。

真面目まじめに勉強べんきょうするのは苦手にがてだったけれど、自分の体や声こえでできることでみんなに元気になってもらうのが、昔から好きでした。それは今につながっていると思います。

だから将来しょうらいは、みんなを元気にできる仕事しごとをする、明るいおばちゃんになりたかったです（笑）。

ばん：
憧あこがれていた人はいますか？

伝記でんきを読むのが好きで、ナイチンゲールやアンネ・フランクなどに憧れていました。中学生の頃は、看護師かんごしになりたいと思っていたこともありました。

音楽に関かんしては……みんないろんな曲きょくを聞くと思います。虹太くんはSEKAI NO OWARIセカイノオワリが好きなんだよね？　彼かれらは自分で曲をつくって歌っているよね。

虹太：
はい。

私も彼らのように、自分で曲をつくって作詞さくしして歌う人に憧れていました。

今もテレビやYouTubeユーチューブでも活躍かつやくされている、広瀬ひろせ香美こうみさんという歌手がいます。彼女かのじょは今言った内容ないように加くわえて、さらに編曲へんきょくもやるの。編曲ってわかる？

全員：
（首くびをかしげる）

例たとえば私の場合ばあい、まず、曲の基本きほんをピアノでつくります。そこにドラムの音やギターの生なま演奏えんそうの録音ろくおんや、コンピューターで他ほかの楽器がっき音おんを加えてもらって、音に厚みやバリエーションを出して、一曲いっきょくに仕上しあげることです。

曲づくりは編曲が一番いちばん大変たいへんで、技術ぎじゅつも必要ひつようです。広瀬香美さんは誰だれの手も借かりずに、そこまで全部ぜんぶ一人ひとりでやっちゃうの。もちろん歌も、ものすごく上手じょうず。自分の考かんがえをしっかり持もって、自分の力で道みちを切きり拓ひらいていく人はすてきです。

今でも広瀬香美さんは憧れの人で、彼女のようになれたらいいなと思っています。

伊藤凛：
ＲｉＲｉＫＡさんの職業しょくぎょう名は何ですか？

歌手です。歌を生業にしています。それに舞台に出ていた経験けいけんから、女優じょゆうとしてミュージカルのお仕事をいただくこともあります。

私は16歳さいで宝塚たからづか音楽学校に入って、歌とダンスとお芝居しばいを学びました。宝塚歌劇かげき団だんを22歳の時に退団たいだんして、そこからは歌と音楽だけで仕事をしてきました。なので職業名は、「歌手・女優」と表現ひょうげんしています。

虹太：
仕事内容ないようを詳くわしく教おしえてください。

歌手の仕事は、スタジオで歌をレコーディングして、みなさんのもとに届とどく「音楽おんがく」をつくることです。

歌を録音ろくおんする「レコーディング」という作業さぎょうは、たくさんの人が協力きょうりょくしてくれます。まず、作詞、作曲、編曲をする人がいて、音源おんげんができあがります。私はそれをヘッドフォンで聴ききながら、上手に歌えるまで録音します。

その後は「ミックス」といって、声と音源をきれいに混まぜて、聴き心地ごこちがいい音にしてもらいます。そこまでして、ようやくみなさんのところに届く曲ができあがります。

 その曲をみなさんに聞いてもらうために、私はiTunesアイチューンズやYouTubeで発信しています。曲を生で披露ひろうするライブなども行おこなっています。

虹太：
ミュージカルではどんなことをしていますか？

舞台ぶたい初日しょにちの1ヵ月かげつ半はんくらい前まえから、みんなで集あつまって稽古けいこをします。大おお道具どうぐさん、小こ道具さん、衣裳いしょうさん、照明しょうめいさんなど、たくさんのスタッフさんのおかげで、私たち役者やくしゃは舞台に立つことができます。

本番の日は、舞台が始まる2時間前に楽屋がくやに入はいり、発声はっせい練習れんしゅうやストレッチをしてから本番ほんばんに挑いどみます。

宝塚音楽学校で学んだことが今でも活いかされている

みかん：
なぜその仕事をしようと思ったんですか？

子どもの頃は、周まわりから「歌が上手だね」と言われたけれど、自分ではプロになれるほどではないと思っていました。

でも高校生の時、「将来は音楽に関わることをしたい」と思うようになり、宝塚音楽学校をめざすことにしました。宝塚音楽学校は、宝塚歌劇団の舞台に立つことをめざして、歌やダンスをたくさん練習してきた人たちや、天才てんさいが集まる場所で、入学できるのは選えらばれたごくわずかな人たちだけなんです。

私も合格ごうかくをめざして歌やバレエを習ならい始はじめました。「絶対ぜったいに受うかりたい！」と必死ひっしになって練習していたら、なんとその年の春はる、16歳で宝塚音楽学校に入ることができたんです。

全員：
すごい！

入学した頃はまだ歌手になりたいという思いはなかったけど、ある時、歌の成績せいせきが一番になったの。「この選ばれた人たちの中で歌が一番うまいってことは、歌手としてやっていけるのかもしれない」と自信になりました。

そこから自信じしんが芽生めばえて、宝塚歌劇団を辞やめた後あと、歌手としての活動をスタートしました。

ばん：
宝塚音楽学校でダンスも習っていたんですよね。その中でミュージカルで一番役やくに立っていることは何ですか？

ダンスはどうしても周りにかなわなくて、私は下から数えたほうが早かったな。でも、姿勢しせいはよくなりましたね。宝塚では、立っているだけでも美うつくしくないといけないので、肩けん甲こう骨こつをぐっと引ひき寄よせて、舞台で美しく立つ姿勢をしっかり学びます。

そのおかげで、舞台だけではなく、歌手としてステージに立つ時も美しくみえる姿勢が身についたので、ダンスを習ってよかったなと思います。

伊藤凛：
宝塚音楽学校に入ってから、歌やダンスの練習ではどういうことをしましたか？

みんなの学校は、国語こくご、算数さんすう、体育たいいく、音楽などの授業じゅぎょうがあるじゃない？　それが音楽学校は、バレエ、声楽せいがく、演技えんぎ、タップダンスなど、舞台に関かかわる授業しかないの。

歌だけでもクラシック、ポピュラー、新曲しんきょく歌唱かしょうなどがあります。ダンスもバレエだけでなくジャズダンス、モダンダンス、タップダンスなど、さまざまな授業がありました。

授業だけでは足たりないから、朝早く学校に行って空あいている教室で練習したり、授業が終わった後も残のこって特訓とっくんしたりしましたね。練習できる部屋へやも数かずに限かぎりがあるので、みんなで取とり合あっていました。

音楽学校は、成績がすべて貼はり出されます。成績が低ひくいと恥はずかしいから、必死に練習しました。

伊藤凛：
演技のレッスンでは、どういうことをしましたか？

昔、「キリンさんが好きです。でも、ゾウさんのほうがもっと好きです」というCMシーエムがあったんです。そのCMを使って、どれだけゾウさんのほうが好きなのかを、声だけでアピールするレッスンがありました。幅はば広ひろい内容ないようのレッスンをしていましたが、一番覚おぼえているのは、キリンさんとゾウさん（笑）。

宝塚大劇場げきじょうはとても広くて、2,550人ほど入ります。一番後ろの席せきの人にも自分の声でありがとうを届とどけられるように、思いを声でアピールする練習をしていました。

ばん：
楽器も練習しましたか？得意な楽器はありますか？

はい。楽器の授業があって、ピアノとお琴と三味線の3つの中から1つを選べたのですが、私はお琴を選びました。でも、それ以来いらい弾ひいていないから、もう弾けません（笑）。

ピアノは3歳から10歳まで習っていました。でも、ピアノを続けておけばよかったなと思います。歌手になった今はピアノで曲をつくっているので、また1から勉強し直して大変でした。

ギターも、曲をつくる程度ていどは弾けます。子どもの頃は、リコーダーが得意とくいでした。

とにかく歌で一番になりたい

みかん：
どうやったら歌手や女優になれるんですか？

まずは歌を習って、しっかり練習するのがとても大事だと思います。生まれつき歌がうまい人も、発声方法ほうほうがしっかりできていないと、ライブができる歌手にはなれません。

それと、自分が「歌を歌いたい人」だということを周まわりに知しってもらう必要ひつようがあります。今の時代だとYouTubeやSNSエスエヌエスを利用して、歌っている動画どうがをたくさんアップするのもいいですね。

自分を研究けんきゅうするのも大切です。自分で撮とった動画を見て、人からどんな風に見えているか、何度なんども撮とり直してチェックします。歌って、誰かに見てもらって、拡散かくさんしてもらうためにもたくさん練習する。目立つためには、個性こせいも必要かな。

ばん：
目立つための工夫くふうはありますか？

まずは、ハキハキと自分の意見いけんを言うことかな。自分が思うことをしっかり言えるといいですね。あとは、お花が咲さいたようにパアッと明るい笑顔だと、人の目を惹ひくと思います。

それから私がすてきだなと思うのは、自分を持っている人。こだわりを持って何かきわめたり、「自分はこうやりたいんだ！」とはっきり表現できる人は、目立つんじゃないかな。

みかん：
そうなんですね。

歌手や女優になるためには、オーディションを受けてみるのもひとつの方法です。私たちの時代にはオーディションがあまりなかったから、歌手になるために路上ろじょうで歌っている人がたくさんいたの。ライブハウスで他ほかのバンドが歌う前にステージに出してもらったり、小さなＣＤショップをまわってみかん箱ばこの上に乗のって歌ったり。私もそんなことを何年も続けていました。

あとは、芸能げいのう事務じむ所しょに入ってみる。事務所に電話でんわして、「入りたいんですけど、どうしたらいいですか？」と聞くのもいいと思いますよ。

自分を磨みがきながら、自分を積極せっきょく的てきに知ってもらう努力どりょくをしていくこと、そしてあきらめずに続けることが必要ひつようです！

伊藤凛：
一番努力したことや、難むずかしかったことは何ですか？

私は、とにかく一番になりたいの。宝塚の時もそうだし、歌のうまさを競きそう『THE カラオケ★バトル』というテレビ番組に出演しゅつえんする時もそう。1番になるためだったら、何でもする。他のことがちょっとおろそかになっても、全ての時間を歌だけに注ぎます。

私は、同時どうじにいろんなことを器用きようにできるほうではないので、とにかく歌で一位いちいをとれるように、朝から晩ばんまで練習しました。

でも練習しすぎて、喉のどを壊こわしたこともあります。失敗しっぱいしながら勉強したように思います。

みかん：
歌手になる夢を叶かなえていますが、これからなりたい自分はありますか？

私にはまだ、できることがたくさんあります。

今すでに歌手として自分の曲を発表はっぴょうできていて、自分の歌を聴きいてくれる人や応援してくれるファンがいるのは確たしかです。でも、今の自分に満足まんぞくしているかというと、まだまだ満足していません。

もっとたくさんの人に聴いてもらえるように、これからも活動を続けていきたいですね。自分の今の気持ちや、今の自分にしか届けられない曲を発信はっしんしたいです。

歌手になるには自信が必要

虹太：
歌手になるのに、必要な資格しかくはありますか？

資格は何もいりません！（笑）

音楽への愛あいと、根性こんじょうがあればＯＫです。今の時代は、もし虹太くんが歌手になりたいと思えば、YouTubeにアップするだけでなれちゃうかもしれないね。でも歌手になるためには、資格の勉強をするくらいの努力が必要なのは間違まちがいないね。

ばん：
小学校の勉強で、役やくに立つことはありますか？

全て役に立つんじゃないかな。いろんなものが自分にとって刺激しげきになり、役に立つ材料ざいりょうになります。

例えば、自分で歌詞を書く時には国語力が必要です。理科で植物を愛めでることもそうだし、社会で今までの歴史れきし上じょうの人物じんぶつについて勉強することもそう。曲をつくるうえでも、歌う場合でも役に立ちます。

音楽はもちろんですが、特に国語が大事かな。みんなは音読おんどくしている？

ばん：
音読は好きです。

好きなんだ！いいことだね。セリフの部分を楽しんで、いろいろな読み方や自分なりの表現を試ためせるとすごくいいよね。演えんじることで、お芝居しばいがおもしろいと思うことにつながるかもしれません。

音読を通して演じるうちに、自分なりの表現の方法が見つかると、自分の自信になります。「私はこれができる」という自信がないと、絶対に歌手にはなれません。

学校でテストの結果が来ると、今の自分の点数てんすうが目に見えてわかります。「もっとがんばったら、もっとできるようになるかもしれない」と上を目指めざす気持ちも学べる。だから学校の勉強は、すべて役に立つと思います。

ー自信を持つことの大切さや今までの努力、歌手として必要なことについてお話しくださったRiRiKAさん。後編こうへんでは歌うことへの熱あつい想おもいや、「働く」と「お金」の関係についても聞いていきます。

【子どものためのおしごとメディアＮＡＲＩＷＡＩ】
子ども取材班：みかん、伊藤凛、虹太、ばん
編集部：スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング：吉川ゆゆ
サムネイルデザイン：南 裕子
編集：スナミアキナ
編集長：吉川ゆゆ
主催：ＹＯＫＡＲＯ