インタビュー記事

第7回 スポーツのチカラで笑顔を届ける 「スポーツ系公務員」 伊藤 遼平さん【前編】

今回のお相手:伊藤遼平りょうへいさん

もとFC東京とうきょうのクラブスタッフで『公務員こうむいん』という仕事しごと生業なりわいとしながら「スポーツ系公務員」として、今は埼玉県さいたまけん宮代町みやしろちょう役場やくばで子どもたちの笑顔えがおのためにはたらいている。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは伊藤遼平さん。公務員です。スポーツ系公務員って、いったいどんなお仕事なのでしょう?

ケイティ:
よろしくおねがいします。

伊藤さん:
よろしくお願いします。

スポーツに関わる大人になりたかった

ケイティ:
わたし空手からてをやっているんですが、伊藤さんは子どものころどんな大人になりたかったですか?

空手!何さいからやってるんですか?

ケイティ:
年長からです。

5年くらいか。すごいね!子どもの頃は4年生からバレーボールをやっていて、将来しょうらいはプロの選手せんしゅになりたいとおもっていました。中学生の頃は、選手をささえるスポーツメーカーの人にあこがれました。スポーツするときのふく道具どうぐる人ですね。

高校生こうこうせいになると、だんだん将来を真剣しんけんかんがえるようになりました。バレーボールをみんなにおしえたいと思って、学校の先生を目指めざしました。大学生になると、大学の先生の紹介しょうかいでFC東京でアルバイトをはじめました。

ケイティ:
アルバイトでは、どんなことをしていたんですか?

FC東京ってってる?

ケイティ:
知らないです。

東京にある、Jリーグのプロサッカーチームです。じつはバレーボールチームもあるんですよ。そこでは、小学生やママさんバレーのスクールコーチをしていました。

Jリーグ=日本のプロサッカー組織。勝ち負けによってJ1、J2のグループに分けられている。川崎フロンターレ、ガンバ大阪、サガン鳥栖など日本中にチームがある。

ケイティ:
サッカーもバレーのチームもあるんですね。憧れていた人はいますか?

特にはいなくて。でもなんとなくスポーツにかかわる大人の人ってかっこいいなと思っていました。

公務員だから、できることがある

ケイティ:
伊藤さんの職業名しょくぎょうめいを教えてください。

公務員です。公務員って知ってる?

ケイティ:
おじいちゃんが公務員なので、地域ちいきとか国のために働いているときました。くわしくは知らないです。つまりは何をしているお仕事なんですか?

ケイティちゃんが言ったように、国や地域の人たちのために働くお仕事です。
公務員にはいろんな仕事があるんですよ。国、都道府県とどうふけん、地域など幅広はばひろく担当します。ぼくは地方公務員といって、みんなの身近みぢかなところである地域の暮らしを支えています。

担当=係

埼玉県宮代町役場の職員として働いている伊藤さん

ケイティ:
では、仕事内容ないようを詳しく教えてください。

今は「こども笑顔担当」という部署ぶしょで働いています。地域の子たちが楽しくごせるような場や、子どもたちの居場所いばしょを考えています。その地域には子育て支援しえんセンターや児童館じどうかんが3,4つあって、そのうちのひとつで働いています。「どんな遊びをしたら子どもたちが楽しいか」を考え、地域の保護者ほごしゃたちに聞いて企画きかくしています。

部署=役割やくわりや担当している場所

ケイティ:
お仕事で工夫くふうしていることはありますか?

なるべく多くの人の話を聞くようにしていますね。自分がいいと思ってもほかの人はそうじゃないこともある。子どもたちにもどんなことをしたいか聞いたり、みんながどうすれば楽しくすごせるかを考えています。

ケイティ:
なぜその仕事をしようと思ったのか、そして続けているのかを教えてください。

公務員というのは定期的ていきてきにいろんな部署に行くことになります。異動いどうして担当になることを配属はいぞくといいます。今の部署に配属されたのがきっかけでこの仕事をしています。

Jリーグの会社で働いていた経験けいけんかして、子どもたちが「楽しい!」と思って過ごしてくれるように今も働いています。

定期的=ある程度ていどまった期間きかんでのこと

異動=仕事の場所などが変わること

ケイティ:
スポーツのお仕事はいろいろあると思いますが、何で公務員になろうと思ったんですか?

Jリーグの会社で働いていると、実際じっさいにプロの選手に会う機会きかいがあります。そのときに「自分は子どもの頃、生まれ育った地域で選手に会ったことってあったかな?」と思いました。どの職業の大人がどのように頑張がんばれば、子どもたちがプロの選手と会える機会をつくることができるだろう?と考えたときに、公務員ならできるんじゃないかと思いました。

子どもたちとスポーツ選手を会わせたい

ケイティ:
お仕事は、自分のやりたいこと以外いがいもやると聞いたんですが、そういうときはどうしていますか?

たしかにやりたいこと以外もやらなくてはいけないのは、くるしいと感じるときもあります。でもいつかはかならず子どもたちが選手に会える機会をつくりたいとねがっていて、その準備じゅんびだと思いながらやっています。

ケイティ:
なぜ子どもたちと選手を会わせたいんですか?

ケイティちゃんは自分の住んでいる地域で、スポーツ選手に会ったことはある?

ケイティ:
うーん、ないです。

会ってみたくない?

ケイティ:
会ってみたいです!

地元に空手の日本代表だいひょうの選手が来たらどう?

ケイティ:
会いたい!

そういう風に、子どもたちに「会いたい!」「会えてうれしい!」という思いや体験たいけんをさせてあげたいんです。それをきっかけに子どもたちが頑張ったり、活躍かつやくしてくれたら嬉しいですね。

猛勉強をして公務員になった

ケイティ:
公務員って、どうやったらなれるんですか?

試験しけんがあるんだよ。年に一回あって、それに合格ごうかくすればなれます。30歳くらいまで試験をけられるところが多いですね。合格すればなることができます。ただし、犯罪はんざいとかわるいことをした人はなれません。

ケイティ:
どんな試験なんですか?

国語、数学すうがく理科りか社会しゃかい英語えいごの試験を受けました。50問くらい問題があって、マークシートで答えます。それに合格すると、さらに面接めんせつといって「きみはなぜ試験を受けたの?」といった質問しつもんに答える試験があります。面接は、書くのではなく直接ちょくせつえらい人たちとお話しする試験です。

マークシート=答えの番号の丸を塗りつぶす答え方

ケイティ:
一番むずしかった試験はどれですか?

勉強べんきょうでの筆記ひっき試験ですね。僕はバレーボールをずっとやっていて、筆記試験を受けずにスポーツ推薦すいせんで進学してきました。正直しょうじき、学生の頃は勉強を一生懸命いっしょうけんめいしていなかったんです。だから公務員試験のためにもう勉強しました。

推薦=学校の先生が、進みたい学校の先生にその人のことをおすすめしてくれること

進学=高校や大学に進むこと

ケイティ:
資格しかくが必要なお仕事ですか?

僕がやっている一般事務職員いっぱんじむしょくいんになるには、資格はいりません。

公務員のお仕事は本当に幅広くて、たくさんやることがある

みんなの生活への責任がある

ケイティ:
この職業の魅力みりょく大変たいへんだと思うことは何ですか?

魅力は、自分が働くことで地域にすごくよい影響えいきょうがあるのが、目に見えてわかることです。

たとえば「スポーツ選手をんで、子どもたちに会ってほしい」と思って企画するとします。それを実際にやったら、子どもたちが喜んでいるのをじかに見て感じられますよね。子どもたちが喜ぶことは、その地域が元気になってとってもよい影響があると思います。

大変なことは、配属される部署がわからないことですね。ひとことで公務員と言っても実はいろんな部署があります。

僕は以前いぜん、家をてるためのチェックをする部署にいたことがあるんですよ。法律ほうりつまもっているか調しらべる部署、道路どうろを作る部署、コロナウィルスなどの衛生えいせい状況じょうきょうをチェックをする部署など、本当にたくさんあります。

1人1人が仕事をおろそかにすると、みんなの生活がだめになってしまう。そういう責任せきにんがあるからこそ、頑張れますね。

企画=アイデアを出して計画けいかくを立てること

法律=国の決まり

おろそか=ざつにすること

未来の後輩たちに、先輩としてのメッセージを送っている

ケイティ:
そんなにいろんな部署があって、伊藤さんはどうやって仕事をおぼえるんですか?

ものすごく勉強します。法律を覚えないといけないので、それはとくに勉強しています。大人になっても勉強しつづけることって、大切だと思うんです。今は毎朝まいあさ読書タイムをつくるために、30分早く出勤しゅっきんして勉強することを何年も続けています。

ケイティ:
いっぱい勉強されていますが、生まれわってもまたこの仕事がしたいと思いますか?

すごい質問だね、なやんじゃうね(笑)。

そうだね、まだ自分が挑戦ちょうせんしきれてないので、その挑戦をしてから考えるかな。まだ子どもたちと選手が会う場をたくさん作れていないから。でも、ステキな仕事なので、チャンスがあれば生まれ変わってもまたやりたいと思うかもしれませんね。

ケイティ:
目標もくひょう実現じつげんできたら、嬉しいと思いますか?

すごく嬉しいね!そういえば、僕の地域にも空手してる子がいるのかな?考えたことなかったけど、ケイティちゃんの話を聞いて、空手について今考えてるんですよね。何かもっとできることがあるかもしれないな。

―猛勉強をして公務員試験に合格し、公務員としてだけではなく「スポーツ系公務員」としても日々考えながら働いている伊藤さん。

後編では子どもたちのためにどんなことをしているか、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。

後編に続く

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編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
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