インタビュー記事

第10回 幸せになれる野菜づくり 「農家」 國吉 美貴さん【後編】

今回のお相手:國吉美貴くによしみつきさん

鳥取とっとりけん大山だいせんのふもとで、「國吉農園のうえん」を経営けいえいしている。家族かぞく仲間なかま一緒いっしょに、「べるとおいしくてしあわせになれる野菜やさい」をつくるため、日々ひび頑張がんばっている。大学時代じだいにアフリカのタンザニアに行ったことがきっかけで、野菜とお米をつくりはじめた。毎年まいとし小学校に行って、6年生に農業のうぎょうの話をするなど、子どもたちにも農業のことをつたえる活動かつどうをしている。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

ずるしては稼げない仕事

かのぴ:
この職業しょくぎょう魅力みりょく大変たいへんだとおもうことはなんですか?

魅力は、「生きてる」かんじがすることです。きて日に当たって、体をうごかして。体を動かすと、おなかいてなにべてもおいしいし、ぐっすりねむれる。働く時間も自分じぶんで決められるし、自分のペースですすめられます。

大変なことは、自然しぜん天候てんこうに左右されることです。雨や大雪おおゆきだと外での作業さぎょうができません。でも雨がらなすぎると、野菜やさいれてしまいます。

体力てきにしんどい部分ぶぶんもけっこうあります。ずるしてかせげる仕事しごとではないですね。

ケイティ:
いい作物さくもつができたとき、どんな気持きもちですか?

すごくうれしい。生き物をそだてている仕事だから……そうですね、ぼくにも子どもがいるんですが、農業のうぎょうもまるで子育てをしているような気持ちですね。育つとすごく嬉しいし、かわいいです。

作物=この場合はお米や野菜

かのぴ:
生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか?

うん、生まれわってもまた農家になります。

かのぴ:
またなりたいと思う理由りゆうはなんですか?

めちゃくちゃ楽しいから!毎日まいにち楽しいので、あそんでいるような感覚かんかくになるときもあります。

ケイティ:
生まれ変わったら、どんなところで農家をしていると思いますか?

もう一回大山だいせんでやっていると思います。そう思うくらい、大山はやっぱりいいところなので。

ケイティ:
農家のお仕事を、今の子どもにおすすめできますか?

食べ物をつくることができれば、何があっても生きていけるので、食べ物を生み出す農業はとてもおすすめです。でも、不向ふむきがどうしてもあると思う。

大事に手をかけて育てても、自然しぜん災害さいがい一発いっぱつでだめになることがあります。精神せいしんてきにへこむので、精神力が強い人やえがうまい人は合うかもしれません。あとは地道な作業さぎょうが多いから、本気で農業を好きになれそうな人、本気でやれそうな人にはすすめたいですね。

体力が必要ひつようだし、意外いがいと頭を使つかう作業もとても多いので、本気でやらないとうまくいかないことが多いです。

自然災害=地震じしん津波つなみかみなりなど、自然がこす危険きけん

精神=気持ち

ケイティ:
意外と頭を使う作業ってどんなことですか?

野菜をえるとき、植えるのは簡単かんたんにできるんです。それまでに何をしておかないといけないかなどをかんがえる「だんり」が必要です。

たとえばなえを3月3日に植えるとなると、いつたねをまいて、はたけたがやしてうねをつくり、手で植えるか機械きかいで植えるかを考え、機械は動くよう整備せいびし、苗を畑まではこぶのはどうすれば効率こうりつがいいか、などの段取りがあります。

セッティングも計画けいかくも頭を使います。どこの畑に今年は何をつくるかなど、前もって計画しておかないといけない。パズルみたいですね。

苗=種よりも少し成長せいちょうしてが出たもの

畝=作物をつくるため、土をまっすぐ細長くり上げているところ

効率=実際に使った力に対しての結果がどれくらいか

整備=整えること

体力も頭も、めいっぱい使っている

もっと農業を知ってほしい

かのぴ:
これからやっていきたいことはありますか?

実は、自分の子にも農業をやってほしいと思っています。前の会社は農業体験ができるところだったんですが、そんなふうに農業に興味きょうみを持ってくれる人をやす活動かつどうをしたいです。

今は大山の観光かんこうきょくと農業体験ツアーをやっているので、気軽きがるに農業を体験して、野菜やお米がどうやってできているのかをたくさんの人に知ってもらいたいですね。

観光局=観光について考えたりつたえたりする仕事をするところ

かのぴ:
わたしは将来しょうらいインターネットの旅行情報じょうほうをつくる人になりたくて、一番やりたいのが農業体験の プランなんです。ずっと思っていたので、今日そのお話を聞けてうれしいです。

いいね、嬉しい。大きくなったら一緒いっしょにやろうよ。

かのぴ:
嬉しいです!では次に、フードロスについて何かんでいることはありますか?

野菜をつくっていると、あまってしまってれなくなる、買い取り手がいなくなる時もあるんですよ。 取引とりひきさきの中には、それをあつめて買い取ってくれるところがあります。普通ふつうに売るよりはすごくやすくはなってしまうんですが、そういうところに出荷しゅっかして廃棄はいきらしています。

あとはいえまわりの人に「自由に取りに来てください」と言ったり、SNSえすえぬえすで「しい人はどうぞ」とびかけたりもします。なので、無駄むだにしてしまうことはあまりないですね。

フードロス=まだ食べられる食べ物をむだにすること

取引先=仕事相手

廃棄=てること

かのぴ:
物々ぶつぶつ交換こうかんもしますか?そしたら野菜もおにくも買う必要ひつようがなさそうです!

そうだね、うちはイノシシも食べるんだけど……実は狩猟しゅりょう免許めんきょも持っているんですよ。

物々交換=お金ではなく物と物を交換して手に入れること

狩猟=動物の狩りをすること

ケイティ・かのぴ:
え!

今はちょっと忙しくて狩猟はできていないけどね。近所きんじょおなじく狩猟をやっているかたがいて、「野菜と交換しよう」と言ってくれることもあります。たしかに物々交換をよくやっているかもしれない。そう思うと、買い物に行くことは多くないですね。

ケイティ:

國吉農園さんの野菜を食べて、大根だいこんが一番印象いんしょうのこりました。なんであんなにあまくておいしくできるんですか?

(実はケイティは取材しゅざいまえに、國吉農園さんの野菜を取りせて食べていました。國吉さん以外いがいは知らなくてびっくり!)

食べてくれてありがとう!大根はね、雪にあたったのがひとつ。雪にあたると、野菜はこおらないように水分を糖分とうぶんに変えるんです。だからさむくなると野菜が甘くなる。今年は3回くらい雪にあたっているので、うちの大根は生でかじると甘くてなしみたいですよ。

ケイティ:
雪にあたって、水分が糖分に変わって、甘くなるんですね。

そうそう。あとは水やりをしっかりしたので、ちゃんと水分をふくんだ大根になりました。だから食感しょっかんやわらかく、みずみずしくておいしくなっているんだろうなと思います。

雪にあたると、野菜は甘くなる

農家は天職

ケイティ:
はたらく」ということについてどう思いますか?

働くとは、生きる上での生活の一部だと思っています。ごはんつくって食べるとか、子どもと一緒にお風呂ふろ入ってるとか、本を読んだり勉強したりとか、そんな生活の一部。

かのぴ:
「お金」についてはどう思いますか?

お金とは、生活の道具どうぐのひとつだと思っています。さっき物々交換の話が出ましたよね。それができるとモノには困らないけど、成り立たないこともあります。

でもお金は、みんなに共通きょうつうで、共有きょうゆうできるものです。野菜は保存ほぞんできないけど、お金はくさることもない。保存ができて、共通の価値かちがあって、必要なものと交換もできる。お金は便利べんりな道具だと思います。

共有=分け合う

価値=どれほどすばらしいか、またどれくらい大切かということ

ケイティ:
道具というと……?

使い方によって便利になるもの。僕の場合ばあいは、野菜をお金にえることで今のの中で使える道具になります。それを銀行ぎんこうめたり、レストランに行ったり、本を買ったりすることができますよね。自分では生み出せないものに替えることができます。お金を道具として使うことで、人生をゆたかにできるんじゃないかなと思います。

ケイティ:
よくわかりました!

かのぴ:
「お金をかせぐ」ことについてはどう思いますか?

お金を稼ぐことは、自分の努力どりょく結晶けっしょうであり、結果けっかだと思っています。

結晶=ものごとが積み重なって形になること

ケイティ:
給料きゅうりょうはどうやってまりますか?そして満足まんぞくしていますか?

僕は給料はなく、自分でつくった野菜やお米を売った分だけ収入しゅうにゅうになります。 今のお金には十分満足しています。

つくって売った分だけちゃんと収入になるけど、働きすぎると時間がなくなる。ほかに自分がしたいことがあっても、その時間を農業についやすから収入がえるんだけど……バランスが大事かなと思います。

今はあまり自分の時間は持てていないですね。もう少し野菜をつくるりょうらそうかなと思っているところです。

ケイティ:
じゃあ天候てんこうが悪くて野菜が採れないときは、収入が減っちゃうんですか?

さっきつくって売った分が収入になるって言ったけど、働いている人たちにはまいつきまったお給料をはらっています。会社の社員しゃいんみたいにね。なので農園の収入が減っても、その2人にはお給料を払います。

例えば大雪で野菜が採れなくて収入がうんと減った月などは、貯金をくずしてやりくりすることもありました。その分を、半年後くらいに他の野菜の収入でめ合わせをしたり、予定よてい変更へんこうしたりして頑張がんばっています(笑)。

かのぴ:
何のために働いていますか?

生きるために働いてます。あと、楽しいから働いてます。シンプルです。

ケイティ:
生きるためと楽しいからはどっちのほうが大きいですか?

いい質問!うーん、半々はんはんじゃないかな。自分で天職てんしょくだと思うので。もともとは食べて生きていくためにはじめたけど、今はそれが自分にっていると思います。いろんな人にもえて世界せかいが広がるし、楽しいです。

ケイティ:
てんしょくってどういう意味いみですか?

自分にぴったりの仕事。好きな仕事の中でも、つらいことややりたくないことってあるけど、全部ひっくるめて自分に合ってる仕事を天職といいます。

ケイティ:
なるほど、ありがとうございます。

かのぴ:
「働く」と「お金の関係かんけい」についてどう思いますか?

循環じゅんかんするものだと思っています。 働いて、野菜がお金になって、お金を自分の人生が豊かになるように使って、それが必要としている人のところにとどいて……のかえしで人生じんせいを楽しくすごしたいなと思います。

循環=まわって戻ってくることを繰り返すこと

ケイティ:
最後に、子どもたちにメッセージをお願いします!

新型コロナウィルスの影響えいきょうなどで、生きづらい世の中だなって思うこともあるけど、本当ほんとうに大切なものを見うしわないように生きてほしいです。自分の中にしんを持つことが大事です。

今いろんな情報じょうほうがインターネットなどでも入ってくるけど、お金やケイタイさえあれば何でもできるようになるわけじゃない。生きていく中で本当に大事なことは何か、必要なものをしっかりかんがえてそだってほしいです。周りの情報にぐらぐらさせられないように生きていってください!

何かあればどんどん周りの大人もたよってほしいと思います。

ケイティ・かのぴ:
ありがとうございました!

農家ってどんな仕事?

・お米や野菜など、食べ物をつくっている

・午前中に畑に出て、午後に収穫した野菜を袋に詰めたり、段ボールに入れて送る準備をしたりする(國吉さんの場合)

・野菜の種をまいて芽が出たものや、それをもう少し大きくして畑に植え替えたものに水をあげて育てる

・できるだけ手作業で育てる(國吉さんの場合)

農家の魅力と大変なこと

・「生きてる」感じがする

・起きて日に当たって体を動かすと、お腹が空いて何食べてもおいしい

・働く時間を自分で決められ、自分のペースで進められる

・自然の天候に左右される

・体力的にしんどい

・ずるして稼げる仕事ではない

農家という仕事をおすすめできる理由

・食べ物をつくることができれば、何があっても生きていける

・地道な作業が多いので、本気で農業を好きになれそうな人、本気でやれそうな人におすすめ

・何を勉強しても役に立つ

・とにかく楽しい

「働く」と「お金」の関係

・働くとは、生きる上での生活の一部

・お金は、保存ができて、共通の価値があって、必要なものと交換もできる便利な道具

・お金を道具として使うことで、人生を豊かにできる

・お金を稼ぐことは、自分の努力の結晶であり、結果

・「働く」と「お金」は循環するもの

國吉さんの思う大切なこと

・食べることは生きること

・仕事とお金のバランス

・シンプルに生きる

・本当に大切なものを見失わないように生きる

・自分の中に芯を持つ

・周りの情報にぐらぐらさせられない

・何かあればどんどん周りの大人を頼る

こんなお話しもしました

かのぴ:
お米や野菜以外にも、育てているものはありますか?

うちは原木げんぼくしいたけも育てています。実は鳥取は「日本きのこセンター」というところがあって、日本で一番しいたけの研究けんきゅうすすんでいるんですよ。すごくおいしいし、品種ひんしゅ開発かいはつも進んでいます。「青空レストラン」という番組ばんぐみでも、しいたけが取り入れられたこともあります。

秋になったら山の木を倒して乾燥かんそうさせ、3月くらいにドリルであなを開け、キノコのきんを入れていく。今は1年くらいで生えてきて収穫できます。

僕はやっていないけど、大山は芝生しばふ有名ゆうめいです。鳥取は、日本で2番目に芝生が多く生産せいさんされている地域。サッカー場やゴルフ場、甲子園こうしえんにも使われています。

あと有名な和牛わぎゅうも、もともと鳥取で生まれていることが多い。友達は自分で仔牛こうしを育ててりに出し、その仔牛が地方の牧場ぼくじょうで大きくなり、神戸こうべ牛や松坂まつざか牛とばれるブランド牛になっています。鳥取にはそんな農家さんもいっぱいいます。

原木しいたけ=木に菌を入れて、自然の中で育てたしいたけ

品種=種類

開発=新しいものを生み出したり、使えるようにしたりしていくこと

甲子園=兵庫ひょうご県にある野球やきゅうじょう

競り=買いたい人たちで値段ねだんを言い合い、その値段をめる仕組しく

國吉美貴さんのSNSと國吉農園のホームページ

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、かのぴ
編集部:スナミアキナ、吉川由
ライティング:吉川由
サムネイルデザイン・編集:スナミアキナ
編集長:吉川由
主催:YOKARO