インタビュー記事

第18回 動物と地域の問題解決に取り組む 「ITハンター」 吉田 隼介さん【前編】

今回のお相手:吉田よしだ しゅんすけさん

ITアイティー企業きぎょうつとめながら、「カリラボ」というりの会社かいしゃ運営うんえいしているハンター。東京とうきょう埼玉さいたまけん横瀬よこぜまちの2かしょみながら活動かつどうしている。動物どうぶつからの被害ひがいらし、地域ちいきの力になることをしている。ITの力を使って、より狩りがしやすくなるようにかんがちゅう大学だいがくせい高校こうこう生の子どもがいるパパ。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.10 ばん:
バスケのドリブル練習れんしゅう二重にじゅうとびをがんばっている。誕生たんじょう日にレストランに行ったこと、大なわでみんなで目標もくひょう達成たっせいしたことが嬉しかった。

No.11 アメリ:
漢字かんじの勉強をがんばっている。公園で新しい友達ともだちをつくったこと、モデルの仕事しごとたことが嬉しかった。

No.15 ぜん:
勉強や友達とあそ工夫くふうかんがえることをがんばっている。友達に「大きだよ」と言ったら「ぼくもだよ」と言われたことが嬉しかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは吉田 隼介さん。ITハンターです。ITハンターって、いったいどんなお仕事なのでしょう?

ケイティ・ばん・アメリ・ぜん:
よろしくおねがいします。

吉田さん:
よろしくお願いします。

おじいちゃんみたいな大人になりたかった

アメリ:
子どものころ、どんな大人になりたいとおもっていましたか?

みんなとおなじ小学校3、4年生ぐらいのときには、映画えいが監督かんとくになりたかったです。みんな『スター・ウォーズ』って知ってる?

スター・ウォーズ=ジョージ・ルーカスの映画さくひん

全員:
はい。

ぼくが小さい頃、『スター・ウォーズ』のだい一作目が始まったんです。今はCGシージーがあるのがたり前の世界せかいでしょう?でも当時とうじは、実際じっさいにはないものを映像えいぞうでつくれることにびっくりしました。

ほかにも『インディー・ジョンズ』のように、今でも有名ゆうめいな映画のシリーズがちょうどはじまって、映画技術ぎじゅつが世界中で進化しんかした時代じだいでした。僕は単純たんじゅんだから、それで映画監督になりたいと思ってたの。結局けっきょくならなかったんだけどね(笑)。

CG=コンピュータグラフィックス。コンピュータを使って、画像や映像を生み出す技術

インディー・ジョーンズ=ジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグが考えた、冒険ぼうけん映画のシリーズ

進化=成長せいちょうしながら変化へんかしていくこと

ばん:
その頃、あこがれていた人はいますか?

僕のおじいちゃんです。小学校2年生のときにおじいちゃんの家のとなりして、よくあそんでもらったし、いろんなところにれてってくれました。

おじいちゃんはまじめで、おこるとこわくて、でもものすごくやさしかった。小さい頃から「おじいちゃんのような大人になりたいな」と思って憧れていました。

ケイティ:
おじいちゃんのどんなところがきでしたか?

まっすぐで、うそをつかないところです。やってはいけないことやわるいことをしてしまうと、ちゃんと怒ってくれました。気持ちに嘘がないから、怒られても全然ぜんぜんいやな気持ちになりませんでした。それに普段ふだんあたたかくてやさしい人なので、そういう人柄ひとがら尊敬そんけいしていました。

人柄=性格せいかくや、どういう人かということ

ぜん:
吉田さんの職業しょくぎょう名は何ですか?

2つあるんだけど、1つは会社かいしゃいん東京とうきょうないで、ITアイティー企業きぎょうつとめている普通ふつうのサラリーマンです。

もう1つは、2019年に「カリラボ」という会社を立ち上げたハンターです。埼玉さいたまけん秩父ちちぶぐん横瀬よこぜまちというところで、狩猟しゅりょうサービスの会社をやっています。狩猟とはりのことなんだけど、どんなサービスかわかるかな?

IT=インフォメーション・テクノロジー。コンピュータやインターネットに関する技術のこと

企業=会社のこと

ぜん:
僕は、カリラボのホームページで見ました。

おお、ありがとう。どんなことやってるかわかったかな?

アメリ:
りたいです。

狩りをやりたい人と、やってほしい人や場所ばしょむすびつけるサービスです。あと、狩りでれた獲物えもののおにくである「ジビエ肉」を、みんなにたのしんでもらえるように運営うんえいしています。

野生やせい動物どうぶつのお肉「ジビエ肉」

動物どうぶつによる被害ひがいらして地域ちいきの力になりたい

アメリ:
吉田さんの仕事内容を詳しく教えてください。

カリラボは、地域の害獣がいじゅう被害ひがいらし、地域ちいきの力になるための会社です。

まず、狩りをやってみたいけどできない人たちが、「巻狩まきがり」に参加さんかできるようにしています。巻狩とは、山に入って犬をはなして、犬からげてきた獲物えものじゅうつ狩りのことです。あと、わなって何かわかるかな?

害獣被害=動物による被害

ケイティ:
はい。

罠を使つかった狩りをしたい人もおおくいます。そういう人たちには実際に秩父に来てもらって、罠をうためのお金と、運営の力と、獲物のお肉をう。一緒いっしょに罠をかけ、その罠を見まわって、獲物が獲れたらみんなで分けています。

他にも、ジビエ肉の販売はんばいや、地元じもと猟師りょうしさんたちの狩りに参加できるサービス、ハンターになるために必要ひつよう情報じょうほう保険ほけんなどを提供ていきょうするクラブのようなものを運営しています。

提供=相手あいてし出すこと

仲間なかまたちと一緒に狩りをしている

ケイティ:
「運営の力」って何ですか?

狩りには、「獲物をいかけてる」とか、「罠をけて獲って、お肉をみんなでたのしむ」という目的もくてきがあります。

ただそれだけじゃない。いま日本にほん中で、野生やせい動物がものすごくえています。みんなもテレビで見たことがあるかもしれないね。たとえば、野生動物たちがはたけらしたりとか、まちに出てきて人を怪我けがさせたりとか。

野生動物のことを「けもの」、獣による被害を「獣害じゅうがい」といいます。ニュースで見るのは、獣害被害の一部分ぶぶんでしかない。実際には、もっと大きな問題もんだいこっています。何が起こっているかというと、山の中でものがどんどんっていって……あく循環じゅんかんってわかるかな?

野生動物=ペットのように人間にわれているのではなく、自然の中で生きている動物のこと

ぜん:
わからないです。

悪いことが起こって、それがもっと悪いことを起こして、悪いことが関係かんけいし合って大きくなっていく。とても悪い状態じょうたいつづいていくことを、あく循環じゅんかんといいます。

まず、山に人があまり入らなくなりました。例えば、むかしは山の中にんですみきする人とか、木こりとか、山に人がいたんだよね。でも次第しだいに人が街にりていって、動物を獲る人がいなくなった。そうすると動物が自由じゆううごまわって、山のものを食べるようになるので、だんだん動物のかずが増えていきます。

数が増えるから、今度こんどは動物の食べ物がりなくなる。山の中で、今まで食べなかったようなものを食べるようになります。食べ物は減っていくのに、動物の数は増えていく。そうすると、動物はどんどん山から下りてきます。

炭焼き=木を焼いて炭をつくること

木こり=木を切ることを職業にしている人

ケイティ:
そうなんだ……。

悪循環になっているよね。これをどうにかしないと、日本中の山がきれいな山じゃなくなってしまう。さっき言っていた「地域の力になる」というのは、自然しぜんまもったり、動物の被害で地元の人がこまったりするのを食いめること。

でも狩りをやりたい人は、地元の人ではなく、都会とかいに住んでいる人が多いんです。秩父のような田舎いなかには、わかい人がすくないから、いろんな人に来てほしい。来てもらうことで、秩父の自然は守られます。実際にまってお金を使ってくれたり、移住いじゅうしてくれたりする人もいますしね。

そうやって地域にかかわってくれる人が増えると、動物の被害が減るし、地域もにぎやかになります。それに狩りに関わっている人は、地域で楽しくごしてもらえるし、自分たちで獲ったお肉を食べることもできる。

そういう場をつくることが運営の力でできることなのかな、と思います。

移住=その土地に引っ越して住むこと

運営の力で悪循環をなくしたい

ぜん:
害獣被害のデータを見たんですけど、本当ほんとうにたくさん被害があってびっくりしました。でも「害獣被害」っていう言いかたは、なんだか動物がかわいそうで。どうして動物たちは山から下りてきてしまうと思いますか?僕は人間にんげんのせいなんじゃないかな、って思っています。

そう思うのは、すごく大切たいせつなことだよね。ぜんくんが言っていることは、ほぼ正解せいかい。なんで山から下りて来てしまうかというのは、さっき説明せつめいしたように、人が山に入らなくなったから数が増えちゃって……というのももちろんある。生態せいたいけいってわかるかな?

全員:
わからないです。

例えば土から草がえて、その草を草食そうしょく動物が食べて、草食動物を肉食にくしょく動物が食べて、肉食動物の死骸しがいが土にかえって、といのちはめぐっているよね。命と自然の仕組みのようなものが、生態系。

けれど人間が、その生態系をくず原因げんいんのひとつになっています。もともと人間は、もう少しおとなしく生きていたはず。でも多くの人があつまって生活せいかつするようになり、やたら水を使ったり木を切るなど勝手かってなことをしはじめました。

生態系のバランスが崩れる原因を、人間がつくってしまったんです。その影響えいきょうがだんだん大きくなって、いろんな原因がかさなり、獣害被害にむすびついている。

だから、ぜんくんの言うとおり、「獣が一方いっぽうてきに悪いことをしているから、獣害っていうのはどうなのか?」というのは、僕もそのとおりだと思う。人間が関係してるという意見いけんただしいと思うよ。

死骸=死体したいのこと

ぜん:
資源しげんを手に入れるために山をけずったり、あたらしい建物たてものやダムをつくったりしているんですよね? 前に、「サルにエサをあげないで」という看板かんばんを見ました。でも人が食べ物をあげておぼえさせてしまってるから、下りてきてしまうんじゃないかって思いました。

そうだね。例えば、「わあ、かわいい」って、サルに食べ物をあげちゃう人もいるね。それに、出荷しゅっかできない野菜やさいを、はたけよこてる農家のうかさんもいます。なぜなら、かたちがいいものじゃないとり物にならないから。そうすると、捨てた場所に動物が集まってくるので、自然とエサをあたえていることになってしまいます。

人間は、すごく栄養えいようのある作物さくもつをつくっています。野生の動物からすると、そういうものはおいしいし、自分じぶんからだに必要なものだってわかっちゃう。そしたらもちろん、食べに来るよね。僕らだっておいしいものが簡単かんたんに手に入るなら、そこに行くじゃない?

ぜん:
行きます。

人間がわざわざ動物をおびきせるようなことをしてしまっている。そして人間が山を切りひらいて、動物が住みづらい環境かんきょうにしていることも、動物が山から下りてきてしまう原因のひとつです。

ITとハンターをかけ合わせてできること

IT会社のサラリーマンとしてもはたらいている

ぜん:
会社員としては、どういう仕事しごとをしてますか?

大きな会社では、何ぜん人、何まん人もの人が働いていますよね。その人たちのお給料きゅうりょう計算けいさんって、すごく大変たいへん作業さぎょうなんです。それをITでできるように、システムをつくっている会社で働いています。僕はシステムをいろんな企業に紹介しょうかいする仕事をしています。

ばん:
吉田さんを合わせて、狩りは何人くらいやるんですか?

カリラボの会員かいいんさんは、やく30人います。1回の狩りに出る人数にんずうは、地元の猟師さんも含めて、だいたい15人から20人ぐらいかな。

ケイティ:
多いなあ。

結構けっこうたくさんいますよ。狩りというのは、まず山に犬を放って、動物がどこに逃げてくるかを予想よそうするんです。動物が逃げてくるであろうみちに、鉄砲てっぽうった猟師さんを配置はいちします。

なので、ある程度ていど人数がいないと、そのあいだに動物が逃げていっちゃう。だから最低さいていでも10人は必要なんです。

配置=合うと思う場所にくこと

ばん:
どういう動物をつかまえてるんですか?

シカとイノシシが多いです。あとは、悪さするアライグマやテンなどの小動物も。

ぜん:
テン?オコジョみたいなのですか?

そうそう、よく知ってるね。オコジョやイタチともています。ちょっとほそながくて、かわいらしいかおをした動物です。

ぜん:
かわいいのに。

そうだね。かわいいんだけど、ものすごく凶暴きょうぼうで、捕まえるとガブっとまれてしまうこともあります。小動物は増えるのも早いし、せまいところにも入って何でも食べちゃうから、畑が荒らされる被害が多いんだよね。

小動物による被害も多い

ケイティ:
ITの仕事と狩りの仕事は、おたがいにいい影響を与えていますか?

すごくいい影響を与えています。猟師は昔ながらのお仕事なので、「山に入って、気合きあいで歩き回って獲物をさがすぞ!」というところがあります。でもそれだと、ずっと山の中にいないとできないですよね。

けれどもITの力を使うと、狩りがらくにできるようになります。ずっと動物を見っていなくても、カメラがわりに見張ってくれるんです。

楽に狩りができると、つかれないし参加もしやすくなります。「ずっと山の中にいないと狩りはできないよ」と言われると、参加できる人は少ないと思う。でもカメラを使えば、1日3時間じかんつだうくらいだったらできるよっていう人も結構います。

実際にITの力で何をやっているかというと、山の中にカメラをたくさんけて、動物がその前をとおると、センサーで写真しゃしんります。そのカメラにはメールをおく機能きのうもあるので、撮った写真を送ってくれるんだよね。「今、Aの場所にイノシシがあるいてましたよ」というように、動物の場所がわかります。

センサー=音やひかり温度おんどなどに反応はんのうする

全員:
すごい!

それに罠を仕掛けると、毎日罠の様子を見回らなくてはいけません。動物が罠にかかったら、ずっとそのままだといたいし、かわいそうですよね。でも、罠にもセンサーをつければ、罠が作動さどうすると、ひもがはずれるようになっています。そうすると、メールで「A地点ちてんの2ばんで罠が作動さどうしたよ」と教えてくれます。居場所がわかると、すぐに動物のところに行けるよね。

あとは、都心としんに住んでいる会員さんも多いので、そういう会員さんとはFacebookフェイスブックでやりとりをします。Facebookって、みんなわかるかな?

作動=機械きかいが動くこと

Facebook=SNSエスエヌエスのひとつ。インターネットじょうでコミュニケーションをることができる仕組しく

ケイティ・ぜん:
はい。

Facebookを使って、みんなで情報を共有きょうゆうしています。だれもが情報を見られるわけではなくて、会員さんだけが見られるグループがあるんだよ。会員さんは交代こうたいで見回りをするんだけど、見回りの結果けっかもFacebookにせるようにしています。

「今日は異常いじょうありませんでしたよ」「この罠が作動していたから、今度みんなでかけなおしましょう」などのやりとりをします。こんな風に、狩りとITは相性あいしょうがいいんですよ。

共有=分け合うこと

誤作動=機械が正しく動かないこと

狩った動物はジビエ肉にしていただく

ケイティ:
狩ったあと、その生き物はどうしますか?

食べます。

ケイティ:
うわあ。

あはは(笑)。うわあ、ってなるよね。みんな、ジビエ肉を食べたことはあるかな?

ケイティ・ばん・ぜん:
食べたことないです。

アメリ:
わたし、ジビエ肉を食べたことあるかなあ?

アメリちゃん、食べたことある?

アメリ:
パパにいたら、私も食べたことあるって!

おお、すごいね。でもおぼえてる?

アメリ:
覚えてないです。

覚えてないか(笑)。

僕は、ジビエ肉はすごくおいしいと思っています。お肉自体じたいが、とても自然なかんじでおいしいというのもあるんだけど、何よりジビエ肉にはストーリーがある。

野生動物だから、「こういう山でそだったのかな」「多分たぶんこういう育ち方をしていたんだろうな」「だからお肉がやわらかいんだろうな」「だからちょっと木のかおりがするんだろうな」などと、想像そうぞうするのもおもしろいです。

ジビエ肉は、きらいがあると思います。スーパーで買うお肉は、飼育しいくされた動物がまったエサを食べて、人間の計画けいかくどおりに出荷しゅっかされる。人間のこのみのあじになっているし、いつも味は変わらないし、見た目もきれいだよね。

それはそれでいいお肉だと思うんだけど、ジビエ肉には、それとはまたちがった楽しみがあるんですよ。

ジビエ肉にはストーリーがある

ぜん:
吉田さんは、しっかり大切に味わっているんですね。

そうだね。なるべく、しっかり味わって食べてあげたい。僕の仲間で、獲った動物をジビエ肉にすることにこだわっている猟師がいます。

それを「解体かいたい」というんだけど、かれならって、きれいにさばいたほうがおいしいんです。あらく解体してしまうと、お肉がかわにくっついたり、食べる部分が少なくなったりする。そういうこまかいところも、こだわってやりたいと思っています。

ぜん:
狩りをするのはこわくないですか?

ヒヤッとすることは、たまにあります。例えば、シカは攻撃こうげきしてくるイメージがないかもしれないけど、罠にかかったらシカも当然とうぜん必死ひっしです。いざ「し」といって、とどめを刺すときもあばれます。ツノもあるしね。

罠を使って動物を捕まえる方法は2つある

ばん:
罠はどんな種類しゅるいがありますか?

大きく言うと、2種類の罠を使っています。1つは「くくり罠」といって、ワイヤーみたいなものを地面じめんめておいて、それをむと、ワイヤーが獲物をつかんで逃げられなくなる罠。

もう1つは、あみでできている大きなはこのようなものを置いておいて、動物が入るとガシャンとちる箱型の罠。

画面がめんの右にあるのが、箱型の罠。結構大きいんです。罠の一番上は、大人の身長しんちょうよりも高いですね。動物がモグモグとのん気に食べてるでしょう?

全員:
はい。

でも自然の中にこういうものはないので、警戒けいかいしていますね。エサを少しばらまくと、食べはするけど、罠の中に入りそうで入らない。ちゃんと中に入った状態で罠のとびらめないと、逃げられてしまいます。

まだ箱は落ちてませんよね。でもこの動物は安心あんしんしきっているので、箱の中に入ったらいつでも捕まえられる状態じょうたいです。

だんだん箱型の罠の中に警戒せずに入ってくるようになるので、獲りたいときにストッパーを外しておけば、捕まえやすくなります。

ケイティ:
結構時間がかかるんですね。

そうですね。安心させておいて、獲りたいと思ったときに罠がガシャンと落ちるようにしています。くくり罠だと、動物が踏んだ瞬間しゅんかんに作動するので、いつ引っかかるかわかりません。

そのように道具どうぐを使い分けたり、場所によって方法をえたりする。会員さんと一緒に、「ああでもない、こうでもない」とかんがえながら一緒にやっています。

ぜん:
罠は全部ぜんぶ、狩りをしている人たちでつくっているんですか?

罠をつくっている会社の罠を買って、仕掛けています。

ぜん:
カリラボでは捕まえた動物を食べると言っていましたが、それ以外いがいに、動物えんにエサとしてわたすことは考えていますか?

おもしろい発想はっそうだね。動物園にエサとして渡すことは、考えていません。動物園に出すにはりょうがちょっと少ないんです。動物園の動物は、毎日まいにちちゃんと食事をします。狩りの肉は、毎日決まった量を獲れないんだよね。だからむずかしい。

だけど、人が食べられない部分のお肉をペットフードにして、販売する計画を考えています。

ぜん:
そうなんだ!

例えばシカのお肉は、あぶらが少なくてタンパクしつが多いので、健康けんこうにいいといわれています。とくに若い女性じょせいは、シカのお肉はヘルシーだから好きだという人が増えています。最近さいきんでは動物にも、ふとっている犬やねこがいますよね。そうならないためにも、ヘルシーなお肉をペットフードにするのはいいと思う。

いくら「悪いことをしている動物だから獲りました」といっても、さっきぜんくんが言ってくれたように、ちゃんと大事に食べてあげるのは大切なこと。人間が食べられないんだったら、せめて犬や猫が食べられるようにしてあげよう、と考えています。

ぜん:
なるほど、そっか。

動物園はだめなのに、なんでペットフードはOKなの?と思うかもしれないね。ペットフードだと、使う量は多くない。主食しゅしょくというよりは、おやつようです。

動物園ではおやつを出していないので、基本きほん的には食事しょくじだけ。毎日決まった量のお肉を提供できないといけないから、難しいですね。

問題もんだい解決かいけつのためにカリラボを始めた

みんなで罠についてアイデアを出し合っている

アメリ:
吉田さんは、なぜその仕事をしようと思ったのかをおしえてください。

もともと僕は、趣味しゅみで狩猟をしていました。さらにそれとはべつで、いろんな生活せいかつはたらき方をしたいと思って、秩父と東京の2かしょで生活をしていました。

その生活でわかったのは、実際に狩りを趣味でやろうとしても、なかなかできる場所がないということ。それになかくなった地元の猟師さんが、地域に若い人が全然いなくて困っていることもわかった。畑をしているおばあちゃんにも「けものがいっぱいで大変だから、獲ってちょうだいよ」と言われました。

やりたいけどできないと僕が思っていたことと、みんながやってほしいと思っていることがつながった。それに気づいたのがきっかけで、カリラボをやってみようかなと思い、この仕事を始めました。

ケイティ:
何で狩りを始めようと思ったんですか?

あまり覚えていないんだよね(笑)。

僕は料理りょうりや食事、おさけが大好き。その中でも、ジビエ肉が好きでした。でも自分でジビエの動物を獲ろう、と思ったきっかけは覚えていません。

多分テレビで狩りをしている人を見て、興味きょうみを持って、調しらべながら狩りを始めました。昔から猟師に憧れていたわけではありません。

たまたまテレビで見た映像えいぞうが、カリラボという会社につながっている。きっかけというのは、本当に偶然ぐうぜん連続れんぞくだと思います。

ぜん:
おじいちゃんが、狩りをやってたのかと思ってました。

そう思うよね。おじいちゃんはまったくやってないんだよ。今言ってくれたみたいに「祖父そふがやっていたので、僕もやりたいと思いました」「祖父がやっていたので、私もやっているんです」という人は多いです。

ケイティ:
なんでみずからカリラボをやろうと思ったんですか?

獣害は日本中の問題になっているという課題かだい意識いしきを、何となく自分の中で持っていました。それに、自分で狩りを体験たいけんすることで何か解決できるかもしれない、と気づいてしまった。

だから、これはやらなくちゃいけないという義務ぎむ感も半分はんぶんありました。もう半分は、おもしろそうだったからなんだけどね。

誰かが始めないと、誰もやらないんだろうなと思っています。

義務感=しなくてはならないという気持ち

ケイティ:
確かにそうなのかもしれないですね。

問題解決のためにカリラボを始めた

ぜん:
カリラボをやろうと思ったとき、はじめから罠のセンサーとかメールシステムも思いついていたんですか?

カリラボつくったらおもしろいかもと思ったときは、まだ思いついていませんでしたね。実際始めようとしたときに、「毎日見回りに行くのも大変だな」「もっと便利べんりに、もっとおもしろくできないかな」と思いました。そこから、カメラを仕掛けておくとどうなのか、センサーを使ったらいいんじゃないかといったアイデアを少しずつ思いつきました。

ー動物と人間のかかわり方の変化へんかやジビエ肉、罠を使った狩りの方法をくわしくお話ししてくださった吉田さん。後編こうへんでは、ハンターにとって大切なこと、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、ばん、アメリ、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO