今回のお相手:RiRiKAさん
歌手・女優という仕事を生業としている。2003年宝塚歌劇団に入団、花組の娘役として活躍。宝塚音楽学校では、歌の授業でそれまで誰ももらったことがない最高の成績「秀」をもらったことがある。宝塚歌劇団を退団したあとは、歌手としてテレビや舞台、YouTubeで活躍。テレビ東京『THE カラオケ★バトル』で6回も優勝するなど、誰もが認める歌の力をもつ。
子ども取材班
No.13 みかん:
勉強やダンスを頑張っている。水槽から飛び出した魚が生きていて、元気になったことが嬉しかった。
No.14 伊藤 凛:生業にしたい職業は女優。ジュニアアースジャパンの京都グランプリ、日本大会グランプリになったので、世界大会に向けてウォーキングやスピーチをがんばっている。
No.10 ばん:
バスケのドリブル練習・二重とびをがんばっている。誕生日にレストランに行ったこと、大繩でみんなで目標達成したことが嬉しかった。
No.12 虹太:
お母さんが読んでいる新聞を、自分も読むことを頑張っている。山を散策して木を切ったことや、ビームライフルの体験をしたことが嬉しかった。
お客さまからいただく拍手や笑顔は宝物
みかん:
この職業の魅力は何ですか?
歌手の仕事は、自分が好きなことだからとにかく楽しい。本当に何も嫌なことがないの。それは今まで努力してきたからこそなんだけど、ステージで歌うこともレコーディングも、楽しい気持ちしかありません。
お客さまからいただく拍手や笑顔は、私の宝物です。それだけで「歌っていてよかった」と心から思えます。みなさんが楽しそうに笑顔で聴いてくださっているのが、ものすごく嬉しいです。
みかん:
大変だと思うことはありますか?
体調管理です。風邪を引くなんて、もっての外。体が元気じゃないといけないので、十分すぎるくらいのケアが必要です。喉はとてもデリケートだから、常に湿度を気にしています。ほんのちょっとでも咳が出るようなら、お客さんに満足してもらえる歌を歌えなくなってしまいますからね。
ライブに来るお客さまはお金を払って楽しみに見に来てくださるから、絶対にそんなことがあってはなりません。
もっての外=とんでもない
湿度=空気の中にある水分の量のこと
ライブに来てくれるお客さまのためにも体調管理はしっかりと
虹太:
湿度を気にしていると言っていましたが、喉を大事にするためにどんなことをしていますか?
シンプルに、加湿器を使っています。普通のおうちなら湿度40~50%がちょうどいいといわれているけれど、私は60~70%にしています。部屋にカビが生えるかもしれないという心配よりも、喉のほうが大事ですから。
他に喉のケアで気をつけているのは、自分の発声練習。朝に声を出す時は、お風呂にお湯をためて、その中で歌います。寝起きはまだ筋肉が起きていないので、無理やり声を出すと痛めてしまうことがあります。だから筋肉をほぐすためにも、体をあたためることが大事。お風呂はちょうど加湿されているから歌うには最高の場所です。
みんなも歌を練習する時は、お風呂でやるといいよ。喉に負担がないし、人もいないし、うまく聞こえます。歌がうまく聞こえると、自信も生まれますしね。
加湿=湿度を上げること
みかん:
生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか?
難しい質問ですね。他の職業にも興味はあります。生まれ変わった時に別の才能がありそうだったら、歌手はもうやらないかな。違うことでがんばると思います。
もし今と全く同じ才能だったら、また歌手になるでしょうね。今の私は、歌うこと以上に楽しいことはありません。ただダンスをもっとがんばって、踊りながら歌えるようになれたらよかったのにな、とは思います。
でも多分生まれ変わってもまた同じように、歌一本でがんばっていこうと思っている気がします。
才能=生まれつき持っているすばらしい力
虹太:
興味があるほかの職業って、例えば何ですか?
私は、日本の歴史が大好きで。
虹太:
僕もです。
そうなんだ!歴史上の人物では、誰が好き?
虹太:
石田三成です。
いいねぇ。私も戦国時代も大好きだし、飛鳥時代にも興味があるから、お寺に行くのも好きです。学生の頃は、テストは社会だけ100点でした。なので歴史の先生にも興味があります。話すのも好きだから、人前で話すような仕事もいいですね。
石田三成=戦国時代に活躍した将軍
あきらめない気持ちと、自分から行動することが大事
伊藤凛:
今の子どもに、歌手はおすすめできますか?
本当にやりたいことをやっている点では楽しいし、おすすめしたい気持ちはすごくある。でも、人気が出たりお仕事が増えたりするまでが長く、運にも左右されるという意味では、かんたんにおすすめとは言い切れません。
もちろん売れない間は、お金も入ってきません。私も宝塚歌劇団を辞めてから10年くらいは、ずっとアルバイトをしながら歌の活動をして生活していました。
左右される=何かを決める時に、ものごとの影響を受けること
伊藤凛:
そっかあ……。
本当に心から歌を愛していて、「歌のためならなんでもできる!」という強い思いと、何年も売れなくてもあきらめない心が必要です。その覚悟がある人にはおすすめかな。
みかん:
売れるまでの、辛くて苦しい時間を乗り越えるにはどうしたらいいですか?
私には歌しかないと思って意地になっていたし、その意地がよかったのかもしれません。あきらめない気持ちと、自分から行動することが大事。何もしないと何も変わらないけれど、行動すれば変わっていくから。
あきらめない気持ちと自分から行動することが大事
その積み重ねで10年がんばれました。10年って、すごく長いけどね(笑)。とにかく常に自信を持っていなくてはいけないから、しっかりと練習をすること。それと、もっと自信をつけられるように、時々だれかにほめてもらえる環境に行くこともおすすめします。
伊藤凛:
私は世界で活躍できる女優になりたいのですが、今からしておけばいいことはありますか?
今すでに、歌やミュージカルを習っているんだよね?
伊藤凛:
はい。
その時点で、周りよりリードしていると思いますよ。
そうだなあ、いろんな映画や舞台をたくさん観たり、観た時に「自分だったらどうするかな?」と考えるのもいいね。女優は人の気持ちがわかる人じゃないと通用しないし、人間力が大事な仕事ですから。
それから、人見知りせずいろんな人とコミュニケーションをとって、「世の中にはこんな考えの人がいるんだな」と知ることも、女優の仕事には役に立つとは思います。
伊藤凛:
ありがとうございます。
今の自分にしか歌えない歌を歌いたい
ばん:
これからやっていきたいことは何ですか?
たくさんあります!
さっき言ったように、今の自分にしか歌えない歌を歌っていきたいです。過去の私の思いが込められている歌も大事に歌いたいけれど、今の私にしかできない表現や歌があります。新しいものを常につくっていきたいですね。
それと、なるべく生でたくさんの人に歌を聴いてもらえるようにしたい。今はオンラインサロンで、ファンの人と一緒にいろんなことに取り組んでいます。ファンの人に歌を教えて、発表会もしていますよ。音楽でコミュニケーションをとるのが大好きなんです。3~5歳の子ども向けのミュージカルをつくることもあるので、それもまたやってみたいです。
オンラインサロン=インターネット上の、同じ興味や関心がある人たちの集まり。
過去=昔
今の自分にしかできない歌や表現をつくっていきたい
虹太:
舞台に上がるとき、緊張することはありますか? それはどんなときですか?
うまくやろうと思っているときや、練習が足りていないときは緊張します。完璧じゃないとき、自信がないときもそう。基本的に、歌手の活動のステージや、ミュージカルで緊張したことはほぼありません。練習をがんばってきて、絶対上手に歌えるという自信があるから緊張しないの。そうすればあとは楽しむだけ。「歌を聴いてくれているみんなも楽しいはず」と思い込んで歌います。
だけど、失敗できない場では緊張します。『THE カラオケ★バトル 』というテレビ番組に出た時は、1mmの技術の狂いで点数が0.01点下がっちゃうの。それはどうにもできないし、緊張しないようにするのはむずかしいですね。
だから緊張する中でも、ベストを尽くせるように練習をするしかないかな。とにかく練習が必要だと思います。
虹太:
僕はもうすぐギターの発表会があるので、参考になります。
えー!すごい、頑張ってね!自分がもうスーパーギタリストになっているという暗示をかけて、練習しよう。うまくやろうとしたら緊張しちゃうから、「ここまでやったんだから、いけるぜ!イエイ!」と思ってやるのがいいかもしれないね。
暗示=そう思い込むようにすること
虹太:
緊張したらどうしていますか?
失敗したくないけど、一回失敗すると楽になることがあります。失敗しても、「よかった、今ので緊張が解けたな」と思えるといいね。
虹太:
ありがとうございます。
みかん:
あのう……好きな歌や得意な歌を、ちょっとだけでいいので歌ってもらいたいです。
わかった!みんなは最近どんな歌を聴いているの?
虹太:
僕は、SEKAI NO OWARIとかRADWIMPSの曲を聴いています。
みかん:
NiziUみたいな、アイドルグループの歌を聴きます。
伊藤凛:
あの、私はRiRiKAさんのYouTubeで『いのちの歌』を聴かせてもらったんですけど、本当にきれいな声ですてきでした。
ありがとう。じゃあ『いのちの歌』を歌ってもいいかな?
全員:
はい!
突然のお願いにもかかわらず、RiRiKAさんは快く『いのちの歌』を歌ってくださいました!その優しさと歌声の美しさに、取材班は感動!
全員:
すごーい!(拍手)
ありがとう。今日、歌ってと言われるとは思わなかったな(笑)。YouTubeも見てくれたんだね。みんなありがとう。
全員:
ありがとうございます!
お金より、夢や目標があることが大切
伊藤凛:
ここからは、「働く」と「お金」の関係についても聞いていきます。「働く」ということについてどう思いますか?
これは難しいことだよね。欲しいものや、やりたいことがある場合は、自分でそのお金を稼ごう、と思うな。「働かざる者食うべからず」という言葉があるように、生きていくために働かなくてはいけません。でも働かなければいけない、と思うのはつらいですよね。だから私は、楽しいと思える働き方がしたいです。
虹太:
「お金」についてはどう思いますか?
お金は本当に大事で必要。何をするにもお金が必要です。お金がないと心に余裕がなくなってしまうし、やりたいこともできません。上手にお金が自分のところに入ってきてくれるようになるために努力しないと、と思うよね。
みんなはお金についてどう思うのかな?虹太くんはどう?
虹太:
僕も大事なものだと思います。
そうだよね、ないと何もできないものね。電気も点かないし、食事もできないし、電車にも乗れない。お金にふり回されるのは嫌だけど、どうしたって必要なものだよね。
そんな時に大切なのは、夢があること。「お金を貯めてたくさんレッスンをして、うまくなる」「アルバイト代で歌を家で録音できる機材を買って、YouTubeにアップする」など、ゴールをお金じゃなく夢にする。
お金は大事です。でも夢や目標があることは、もっと大事です。
機材=機械などの材料
お金は自分の夢や目標のために必要なもの
みかん:
お金を「稼ぐ」ことについてどう思いますか?
私は、お金を稼ぎたいと思います。自分のやりたいことをやるためにも、お金が必要だからです。このマイクも機材も、ギターもピアノもそう。お金をはらって買ったものです。お金を稼いで、自分のやりたいことにお金を使いたいです。
一人前の大人として、自分でお金をかせぐことができる人でありたいし、自分で決めて、自分の生きたい人生を歩みたい。それは、自分を前向きにできる材料にもなると思います。
お金を稼ぐことに関しては、あまり人に頼りたくないですね。
虹太:
お給料はどうやって決まりますか?満足していますか?
私のお給料は、毎月自分が働いただけお金がもらえるシステムです。もらったお金を、事務所と分けています。
多くの会社員は毎月のお給料が決まっていて、全然結果が出なくても、ものすごくがんばっても金額は同じ。私はそれが苦手で、がんばったらがんばった分だけお金がもらえる今のシステムが、自分に合っています。なので満足しています。
ファンの声に応えたくて働いている
働くのは自分が自分らしくあるため
伊藤凛:
RiRiKAさんは、何のために働いていますか?
もちろん生きていくためにお金が必要だから、働かないといけません。でもどうしてもやりたくないことや、納得いかないことでずっと働いていくのは難しい。だから、自分が自分らしくあるために働いています。
夫は、結婚する時に「仕事を辞めたければ、辞めてもいいよ」と言ってくれました。結婚したことで、ありがたいことに働かなくても生きていくことができます。でも私は今も働いています。
夫=自分の結婚している相手(男の人)
伊藤凛:
なぜですか?
私の歌を聴きたいと言ってくれる人が一人でもいる限り、この仕事を続けていきたい。今は、その声に応えたくて働いています。歌うことが好きで、私の歌で笑顔になってくれる人がいることが本当に幸せなので、これからもそんな歌を歌える人間でいたいです。
それと、自立していたいからです。自分で稼いだお金で自分の欲しいものを買いたいし、社会とつながりを持っていたい。働くことでたくさんの人と触れ合い、刺激も増えます。
内にこもっちゃうと、世界が狭くなる。働いている自分が好きだし、働くのが楽しいというのもあるかな。
自立=自分の力でものごとをやっていくこと
みかん:
「働く」と「お金」の関係についてどう思いますか?
働いたらお金をいただけるから、もちろんつながっていると思います。だけどそれだけだとおもしろくないし、辛くなってしまう。
仕事の中にも「成長できる」「楽しい」「自分の夢のために必要なステップ」など、お金を稼ぐ以外の目的を見つけられたら、幸せなんじゃないかと思います。
虹太:
では最後に、この記事を読んでいる子どもたちへメッセージをお願いします。
可能性が無限大であることは、間違いない!これから未来に向かっていくみなさんは、キラキラしていてとってもうらやましいです!
私のテーマは、「チャレンジすること」と「自信を持つこと」。どんなことに対しても、私だったらできる、と思うようにしています。そうすることによって、自然に努力するようになります。
みんな何でもできるし、興味を持ったことは何でもやってみてほしいし、自分ならできると常に思っていてほしい。やらないのが一番もったいないです。
人生に無駄なことなんて、一つもありません。たくさん失敗して、悔しい思いをした人は、人の痛みがわかる優しい人になれます。ちょっとやそっとで動じない、強い人になれます。子どもたちみんなが、心から楽しいと思える職業につけることを祈っています。
みんな頑張ってね!
無限大=限りないこと
全員:
ありがとうございました!
こんなお話もしました
伊藤凛:
宝塚のオーディションでは、具体的にどういうことをしましたか?
私がオーディションを受けたのはずいぶん前なので、変わっているかもしれないけれど。
声楽、バレエ、そして面接という3つの試験があります。
声楽では、クラシックというオペラ歌手のような歌い方をします。2つ試験があって、1つは課題曲が決まっています。8曲ほどの中から、好きな曲を選んで歌います。もう1つは、新曲歌唱。2段くらいの楽譜を渡されて、それをパッと見て15秒後に音が鳴って歌うんだけど結構緊張します。
伊藤凛:
そうなんですね。
バレエは試験当日に、振り付けの部屋で先輩が見本として踊るのを見て覚えて、その後、試験官の前で2人ずつ踊ります。
面接は10人くらい部屋に入り、受験番号、出身地、身長などが書いてある紙を読み上げます。みんな、テレビで面接のシーンは見たことあるかな?「さんびゃく、にじゅう、ろくばん~」と、独特の話し方で読み上げていくの。いかにいい声で、劇場の一番後ろの席まで届くように自分をアピールできるか、という面接なの。
それに受かると、2次試験。そのとき声楽とバレエの試験があって、あと秘密のサプライズオーディションのようなものがあります。私たちのときは、急に音楽が流れてきて、その音にあわせてダンスをする試験でした。
私はもうどこにもお見せできないくらいひどい状況になってしまったのだけれど。急に言われてどこまでできるのか、という度胸を試されていたのかもしれません。
2次試験の面接は、1人ずつでした。試験官の方が10人くらい並んでいて、質問をされます。その時は1次試験のような独特な話し方ではなく、普通に受け答えをしました(笑)。
試験官=試験の審査をする人
面接=問題を解くのではなく、顔を合わせて会話を行うテスト
独特=その人やそのものだけが持っていること
度胸=ものごとを恐れない心
全員:
(笑)
伊藤凛:
実は私のおばあちゃんは、宝塚歌劇団出身なんです。
そうなの!?大先輩だね、よろしくお伝えください!じゃあ観に行くこともあるのかな?
伊藤凛:
おばあちゃんが宝塚にいたのは、私がまだ生まれて間もないくらい小さいときだったので、観に行けてないんです。
そうなんだ。ぜひ観てほしいな。興味はあるの?
伊藤凛:
はい。
嬉しい!
歌手ってどんな仕事?
・スタジオで歌をレコーディングして、音楽をつくる
・iTunesやYouTubeで発信したり、ライブを開催したりする
・作詞や作曲、編曲をする場合もある
歌手の魅力
・自分が好きな歌を仕事にしているので、とにかく楽しい
・自分の歌を楽しそうに笑顔で聞いてもらえるのが嬉しい
・歌で周りの人をしあわせな気持ちにできる
大変なこと
・お客さんに満足してもらえる歌を歌えるように、しっかり体調管理をする
・人気が出たり仕事が増えたりするまで、時間がかかることがある
・「歌のためならなんでもできる!」という強い思いと、すぐに有名にならなくてもあきらめない心が必要
「働く」と「お金」の関係について
・一人前の大人として、自分でお金をかせぐことができる人でありたい
・働いている自分が好きだし、働くのが楽しい
・働くことのゴールを「お金」ではなくて「夢」にするといい
・仕事の中に「成長できる」「楽しい」「自分の夢のために必要なステップ」など、お金を稼ぐ以外の目的を見つけられたらしあわせ
RiRiKAさんが思う大切なこと
・音楽への愛と目標と根性を持ち、努力すること
・どんな時でもベストを尽くせるように練習をする
・あきらめない気持ちと、自分から行動すること
・興味を持ったことは何でも挑戦してみること
・「自分ならできる」と自信を持つこと
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:みかん、伊藤凛、虹太、ばん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
サムネイルデザイン:南 裕子
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO