
今回のお相手:伊藤遼平さん
元FC東京のクラブスタッフで『公務員』という仕事を生業としながら「スポーツ系公務員」として、今は埼玉県宮代町役場で子どもたちの笑顔のために働いている。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
生活をするためにお金を稼ぐ仕事のことを「生業」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。
今回のゲストは伊藤遼平さん。公務員です。スポーツ系公務員って、いったいどんなお仕事なのでしょう?
ケイティ:
よろしくお願いします。
伊藤さん:
よろしくお願いします。
スポーツに関わる大人になりたかった
ケイティ:
私は空手をやっているんですが、伊藤さんは子どもの頃どんな大人になりたかったですか?
空手!何歳からやってるんですか?
ケイティ:
年長からです。
5年くらいか。すごいね!子どもの頃は4年生からバレーボールをやっていて、将来はプロの選手になりたいと思っていました。中学生の頃は、選手を支えるスポーツメーカーの人に憧れました。スポーツするときの服や道具を売る人ですね。
高校生になると、だんだん将来を真剣に考えるようになりました。バレーボールをみんなに教えたいと思って、学校の先生を目指しました。大学生になると、大学の先生の紹介でFC東京でアルバイトを始めました。
ケイティ:
アルバイトでは、どんなことをしていたんですか?
FC東京って知ってる?
ケイティ:
知らないです。
東京にある、Jリーグのプロサッカーチームです。実はバレーボールチームもあるんですよ。そこでは、小学生やママさんバレーのスクールコーチをしていました。
Jリーグ=日本のプロサッカー組織。勝ち負けによってJ1、J2のグループに分けられている。川崎フロンターレ、ガンバ大阪、サガン鳥栖など日本中にチームがある。
ケイティ:
サッカーもバレーのチームもあるんですね。憧れていた人はいますか?
特にはいなくて。でもなんとなくスポーツに関わる大人の人ってかっこいいなと思っていました。
公務員だから、できることがある
ケイティ:
伊藤さんの職業名を教えてください。
公務員です。公務員って知ってる?
ケイティ:
おじいちゃんが公務員なので、地域とか国のために働いていると聞きました。詳しくは知らないです。つまりは何をしているお仕事なんですか?
ケイティちゃんが言ったように、国や地域の人たちのために働くお仕事です。
公務員にはいろんな仕事があるんですよ。国、都道府県、地域など幅広く担当します。僕は地方公務員といって、みんなの身近なところである地域の暮らしを支えています。
担当=係

埼玉県宮代町役場の職員として働いている伊藤さん
ケイティ:
では、仕事内容を詳しく教えてください。
今は「こども笑顔担当」という部署で働いています。地域の子たちが楽しく過ごせるような場や、子どもたちの居場所を考えています。その地域には子育て支援センターや児童館が3,4つあって、そのうちのひとつで働いています。「どんな遊びをしたら子どもたちが楽しいか」を考え、地域の保護者たちに聞いて企画しています。
部署=役割や担当している場所
ケイティ:
お仕事で工夫していることはありますか?
なるべく多くの人の話を聞くようにしていますね。自分がいいと思っても他の人はそうじゃないこともある。子どもたちにもどんなことをしたいか聞いたり、みんながどうすれば楽しくすごせるかを考えています。
ケイティ:
なぜその仕事をしようと思ったのか、そして続けているのかを教えてください。
公務員というのは定期的にいろんな部署に行くことになります。異動して担当になることを配属といいます。今の部署に配属されたのがきっかけでこの仕事をしています。
Jリーグの会社で働いていた経験を活かして、子どもたちが「楽しい!」と思って過ごしてくれるように今も働いています。
定期的=ある程度の決まった期間でのこと
異動=仕事の場所などが変わること
ケイティ:
スポーツのお仕事はいろいろあると思いますが、何で公務員になろうと思ったんですか?
Jリーグの会社で働いていると、実際にプロの選手に会う機会があります。そのときに「自分は子どもの頃、生まれ育った地域で選手に会ったことってあったかな?」と思いました。どの職業の大人がどのように頑張れば、子どもたちがプロの選手と会える機会をつくることができるだろう?と考えたときに、公務員ならできるんじゃないかと思いました。
子どもたちとスポーツ選手を会わせたい
ケイティ:
お仕事は、自分のやりたいこと以外もやると聞いたんですが、そういうときはどうしていますか?
確かにやりたいこと以外もやらなくてはいけないのは、苦しいと感じるときもあります。でもいつかは必ず子どもたちが選手に会える機会をつくりたいと願っていて、その準備だと思いながらやっています。
ケイティ:
なぜ子どもたちと選手を会わせたいんですか?
ケイティちゃんは自分の住んでいる地域で、スポーツ選手に会ったことはある?
ケイティ:
うーん、ないです。
会ってみたくない?
ケイティ:
会ってみたいです!
地元に空手の日本代表の選手が来たらどう?
ケイティ:
会いたい!
そういう風に、子どもたちに「会いたい!」「会えて嬉しい!」という思いや体験をさせてあげたいんです。それをきっかけに子どもたちが頑張ったり、活躍してくれたら嬉しいですね。
猛勉強をして公務員になった
ケイティ:
公務員って、どうやったらなれるんですか?
試験があるんだよ。年に一回あって、それに合格すればなれます。30歳くらいまで試験を受けられるところが多いですね。合格すればなることができます。ただし、犯罪とか悪いことをした人はなれません。
ケイティ:
どんな試験なんですか?
国語、数学、理科、社会、英語の試験を受けました。50問くらい問題があって、マークシートで答えます。それに合格すると、さらに面接といって「君はなぜ試験を受けたの?」といった質問に答える試験があります。面接は、書くのではなく直接えらい人たちとお話しする試験です。
マークシート=答えの番号の丸を塗りつぶす答え方
ケイティ:
一番難しかった試験はどれですか?
勉強での筆記試験ですね。僕はバレーボールをずっとやっていて、筆記試験を受けずにスポーツ推薦で進学してきました。正直、学生の頃は勉強を一生懸命していなかったんです。だから公務員試験のために猛勉強しました。
推薦=学校の先生が、進みたい学校の先生にその人のことをおすすめしてくれること
進学=高校や大学に進むこと
ケイティ:
資格が必要なお仕事ですか?
僕がやっている一般事務職員になるには、資格はいりません。

公務員のお仕事は本当に幅広くて、たくさんやることがある
みんなの生活への責任がある
ケイティ:
この職業の魅力と大変だと思うことは何ですか?
魅力は、自分が働くことで地域にすごくよい影響があるのが、目に見えてわかることです。
例えば「スポーツ選手を呼んで、子どもたちに会ってほしい」と思って企画するとします。それを実際にやったら、子どもたちが喜んでいるのを直に見て感じられますよね。子どもたちが喜ぶことは、その地域が元気になってとってもよい影響があると思います。
大変なことは、配属される部署がわからないことですね。ひとことで公務員と言っても実はいろんな部署があります。
僕は以前、家を建てるためのチェックをする部署にいたことがあるんですよ。法律を守っているか調べる部署、道路を作る部署、コロナウィルスなどの衛生状況をチェックをする部署など、本当にたくさんあります。
1人1人が仕事をおろそかにすると、みんなの生活がだめになってしまう。そういう責任があるからこそ、頑張れますね。
企画=アイデアを出して計画を立てること
法律=国の決まり
おろそか=雑にすること

未来の後輩たちに、先輩としてのメッセージを送っている
ケイティ:
そんなにいろんな部署があって、伊藤さんはどうやって仕事を覚えるんですか?
ものすごく勉強します。法律を覚えないといけないので、それは特に勉強しています。大人になっても勉強し続けることって、大切だと思うんです。今は毎朝読書タイムをつくるために、30分早く出勤して勉強することを何年も続けています。
ケイティ:
いっぱい勉強されていますが、生まれ変わってもまたこの仕事がしたいと思いますか?
すごい質問だね、悩んじゃうね(笑)。
そうだね、まだ自分が挑戦しきれてないので、その挑戦をしてから考えるかな。まだ子どもたちと選手が会う場をたくさん作れていないから。でも、ステキな仕事なので、チャンスがあれば生まれ変わってもまたやりたいと思うかもしれませんね。
ケイティ:
目標が実現できたら、嬉しいと思いますか?
すごく嬉しいね!そういえば、僕の地域にも空手してる子がいるのかな?考えたことなかったけど、ケイティちゃんの話を聞いて、空手について今考えてるんですよね。何かもっとできることがあるかもしれないな。
―猛勉強をして公務員試験に合格し、公務員としてだけではなく「スポーツ系公務員」としても日々考えながら働いている伊藤さん。
後編では子どもたちのためにどんなことをしているか、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO