今回のお相手:谷英希さん
合同会社ヴァレイの経営者で、起業家。縫製工場を経営し、職人さんたちに誇りを持って働いてほしいと思っている。世の中の困りごとを解決しようと、熱い想いを持って起業家になった。日本のいろんな街に、子どもにミシンを教える教室を開いている。ルービックキューブが得意なお父さん。
子ども取材班
No.3 るったん:
勉強や書道を一生懸命頑張っている。最近ビブリオバトルで準優勝した。
No.7 マヒ:
水泳を一生懸命頑張っている。最近、水泳でクイックターンができるようになったことが嬉しかった。
いじめの経験から人を助けたいという思いへ
るったん:
これからやっていきたいことはなんですか?
服づくり以外にも、他の業界の困りごとをどんどん解決したい。実は2022年から、もう一度学校に行くつもりです。
大学に行って、世界の環境について勉強しようと思っています。環境問題に取り組もうと思っていて。小学生のとき、国連に入るのが夢だったんです。国連ってわかる?
業界=会社をサービスの種類で分けたもの
るったん:
国際連合?
そうそう。国際連合に入って、困っている人たちを助けたいと思っていました。これからは服づくりだけでなく、環境問題や人権問題、貧困について考えたい。
世界には、1日100円より少ないお金で生活している人がものすごく多いんです。100円で生活するって難しいよね?
人権=すべての人が生まれながらに持っているもの。人が人として自由に考えたり、行動したりと、自分らしく生きることができる権利。
貧困=貧しいこと
るったん・マヒ:
はい。
ご飯も食べなきゃいけないしね。でもそういう人たちがたくさんいる。その問題を解決したいと思っています。
るったん:
国際連合に入って、人権問題や貧困問題を解決したいと思った大きなきっかけは何ですか?
子どもの頃いじめられてた話をしましたが、僕の母はもともと韓国人なんです。今は日本人なんだけどね。
今は日本にたくさん外国人がいるけど、僕たちが子どもの頃はそんなにいなかった。僕は見た目は日本人と変わらないし、日本語を話すし、日本に住んでるし、国籍も日本。尊敬している人も日本人の豊臣秀吉だしね。韓国語も話せないんだけど、それでも親が韓国人というだけで、すごくいじめられた時期がありました。悔しかったですね。
大人になったら、住んでる場所やお金、肌、人種などにとらわれず、みんな幸せになれるような社会をつくりたいと思ったのがきっかけです。今でもそう思っています。
国籍=日本国籍の人が日本人と呼ばれるように、その国の人であることを表したもの
人種=肌の色や体つき、髪の毛などの特徴で人間を種類に分けたもの
熱い想いは、いろんなところに広がっている
マヒ:
「働く」ということについてどう思いますか?
働くのは大好きです。
働くって、漢字で「人が動く」と書きますよね。僕は、働くとは「人のために動く」ことだと思います。
例えばコンビニの店員さんも、自分のためではなく、人が買い物をするために動いているよね。掃除の人もそう。人のために掃除をしている。人のために動ける時間が、働くことだと思います。
最後死んでしまうときに、どれだけ自分のためにお金を貯めても体を鍛えても、死んじゃったら一緒。でも人のために動いていたら、解決したことや誰かのためにしたことは世の中に残っていく。
働くことは、誰かが自分のことを思ってくれることでもあります。なので働くことは、すごく大切であり、すばらしいことだと思います。
人は自分のために何をしたのかではなく、他の人ために何をしたかで人生が決まると思っています。
るったん:
「お金」についてどう思いますか?
すごく大事だと思います。うちの会社では、お金は「困りごとを解決した数」「お客様の笑顔の数」と言っています。
お金が集まるというのは、困りごとが解決されて、笑顔が集まるということです。人のために動いた結果、自分がそれだけたくさんの人を幸せにできているんだと思います。
ただ間違えちゃいけないのは、お金が少ないから人を幸せにしていない、ということではありません。お金が少なくても、他にも得られるものはたくさんあります。ありがとうの言葉とか、尊敬していると言われたりとか。
一番わかりやすいのが、お金だということですね。
お母さんとお姉さんも、谷さんとともに歩んでいる
誰かや何かをどれだけ幸せにするために動いているか
マヒ:
「お金を稼ぐ」ということについてどう思いますか?
るったんとマヒちゃんは、いいことだと思う?悪いことだと思う?
マヒ:
いいことなんじゃないかな、と思います。自分が頑張ったことだから。
うんうん。るったんは?
るったん:
転売ヤーとかいるじゃないですか。そういう人たちはよくないのかなと思うけど、まじめにちゃんと働いて稼いでいたら、それは自分の努力と実力なのでいいと思います。
転売ヤー=買ったものをわざと高く売ってお金儲けをする人
すごいね!僕もそう思います。
お金を稼ぐことは、別の言い方で「儲ける」といいます。「儲」の漢字は信じるに者と書くんだけど、信じている人がいればいるほど儲かります。だから悪いことをして稼ぐ人も、誰かに信じられているんですよね。
でも、悪いことをした人はつかまるし、それで稼いだお金はなくなります。その人のためにならないのでよくないと僕も思います。
お金を稼ぐということは、「周りの人やものごとをどれだけ幸せにするために動いているか」だ思います。
お金を稼ぐことが「悪いこと」や「罪悪感」になることは絶対にやめましょう。だって稼ぐことは、本当は人を幸せにすることだから。
罪悪感があるのであれば、「働き方」や「仕事」をまちがえています。
自分の努力、頑張っていることでお金をもらうのはすばらしい。自信をもって稼いでください。
罪悪感=悪いことをした気持ち
るったん:
お給料はどうやって決まるんですか?そして満足していますか?
僕のお給料は、会社の売り上げです。自分の会社でどれだけ売り上げて利益が出たのかによって、自分で決めています。年間の会社の売り上げの何パーセント、と決めているので、売り上げが上がれば僕のお給料は上がります。下がれば自分のお給料も下がります。
今はまだ満足していません。
利益=もうけ。プラスになったお金
写真撮影も自分で。やることはたくさん!
可能性を信じて進んでいこう
マヒ:
何のために働いていますか?
今は、「日本の縫製業を次の世代につなぐ」という目標を持って働いています。
最初に言ったように、日本で働けなくなってしまった職人さんがたくさんいるので、その人たちがおじいちゃんおばあちゃんになって、歳をとったときに、自分自身を誇らしく思えるようにしたいです。
職人さんたちが、自分の手で服を作ってきたことを、胸を張って自慢話ができるようにしたい。それと、みんなのような子どもたちが服づくりができる環境をつくりたいです。
マヒちゃんの将来の話を聞いたけど、うちはアイドルグループの服や、パリコレや芸能の服もつくっているんだよ。自分がミシンでつくった服を、「この人のつくったんだよ」「あの人が着てるんだよ」って、胸を張って自信持てるようにしたい。
職人さんたちが誇らしく思えるように、働いています。
縫製業=ぬいもので服などをつくる仕事の世界
パリコレ=パリ・コレクション。パリで行われる、ファッションブランドの新作発表会
次の世代の子どもたちに、想いと技術をつなぐ
るったん:
「働く」と「お金の関係」についてどう思いますか?
さっきるったんが言ったみたいに、悪いことをしてもお金は稼げてしまうんですよね。残念ながら今の世の中、「働く=お金」ではないと思う。
学校の先生はたくさんの生徒たちを教えてきて、その子たちは学んだことを活かしながら社会に出て仕事をする。先生ってすごく大事な仕事です。でも先生って億万長者じゃないよね。
警察官がいないと、街が犯罪者であふれちゃうかもしれない。朝から晩まで働く日もあるし、体を張る大変なお仕事です。でも警察官は億万長者じゃないよね。
なのに転売ヤーが、楽して何千万も稼いでお金持ちになっていることもある。それは頑張りではなく、稼ぐのが上手なだけです。
働くことは、人生の表現だと思います。その人が何をして生きてきたのかを表すもの。働くことはすばらしいし、人生の表現になってほしいし、できることなら「働く=お金」になってほしい。
どうせならやるならスタイリストで頑張って、稼いで、好きな服を買って、毎月ハワイとか行きたいじゃない?(笑)
億万長者=大金持ち
マヒ:
はい(笑)。
だよね(笑)。好きな仕事を頑張って、それができたら一番いいよね。
マヒ:
最後に、子どもたちにメッセージをお願いします!
僕も、人生で楽して稼ぎたいと思ったことが何回もあります。それができたらラッキーだよね。すぐ買い物できるし、遊べるし。
るったん・マヒ:
はい。
そう思うことは悪いとは思いません。ただ楽して稼ぐのって、おじいちゃんになってからでもできるんですよ。いつだってできる。でも、勉強は今しかできない。
2人は、ルービックキューブって知ってる?自慢なんだけど、僕、ルービックキューブを完成させられるんですよ。ただ、できるようになるのに、1ヶ月以上かかりました。でもうちの4歳の娘は、2日くらいでできるようになったの。
それくらい、子どもの頭はやわらかい。可能性がすごくある。るったんもマヒちゃんも、なろうと思えば宇宙飛行士にだってなれる。お医者さんにも、国連の一番偉い人にだってなれる。
なろうと思えば何にでもなれます。でも僕らが今から頑張っても、難しいことが多い。勉強せずに後悔している大人をたくさん見てきたので、いっぱい勉強して、好きなことで稼げる大人になってください。
るったん・マヒ:
ありがとうございました!
起業家ってどんな仕事?
・名前のない仕事を、名前のある仕事に変える
・誰かが困っていることを解決するために、一から仕事をつくる
・困っている職人さんたちに声をかけて、日本で服をつくる(谷さんの場合)
・職人さんたちが、家にいながら服づくりができるようにサポートをする(谷さんの場合)
・子どもたちにミシンを教える教室をやっている(谷さんの場合)
起業家の魅力
・自分で頑張った分だけお金が入ってくる
・困った人たちを助けられる
・運に左右されずに、自分の実力で結果が出る
・自分が解決したいと思う問題を自分自身で解決できる
大変なこと
・何かあったときは全部起業家の責任
・誰のせいにもできない
「働く」と「お金」の関係について
・働くとは、「人のために動く」ことであり、誰かが自分のことを思ってくれていること
・働きというのは、その人が何をして生きてきたかを表すもの
・働くことはすばらしいし、人生の表現になってほしい
・「働き=お金」になってほしい
・お金は「困りごとを解決した数」「お客様の笑顔の数」
・お金をかせぐということは、「誰かや何かをどれだけ幸せにするために動いているか」を評価するもの
谷さんが思う大切なこと
・職業名よりも、理由が大事
・勉強したことは無駄にならない
・人は自分のために何をしたかではなく、他の人ために何をしたかによって人生が決まる
・自分の努力、頑張っていることでお金をもらうことはすばらしい
こんなお話もしました
ー医療用のガウンもつくられているとのことですが。幅広いですね。
るったん:
へえー!
あ、医療用のガウン知ってる?
るったん:
あの、手術用のですか?
そうそう、手術でも使います。今までのが、正直ダサかったんですよ。
るったん:
ダサい!?
そう、おしゃれじゃなかった。今病院では、新型コロナウィルスの影響でガウンを着なきゃいけないんだけど、子どもには怖く見えるみたいで。泣いちゃうし、先生も困る。だから着ていてかわいいガウンをつくろうと思いました。
プロのファッションデザイナーさんと一緒につくったので、病院やネイルサロンの人たちも楽しんで着てくれています。ワンピースのような形で、色もたくさんの種類があります。
でも元々は、ある日本の業者さんがガウン用に生地をつくっていたのに、頼まれた会社から「やっぱりいらない」と言われたそうなんです。
るったん・マヒ:
えー!
結局は、海外で作ったほうが安いからね。その業者さんは、新型コロナウィルスと戦っている人たちのために、と利益を考えないで頑張ってつくったのですが。長さにして5万メートルも。
るったん:
5万メートル!?50キロメートルってことですか?
そうそう。その話を聞いて、うちで買い取りました。社員は笑っていましたね(笑)。でも、誰かが困っていることから、みんなが助かることにつながるならいいかなと。医療の人たちも、業者さんも喜んでくれてよかったです。
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【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:るったん、マヒ
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO