インタビュー記事

第11回 世の中の困りごとを解決 「起業家」 谷 英希さん【後編】

今回のお相手:谷英希たにひできさん

合同ごうどう会社ヴァレイの経営者けいえいしゃで、起業家きぎょうか縫製ほうせい工場こうじょうを経営し、職人しょくにんさんたちにほこりをってはたらいてほしいとおもっている。世の中のこまりごとを解決かいけつしようと、あつおもいを持って起業家になった。日本のいろんなまちに、子どもにミシンを教える教室を開いている。ルービックキューブが得意とくいなお父さん。

子ども取材班しゅざいはん

No.3 るったん:
勉強や書道を一生懸命けんめい頑張がんばっている。最近さいきんビブリオバトルでじゅん優勝ゆうしょうした。

No.7 マヒ:
水泳すいえいを一生懸命頑張っている。最近、水泳でクイックターンができるようになったことが嬉しかった。

いじめの経験から人を助けたいという思いへ

るったん:
これからやっていきたいことはなんですか?

ふくづくり以外いがいにも、他の業界ぎょうかいこまりごとをどんどん解決かいけつしたい。じつは2022年から、もう一度いちど学校に行くつもりです。

大学に行って、世界せかい環境かんきょうについて勉強しようと思っています。環境問題もんだいり組もうとおもっていて。小学生のとき、国連こくれんに入るのがゆめだったんです。国連ってわかる?

業界=会社をサービスの種類しゅるいで分けたもの

るったん:
国際こくさい連合れんごう

そうそう。国際連合に入って、困っている人たちをたすけたいと思っていました。これからは服づくりだけでなく、環境問題や人権じんけん問題、貧困ひんこんについて考えたい。

世界には、1日100円より少ないお金で生活している人がものすごく多いんです。100円で生活するってむずかしいよね?

人権=すべての人が生まれながらに持っているもの。人が人として自由に考えたり、行動したりと、自分らしく生きることができる権利けんり

貧困=貧しいこと

るったん・マヒ:
はい。

はんも食べなきゃいけないしね。でもそういう人たちがたくさんいる。その問題を解決したいと思っています。

るったん:
国際連合に入って、人権問題や貧困問題を解決したいと思った大きなきっかけは何ですか?

子どものころいじめられてた話をしましたが、僕のはははもともと韓国かんこく人なんです。今は日本人なんだけどね。

今は日本にたくさん外国人がいるけど、僕たちが子どもの頃はそんなにいなかった。僕は見た目は日本人と変わらないし、日本語を話すし、日本に住んでるし、国籍こくせきも日本。尊敬そんけいしている人も日本人の豊臣とよとみ秀吉ひでよしだしね。韓国語も話せないんだけど、それでも親が韓国人というだけで、すごくいじめられた時期じきがありました。くやしかったですね。

大人になったら、んでる場所ばしょやお金、はだ人種じんしゅなどにとらわれず、みんな幸せになれるような社会しゃかいをつくりたいと思ったのがきっかけです。今でもそう思っています。

国籍=日本国籍の人が日本人と呼ばれるように、その国の人であることを表したもの

人種=肌の色や体つき、かみの毛などの特徴とくちょうで人間を種類しゅるいに分けたもの

熱い想いは、いろんなところに広がっている

マヒ:
はたらく」ということについてどう思いますか?

働くのは大きです。

働くって、漢字かんじで「人が動く」と書きますよね。僕は、働くとは「人のために動く」ことだと思います。

たとえばコンビニの店員てんいんさんも、自分のためではなく、人がい物をするために動いているよね。掃除そうじの人もそう。人のために掃除をしている。人のために動ける時間が、働くことだと思います。

最後さいごんでしまうときに、どれだけ自分のためにお金をめても体をきたえても、死んじゃったら一緒いっしょ。でも人のために動いていたら、解決かいけつしたことやだれかのためにしたことはの中にのこっていく。

働くことは、誰かが自分のことを思ってくれることでもあります。なので働くことは、すごく大切であり、すばらしいことだと思います。

人は自分のために何をしたのかではなく、他の人ために何をしたかで人生がまると思っています。

るったん:
「お金」についてどう思いますか?

すごく大事だいじだと思います。うちの会社では、お金は「困りごとを解決した数」「お客様きゃくさま笑顔えがおの数」と言っています。

お金があつまるというのは、困りごとが解決されて、笑顔が集まるということです。人のために動いた結果、自分がそれだけたくさんの人を幸せにできているんだと思います。

ただ間違まちがえちゃいけないのは、お金が少ないから人を幸せにしていない、ということではありません。お金がすくなくても、ほかにもられるものはたくさんあります。ありがとうの言葉とか、尊敬していると言われたりとか。

一番わかりやすいのが、お金だということですね。

お母さんとお姉さんも、谷さんとともに歩んでいる

誰かや何かをどれだけ幸せにするために動いているか

マヒ:
「お金を稼ぐ」ということについてどう思いますか?

るったんとマヒちゃんは、いいことだと思う?悪いことだと思う?

マヒ:
いいことなんじゃないかな、と思います。自分が頑張ったことだから。

うんうん。るったんは?

るったん:
転売てんばいヤーとかいるじゃないですか。そういう人たちはよくないのかなと思うけど、まじめにちゃんと働いて稼いでいたら、それは自分の努力どりょく実力じつりょくなのでいいと思います。

転売ヤー=買ったものをわざと高く売ってお金儲けをする人

すごいね!僕もそう思います。

お金を稼ぐことは、別の言い方で「もうける」といいます。「儲」の漢字はしんじるに者と書くんだけど、信じている人がいればいるほど儲かります。だから悪いことをして稼ぐ人も、誰かに信じられているんですよね。

でも、悪いことをした人はつかまるし、それで稼いだお金はなくなります。その人のためにならないのでよくないと僕も思います。

お金を稼ぐということは、「周りの人やものごとをどれだけ幸せにするために動いているか」だ思います。

お金を稼ぐことが「悪いこと」や「罪悪ざいあくかん」になることは絶対ぜったいにやめましょう。だって稼ぐことは、本当は人を幸せにすることだから。

罪悪感があるのであれば、「働き方」や「仕事」をまちがえています。

自分の努力、頑張っていることでお金をもらうのはすばらしい。自信をもって稼いでください。

罪悪感=悪いことをした気持ち

るったん:
給料きゅうりょうはどうやってまるんですか?そして満足まんぞくしていますか?

僕のお給料は、会社の売り上げです。自分の会社でどれだけ売り上げて利益りえきが出たのかによって、自分で決めています。年間の会社の売り上げの何パーセント、と決めているので、売り上げが上がれば僕のお給料は上がります。下がれば自分のお給料も下がります。

今はまだ満足していません。

利益=もうけ。プラスになったお金

写真撮影も自分で。やることはたくさん!

可能性を信じて進んでいこう

マヒ:
何のために働いていますか?

今は、「日本の縫製ほうせいぎょうを次の世代せだいにつなぐ」という目標もくひょうを持って働いています。

最初さいしょに言ったように、日本で働けなくなってしまった職人しょくにんさんがたくさんいるので、その人たちがおじいちゃんおばあちゃんになって、歳をとったときに、自分自身じしんほこらしく思えるようにしたいです。

職人さんたちが、自分の手で服を作ってきたことを、むねって自慢じまん話ができるようにしたい。それと、みんなのような子どもたちが服づくりができる環境をつくりたいです。

マヒちゃんの将来しょうらいの話を聞いたけど、うちはアイドルグループの服や、パリコレや芸能の服もつくっているんだよ。自分がミシンでつくった服を、「この人のつくったんだよ」「あの人が着てるんだよ」って、胸を張って自信持てるようにしたい。

職人さんたちが誇らしく思えるように、働いています。

縫製業=ぬいもので服などをつくる仕事の世界

パリコレ=パリ・コレクション。パリで行われる、ファッションブランドの新作発表会

次の世代の子どもたちに、想いと技術をつなぐ

るったん:
「働く」と「お金の関係」についてどう思いますか?

さっきるったんが言ったみたいに、悪いことをしてもお金は稼げてしまうんですよね。残念ざんねんながら今のの中、「働く=お金」ではないと思う。

学校の先生はたくさんの生徒せいとたちを教えてきて、その子たちは学んだことを活かしながら社会に出て仕事をする。先生ってすごく大事だいじな仕事です。でも先生って億万おくまん長者ちょうじゃじゃないよね。

警察けいさつかんがいないと、街が犯罪はんざいしゃであふれちゃうかもしれない。朝からばんまで働く日もあるし、体を張る大変なお仕事です。でも警察官は億万長者じゃないよね。

なのに転売ヤーが、楽して何千まんも稼いでお金持ちになっていることもある。それは頑張がんばりではなく、稼ぐのが上手なだけです。

働くことは、人生の表現ひょうげんだと思います。その人が何をして生きてきたのかを表すもの。働くことはすばらしいし、人生の表現になってほしいし、できることなら「働く=お金」になってほしい。

どうせならやるならスタイリストで頑張って、稼いで、好きな服を買って、毎月ハワイとか行きたいじゃない?(笑)

億万長者=大金持ち

マヒ:
はい(笑)。

だよね(笑)。好きな仕事を頑張って、それができたら一番いいよね。

マヒ:
最後に、子どもたちにメッセージをおねがいします!

僕も、人生で楽して稼ぎたいと思ったことが何回もあります。それができたらラッキーだよね。すぐ買い物できるし、遊べるし。

るったん・マヒ:
はい。

そう思うことは悪いとは思いません。ただ楽して稼ぐのって、おじいちゃんになってからでもできるんですよ。いつだってできる。でも、勉強は今しかできない。

2人は、ルービックキューブって知ってる?自慢なんだけど、僕、ルービックキューブを完成かんせいさせられるんですよ。ただ、できるようになるのに、1ヶ月いっかげつ以上いじょうかかりました。でもうちの4さいむすめは、2日くらいでできるようになったの。

それくらい、子どもの頭はやわらかい。可能かのうせいがすごくある。るったんもマヒちゃんも、なろうと思えば宇宙うちゅう飛行士ひこうしにだってなれる。お医者さんにも、国連の一番えらい人にだってなれる。

なろうと思えば何にでもなれます。でも僕らが今から頑張っても、むずかしいことが多い。勉強せずに後悔こうかいしている大人をたくさん見てきたので、いっぱい勉強して、好きなことで稼げる大人になってください。

るったん・マヒ:
ありがとうございました!

起業家ってどんな仕事?

・名前のない仕事を、名前のある仕事に変える

・誰かが困っていることを解決するために、一から仕事をつくる

・困っている職人さんたちに声をかけて、日本で服をつくる(谷さんの場合)

・職人さんたちが、家にいながら服づくりができるようにサポートをする(谷さんの場合)

・子どもたちにミシンを教える教室をやっている(谷さんの場合)

起業家の魅力

・自分で頑張った分だけお金が入ってくる

・困った人たちを助けられる

・運に左右されずに、自分の実力で結果が出る

・自分が解決したいと思う問題を自分自身で解決できる

大変なこと

・何かあったときは全部起業家の責任

・誰のせいにもできない

「働く」と「お金」の関係について

・働くとは、「人のために動く」ことであり、誰かが自分のことを思ってくれていること

・働きというのは、その人が何をして生きてきたかを表すもの

・働くことはすばらしいし、人生の表現になってほしい

・「働き=お金」になってほしい

・お金は「困りごとを解決した数」「お客様の笑顔の数」

・お金をかせぐということは、「誰かや何かをどれだけ幸せにするために動いているか」を評価するもの

谷さんが思う大切なこと

・職業名よりも、理由が大事

・勉強したことは無駄にならない

・人は自分のために何をしたかではなく、他の人ために何をしたかによって人生が決まる

・自分の努力、頑張っていることでお金をもらうことはすばらしい

こんなお話もしました

医療いりょうようのガウンもつくられているとのことですが。はば広いですね。

るったん:
へえー!

あ、医療用のガウン知ってる?

るったん:
あの、手術しゅじゅつ用のですか?

そうそう、手術でも使います。今までのが、正直ダサかったんですよ。

るったん:
ダサい!?

そう、おしゃれじゃなかった。今病院びょういんでは、新型しんがたコロナウィルスの影響えいきょうでガウンをなきゃいけないんだけど、子どもにはこわく見えるみたいで。いちゃうし、先生も困る。だから着ていてかわいいガウンをつくろうと思いました。

プロのファッションデザイナーさんと一緒につくったので、病院やネイルサロンの人たちも楽しんで着てくれています。ワンピースのようなかたちで、色もたくさんの種類があります。

でも元々は、ある日本の業者ぎょうしゃさんがガウン用に生地きじをつくっていたのに、たのまれた会社から「やっぱりいらない」と言われたそうなんです。

るったん・マヒ:
えー!

結局は、海外で作ったほうがやすいからね。その業者さんは、新型コロナウィルスとたたかっている人たちのために、と利益りえきを考えないで頑張ってつくったのですが。長さにして5万メートルも。

るったん:
5万メートル!?50キロメートルってことですか?

そうそう。その話を聞いて、うちで買い取りました。社員はわらっていましたね(笑)。でも、誰かが困っていることから、みんなが助かることにつながるならいいかなと。医療の人たちも、業者さんも喜んでくれてよかったです。

谷英希さんのSNSと会社ホームページ

 

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:るったん、マヒ
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO