インタビュー記事

第八回 顔が見えるごはん屋さん 「食堂の店主」 ことり食堂 中里希さん【後編】

今回のお相手:中里なかざとのぞみさん

東京とうきょう神宮前じんぐうまえにあるご飯屋はんやさん「ことり食堂しょくどう」の店主てんしゅ食材しょくざい仕入しいれから料理りょうり、おきゃくさんに注文ちゅうもんをきいて料理を出すことまで全部ぜんぶ一人でおこなっている。食品しょくひんロスについてもかんがえ、普段ふだんから生産者せいさんしゃかおが見えるようにしている。ご飯を食べてよろこんでもらえることがしあわせ。

子ども取材班しゅざいはん

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。将来しょうらいゆめはイラストレーター。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

かのぴ:
中里さんは​食品しょくひん​ロスにも​取​り​​んでいると​​いたのですが、どんな​効果こうか​がありましたか?

食品ロスをすべてなくすのは​むず​しいと​おも​っていますが、「​つく​ったものを​大切たいせつ​にしよう」と思うと、​​らすアイデアは​かんが​えられます。​余あま​ったものを​​てるのはもったいないので、​違ちが​う​料理りょうり​にリメイクすることがあります。たと​えばマッシュポテトが余ったら「スープにすればおいしいかも」など、​新​しいアイデアによってびっくりするほどおいしいものができます。

食品ロス=売れ残りや食べ残し、賞味期限切れなどで本当なら食べられるのに、ごみとして捨てられてしまうこと

リメイク=元あるものを作り変えること

マッシュポテト=蒸したりゆでたりしたじゃがいもをつぶした料理

かのぴ:
リメイクでは​なに​が​一番いちばん​おいしかったですか?

スープかな。​冬ふゆ​はとろっとしたスープがおいしいだろうなと思いましたね。​実際じっさい​おいしくできたときは「捨てなくてよかった」「みんなやればいいのに」と思うほどでした。おうちでもできるし、​無駄むだ​が減っておいしいものができると思います。

かのぴ:
食品ロスを気にせず、​のこ​したり捨てたりする人をどう思いますか?

ロスを出す人はつくった人のことを知らなかったり、料理している人の気持きも​ちがわからなかったりするのかもしれないね。

​想像そうぞうりょく​の​欠如けつじょ​」ですね。​相手あいて​の気持ちを想像できないから、そうなっちゃうのかなと思います。野菜やさい​をつくる人、料理をする人など、​食卓しょくたく​に料理が​とど​くまでの​あいだ​にいる人のことがよくわからないから、捨ててもいいかなと思うのかもしれません。​​れば考えは​変わってくると思います。

欠如=足りないこと、ないこと

食卓=ご飯を食べるテーブル

相手の気持ちを想像しながら料理をしている

命について考えることの大切さ

かのぴ:
食べ物を​扱あつか​うお​仕事しごと​ですが、食べ物についてはどう思いますか?

私が扱うお野菜やお​こめ​は​全部ぜんぶ​、つくっている人のことを知っています。その人たちが​雨あめ​の日も​かぜ​の日も大切につくられるのを知っている。​うそ​をついたりごまかしたりすることなく、ちゃんと料理して食べてもらわなくてはいけないと思います。

以前いぜん​、​鶏肉とりにく​をたくさん​使つか​っていました。お​みせ​に​とど​くお肉は、スーパーに​​っているのと​おな​じように​​られてパックで届きます。でもあるとき、「​へん​だな」と思いました。

かのぴ:
変?

お野菜は​はたけ​から取っているのを​調理ちょうり​しています。じゃあお肉は?もともと​物もの​ですよね。同じ命なのに、お肉は切ってあるものばかり使うのはおかしいと思いました。だからにわとりをさばくことにしました。

調理=料理をすること。その準備

かのぴ:
えっ!

くび​をおとして、​包丁ほうちょう​で​腸ちょう​や​内臓ないぞう​を出しました。あのとき、命について考えなければいけないと思いました。お肉にカットされた​状態じょうたい​のものばかり使っていたら、​感覚かんかく​が​麻痺まひ​しちゃう。もともとがどういうものだったかわからなくなるからです。

腸=食べ物を消化してくれる内臓のひとつ。胃の下からおしりまである

内臓=体の中にある、体を元気にしたり動かしたりする部分。心臓や肺、胃、腸などがある

麻痺=何も感じなくなってしまうこと(「感覚が麻痺している」の場合)

ーとても大切なことだと思います。​いま​は、スーパーで切り​身​になっている​さかな​と、​水族館​すいぞくかんで​およ​いでいる魚が同じものであると​一致いっち​しない子もいるそうです。

そうですね。お肉もお魚も、もともと生きていた。それを想像することはとても大切で、​わす​れてはいけないと思います。わかっていたらもっと大切にするはずですから。

かのぴ:
私も大切にしようと思います。

どれももともとは命だった

―ここからは、「​はたら​く」ことと「お金」の​関係かんけい​についてもお​き​していきましょう。働く大人はこの二つについてどのように考えているのでしょう?

楽しく暮らすために働いている

かのぴ:
中里さんは​「働く」ということについてどう思いますか?

うーん、そうだなあ。働くとお金をもらえるでしょう?それは、​相手あいて​からの「ありがとう」の気持ちでお金をもらっていると思うんです。

働いてお金を​稼かせ​ぐことで、​他ほか​の働く人にもお金を​払はら​える。​ふく​や、​靴くつ​屋など、人はその仕事に対して「ありがとう」と思ってお金を使います。人と人とがつながっていくことが、働くということだと思います。

かのぴ:
「お金」についてはどう思いますか?

「働く」ということと​似​てきますが、​誰​だれかの仕事に​対​たいして「ありがとう」って言うための​道具どうぐ​だと思います。「ありがとう」の​言葉ことば​だけじゃなくて、お金を払うことがその人を​応援おうえん​することにもなります。

かのぴ:
では「お金を稼ぐ」ということについてどう思いますか?

むかし​はいっぱいお金がほしかったんです。なりたいものや、やりたいこともわからなかったから、お金があれば​しあわ​せになれると思っていました。

でも今は、おいしいご​飯​はんが食べられて、お​布団ふとん​で​眠ねむ​ることができて、​きな人に​かこ​まれていたら幸せだとわかりました。お金はほどほどにあればいい。たくさん働くと​疲​つかれるし体を​こわ​すから、自分が一​番健康けんこう​でいられるところを知るのが​大事だいじ​です。

かのぴ:
おいしいご飯とお布団、私も幸せです。お​給料きゅうりょう​はどうやって​​まるんですか?

食べてくれた人の数で​決​まる。わかりやすいよね(笑)。

かのぴ:
満足まんぞく​していますか?

満足しています。もうちょっとあったらいいなと思うけど、そう思うくらいがきっとちょうどいいんでしょうね。

幸せはお金だけじゃない

かのぴ:
中里さんは​何のために働いていますか?

楽しく​​らすためかな。私の​場合ばあい​は、やっぱり人に会わないとつまらない。​少すこ​しでもご飯を食べに来てくれる人がいて、お話しして、おいしかったよってお​だい​をもらえて……楽しいよね(笑)。

はじめは​料理​もできないしお​きゃく​さんもいなかったから、「なんて​苦くる​しい仕事なんだろう」と思っていました。でも今は​毎​日まいにちのように来てくれる人もいるし、会いに来てくれる​友達ともだち​もいます。幸せですね。

かのぴ:
「働く」と「お金の関係」についてどう思いますか?

働いて、お金をいただく。​食材しょくざい​をつくっている人、料理を食べてくれる人など、​顔かおがわかると​信頼しんらい​できるんだなと思います。その相手の顔を見て話して、どういう人かを知ると​嘘うそ​はつけない。ずっとそうありたいです。

毎日幸せを感じながら働いている中里さん

かのぴ:
では​最後さいご​に、子どもたちにメッセージをお​願​ねがいします。

ご飯をつくって出す​飲食店いんしょくてん​の仕事は、一度は​経験けいけん​してほしい。ただ食べに行くだけだとわからないことがすごく​詰​まっているから、ぜひ働いてみてほしいです。

ご飯を食べること、食べる場所には​根本こんぽんてき​なことが詰まっているから、どうやって​り立っているのかを知ると​​の中が楽しく見えるし​、​わって見えると思います。もし​機会きかい​があったら、まずはアルバイトをやってみるといいよ。

根本=ものごとの最初にあるもの

かのぴ:
私もことり食堂で働きたい!

そう言ってもらえると​頑張がんば​れます。

かのぴ:
ありがとうございました!

こんなお話もしました

かのぴ:
​まったメニューはないんですか?

そうだね。おうちでのご飯みたいに、私が​かんが​えて毎日​ちが​うご飯を出しています。

かのぴ:
えー!考えてくれるって、お客さんに嬉しいサービスですね。

会社員として働いていたころ、仕事が​終​わると​​疲つか​​れすぎて、食べたいものがないときがあったんです。お​​母かあ​​さんがつくってくれたご飯が食べたかった。お母さんがつくるような気まぐれご飯が食べられるように、メニューは決まっていないお店にしました。

かのぴ:
たしかにお母さんのご飯は、メニューからは​​選えら​​ばないですね。​中里さんが食べるときに何か思うことはありますか?

「人がつくったものはとてもおいしい」と私は思います。それに目の前の人のためにつくったご飯は、​​間違​まちが​いなくおいしいと思っています。そういう​​関係性かんけいせい​​の場所でご飯を食べたいですね。ことり食堂もそうだといいな。

関係性=関係ができていること

食堂の店主ってどんな仕事?

・お店で毎日、朝にお客さんにご飯を出す準備をする

・ケータリングで料理をすることもある

・お客さんにご飯を食べてもらって、お金をもらって、お皿を洗って片づけをして、次の日の準備をして帰っている

食堂の店主の魅力

・ごはんを食べて喜んでくれる人が目の前にいる

・「自分がやったことの結果が目に見える

・全部が目の前で起こるため、幸せな気持ちになれるしやりがいがある

大変なこと

・全部一人でやっていること(中里さんの場合)

・風邪を引いたりけがをしたりしたら、お店を休みにしなくてはならない

・全部自分でしないと始まらないし終わらない

「働く」と「お金」の関係について

・働いてお金を稼ぐことで、他の働く人にもお金を払える

・誰かの仕事に対して「ありがとう」って言うための道具

・お金を払うことが相手を応援することにもなる

・人と人とがつながるきっかけになる

中里さんの思う大切なこと

・ つくってくれた人など、相手の気持ちを想像すること

・おいしいご飯が食べられて、お布団で眠れて、好きな人に囲まれていたら幸せ

・相手のことを考えて調理したご飯は間違いなくおいしいし、そういう関係がいい

・嘘をついたりごまかしたりしない

・お肉もお魚ももともと生きていたとを想像することが、命を大切にすることにつながる

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【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:かのぴ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
サムネイルデザイン・編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO