インタビュー記事

第6回 伝統文化を未来に 「空手家」 鈴木 隆昭さん【前編】

今回のお相手:鈴木すずき隆昭りゅうしょうさん

空手家という仕事を生業なりわいとしている。子どもの頃から、師匠ししょうである父に空手を習っていた。東京都とうきょうと大田区おおたく道場どうじょうがあり、大人から子どもまで空手の指導しどうをしている。また日本だけでなく世界せかいのいろんなところでも空手家として活躍かつやくしている。

子ども取材班しゅざいはん

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。将来しょうらいゆめはイラストレーター。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

No.6 ちっち:
洗濯を頑張がんばっている。将来しょうらいゆめはパティシエ。クラス替えがうれしかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは鈴木隆昭さん。空手家です。空手家って、いったいどんなお仕事なのでしょう?

かのぴ・ちっち:
よろしくおねがいします。

鈴木さん:
よろしくお願いします。

続けてきたことが、生業になった

ちっち:
鈴木先生は、子どもの頃どんな大人になりたかったですか?

わたしは子どもの頃から父に空手をおそわっていました。将来しょうらいも空手をやるのかなと思いながら育っていたので、空手家や空手の先生になるのだと思っていました。

かのぴ:
なぜ、将来もやるのかなと思っていたんですか?

「空手をずっとつづけるからね」と父に言われていたからですかね。やりたくない時期じきもあったけれど、職業しょくぎょうとして空手をやりたいと思っていました。

ちっち:
あこがれていた人はいますか?

時期によってわっていましたが、そのときに強かった空手家です。道場どうじょうかざってある、写真の人は私の先生で、憧れはありましたね。自分より強い選手せんしゅに憧れていました。

東京都大田区にある、鈴木さんの道場。

時期=決まった期間きかんのこと

道場=稽古けいこをする場所

ちっち:
わあ!

かのぴ:
これが道場!はじめて見た!

こんなかんじですね。

かのぴ:
強い選手に憧れていたんですね。鈴木先生の職業名はなんですか?

特定非営利活動法人とくていひえいりかつどうほうじん   國際松濤館こくさいしょうとうかん   空手道連盟からてどうれんめい   職員しょくいん國際指導員こくさいしどういんです。

かのぴ:
特定非営利活動法人ってどういうことですか?

NPO法人のことです。お金をもらうことを目的とせずに、地域ちいきや社会に対して活動を行う団体だんたいのことです。

NPO法人は、お金をもらうことが目的ではないけれど、活動した分のお金をお給料などとしてもらうことができます。ボランティアはお金をもらわずに活動します。

ちっち:
つまり何をしているお仕事しごとなんですか?

空手家で、空手の先生です。

ちっち:
普段ふだんは大人と子ども、どっちに教えているんですか?

どちらもです。まだ学校に行かない小さな子どもや、おじいさんたちにも教えていますよ。

海外でも日本の伝統文化を伝えている

かのぴ:
では仕事内容ないようくわしく教えてください。

空手の指導を職業としています。伝統文化でんとうぶんかのひとつで、沖縄おきなわで生まれた空手を指導する仕事です。

指導=教えて育てること

伝統=むかしからずっと受け伝え続けられているもの

文化=人々が社会の中でつくりあげてきた、ものごとや考え方など

ちっち:
なぜその仕事をしようと思ったんですか?

大学生の頃に就職活動しゅうしょくかつどうをしていたら、師匠ししょうである父にすすめられました。指導員を募集ぼしゅうしていたので。

就職活動=学校を卒業そつぎょうしたあとにはたらく会社をさがすこと

ちっち:
どうやったらなれるんですか?

まず2年間研修けんしゅうをします。研修員から、その後指導員という名前に変わります。今は國際指導員になりました。そうすると海外に派遣はけんされて行くことができます。今は海外から呼ばれて、年に3回~4回ほど行っていますね。

海外の人たちに日本の伝統文化を伝えている。

研修=力をつけるために特別に練習したり勉強したりすること

派遣=いつもと違う場所に行って活動するようにいわれること

かのぴ:
え!海外で何をするんですか?

支部しぶ全世界ぜんせかいにあるんですよ。その支部から呼ばれたら、その支部がある国に行きます。今年の7月はベルギーに行く予定よていでした。2月の下旬げじゅんにアメリカのヒューストンに行ってきました。NASAがあるところです。

支部=もともとあるところを中心にして、いろんな地域に場所を作ったもの

NASA=アメリカ航空宇宙局こうくううちゅうきょく。宇宙について調しらんでいるアメリカの施設しせつ

かのぴ:
NASA!知っています。すごい!お仕事に資格しかく必要ひつようなんですか?

資格はとても大切です。空手のだんっていなければならないし、人に自分をみとめさせる実力じつりょくがないと取れません。資格は研修期間きかんに取ります。指導できる資格と、審査しんさをするための資格、試合しあい審判しんぱんをするときの資格です。

段=レベル分けしたもの

審査=級や段をあげるためのテスト

かのぴ:
資格を取るときは緊張きんちょうしましたか?

しましたね。

強さとは、自分の気持ちを貫くこと

ちっち:
この職業の魅力みりょくと大変だと思うことを教えてください。

魅力は、外国の人たちと空手を通じて交流こうりゅうをして、いろいろな国の文化にふれることができることです。海外のたくさんの人と話すことができます。小さい頃から好きだったことを職業にできてよかったと思いますね。

大変なことは、空手のことについての勉強ですね。武道ぶどう歴史れきしを学び、武道に対するトレーニングをたくさんしました。稽古けいこは、心や自分自身への気持ちを強くすることでもあります。学校では教えてくれないことです。

武道=日本の文化のひとつ。相手の動きによって攻撃したり守ったりする、空手や剣道・柔道などの運動

かのぴ:
鈴木先生の思う、「強さ」とはどういうことですか?

腕力わんりょくやはっきりとした力の差のことではなく、自分がそれをつらぬこうとしたときに貫いたら強さになります。

稽古は、自分自身を強くしてくれる。

腕力=腕や手の力

貫く=やり通すこと

かのぴ:鈴木先生の階級かいきゅうはどれくらいなんですか?

七段です。ちなみに十段まであります。

階級=級や段などのレベル

ちっち:
へえ~!

かのぴ:
すごい……。おびの色はどんな意味いみがあるんですか?

初級しょきゅうは白です。いろんな色にめることができる。だからみんな最初さいしょは白なんです。

國際松濤館では、8級が黄色きいろ、7級がオレンジ、6級がみどり、5級が青、4級がむらさき、3・2・1級がちゃ、3級から先は、柔道じゅうどうや空手など帯を使う武道はどれも色は同じです。初段から黒帯になります。

審査は、年に3回から4回行います。帯にふさわしい審査の仕方をしています。もともと空手をやっている子は、稽古をしているうちにどんどん成長せいちょうしていきます。

生徒せいとは、全員が自分からやりたいと言ってきた子たちではありません。学童がくどうでの稽古などもそうですが、おやがやらせたいと思ってならっている子もいます。それでも、やっていくうちに面白いと思うようになった子は成長していきますね。

―かのぴやちっちもそうですね。実は2人は2年前まで鈴木先生の生徒でした。

かのぴ・ちっち:
ふふふ(笑)。

そうですね。私の稽古では、初めての子もそうでない子も、できる子もできない子も同じことをします。空手は気持ちの影響えいきょうが大きいので、気持ちがつながるようにしています。どの子でも、空手に興味きょうみがわくようなやり方をしていますよ。

かのぴ:
一番上が黒帯なんですね。

黒帯の中は実は白色なんです。黒帯になっても初心しょしんを忘れないように。黒帯になっても白帯の気持ちを忘れないようにということです。

初心=初めの頃の気持ち

黒帯の中は実は白くなっている

かのぴ・ちっち:
本当だ!知らなかった!

-日本の伝統文化である空手について、心の強さとは何かをまじえながら話してくださった鈴木さん。
後編こうへんでは空手家としての思い、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。

後編に続く

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:かのぴ、ちっち
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO