今回のお相手:河野 涼さん
宮崎県生まれ、千葉県育ちのアートディレクター。カメラマンでもあり、合同会社hyogenの社長でもある。日本のモノづくり(伝統工芸)が大好き。日本のモノづくりや伝統工芸、文化、人を伝えるプロジェクト「JAPAN MADE」の編集長。子どもの頃はサッカー少年だった。
子ども取材班
No.5 かのぴ:
画力を上げることを頑張っている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことが嬉しかった。
No.11 アメリ:
漢字の勉強を頑張っている。公園で新しい友達をつくったこと、モデルの仕事が来たことが嬉しかった。
No.12 虹太:
お母さんが読んでいる新聞を、自分も読むことを頑張っている。山を散策して木を切ったことや、ビームライフルの体験をしたことが嬉しかった。
生活をするためにお金を稼ぐ仕事のことを「生業」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。
今回のゲストは河野 涼さん。アートディレクターです。アートディレクターって、いったいどんなお仕事なのでしょう?
かのぴ・アメリ・虹太:
よろしくお願いします。
河野さん:
よろしくお願いします。
「この人になりたい」ではなく、自分が何をしたいか
虹太:
子どもの頃、どんな大人になりたいと思っていましたか?
小学生の頃、サッカーチームに入っていたので、サッカー選手になりたいと思っていました。
かのぴ:
なぜ、サッカー選手になりたいと思っていましたか?
サッカーが好きだったのと、テレビでプロのサッカー選手を見てかっこいいなと思ったからです。自分の大好きなサッカーで、プロの選手として活躍したいと思っていました。
小学生の頃は、大人がどんなものかまだイメージできなくて。ただ「大人になったら自由にいろんなことができたり、たくさんの場所に行けたりするんだろうな」と感じていました。なので早く大人になりたかったです。
今考えると、その頃は世の中の職業のことは全然知らなかったなあ。
かのぴ:
そうなんですか?
周りの大人がしている仕事しか知らなかった。サッカー選手という仕事があるのも、テレビで知りました。
世の中にはたくさんの職業があるけれど、知らないものには、なかなかなりたいと思えないですよね。もし子どもの頃、「こんな職業もあるよ」といろんな職業を知っていたら、また違うものに興味を持っていたかもしれません。
早く大人になりたかった子ども時代
アメリ:
子どもの頃、憧れていた人はいますか?
僕が小学生の頃、サッカーの日本代表として活躍していた、中田英寿選手という選手がいるのですが……
中田英寿=世界で活躍し、ワールドカップにも何度も出場したことがあるサッカー選手
虹太:
知ってます!僕もサッカーをやっているから。
おお!知ってるんだ!彼はサッカー界では伝説のような人で、すごく憧れていました。
かのぴ:
今は、誰か憧れている人はいますか?
「すてきだな、かっこいいな」と思う人はたくさんいるけれど、「この人みたいになりたい」という人は特にいなくて。
かのぴ:
えっ!
子どもの頃からそうだったんです。でも、それは悪い意味じゃなくて。「この人みたいになりたいな」と思ったら、その人よりもすばらしい人間になるのって難しいんです。
自分じゃない誰かをモデルとして頑張るんじゃなくて、自分が生きたいように生きることが、人生を幸せにする方法だと僕は思っている。どうしたら「自分自身」が幸せに生きていけるかを、考えるようにしています。
かのぴ:
かっこいいです!
ブランドの世界観を写真や映像で「表現する」
アメリ:
職業名は何ですか?
アートディレクター、カメラマンとして働いています。カメラマンとして写真や映像を撮ったり、みなさんが生活の中で目にする「ブランド」の世界観を表現したりする仕事もしています。
ブランド=ある商品やサービスを、他と区別するためのもの。そのブランドの特徴やよさを伝えるために、名前・写真・デザイン・キャッチフレーズなどをつくる
世界観=その人やものが持つ世界のこと
写真や映像でブランドを表現する河野さん
かのぴ:
わたしも、外国のブランドなら知っています。シャネルとか。
おお、よく知っていますね。他にも、ルイヴィトン、ナイキ、アディダス、いろんなブランドがありますよね。そういう「ブランド」の世界観を表現するのが、アートディレクターの仕事です。
他にも、そのブランドが考えていること、美しいと思うことを、写真やロゴやチラシやWebサイトで、どう表現するかを考えます。
僕はカメラマンとして、そうした仕事に関わることが多いです。写真や映像の技術で、お客さんがつくりたい世界観やイメージを表現しています。なので「表現する人」ともいえますね。
河野さんが撮影した写真
かのぴ:
河野さんは、何年くらいアートディレクターの仕事をしていますか?
本格的にはじめたのは2019年頃なので、3、4年です。
かのぴ:
意外と最近なんですね。
そうなんです。カメラを始めたのも2016年なので、まだ5、6年です。
虹太:
事前アンケートに書いてあった、「マーケティング」と「ブランディング」って何ですか?
iPhoneで例えていうと、マーケティングは「どうしたらiPhoneが売れるかを考えること」。ブランディングは「どうしたらiPhoneは画期的な商品だと、みんなに思ってもらえるか考えること」です。簡単に言うと「欲しい!」と思わせることですね。
他にも、飲み物で「アクエリアス」と「ポカリスエット」ってありますよね。2つともスポーツドリンクで味も似ているけど、ついポカリスエットを買ってしまう、なんてことはありませんか?
iPhone=Appleというアメリカの会社がつくっているスマートフォンのこと
画期的=それまでになく新しいこと
かのぴ:
あります。
そういう風に、たくさんの商品がある中で「これを買いたい」と思ってもらう理由をつくるのが「マーケティング」や「ブランディング」のお仕事です。そのための方法を、マーケター、ブランドディレクター、アートディレクターと呼ばれる人たちがつくっています。僕もそのうちの一人です。
かのぴ:
「社長」というと、会社の中で一番偉い人というイメージしかなくて。具体的に、社長としてはどんなことをしているんですか?
僕も小学生の頃は、社長って偉い人というイメージでした。でも実はそんなことはなくて、ただの役職の名前なんですよ。
役職=会社での役割
かのぴ:
えっ!?
なので、会社をつくってしまえば誰だって社長になれるんです。かのぴちゃんも社長になれますよ。虹太社長にも、アメリ社長にもなれる。
全員:
ふふふ(笑)。
ただ、会社をつくって何をするか、どのくらいの大きさの会社にするかは人それぞれですね。全国にいっぱい社員がいる大きな会社もあるし、社員が社長1人の会社もあります。
かのぴ:
河野さんはどんな会社の社長なんですか?
僕を入れて、3人のメンバーがいます。
会社は大きければ大きいほどすごいというわけではなくて、いろんなタイプがあります。お金をたくさん稼ぐために会社をつくった人もいるし、自分のやりたいことをやるために会社をつくった人もいる。僕は、自分が一緒に働きたい人たちと、やりたいことをやるために、会社という場所をつくりました。
かのぴ:
イメージがわきました。ありがとうございます!
河野さんと仕事の仲間たち
虹太:
河野さんの仕事内容を、詳しく教えてください。
カメラを使って写真や映像をつくり、ブランドの世界観を表現する仕事をしています。自分が撮影した写真や映像をお客さんに渡して、それに対してお金が支払われます。
WebサイトやYouTube用の撮影をすることもあるし、最近ではInstagramで使う写真を撮ってほしいと言われることもあります。
Instagram=写真を使って自分の考えや思いを伝える、インターネットのサービス
かのぴ:
えー!そんな仕事もあるんですか?
あるんです。世の中にはほんとにいろんな仕事があってね。どんな写真を撮っているのか、少しだけお見せしますね。
これは、マツダという車の会社のInstagramです。「マツダマガジン」というタイトルで、まるで雑誌のように、マツダの車のある暮らしとはどんなものかを紹介しています。ここに載っている写真は、全部僕らが撮っています。
マツダのInstagram。河野さんの写真が使われている
虹太:
かっこいい!
マツダという会社が、自分たちの商品である車を、どんなイメージで見てほしいか伝えるためにつくっています。イメージを伝えるためには写真や映像が必要ですよね。
でも、マツダは車をつくるのが専門であって、写真を撮ったり映像をつくったりするのは専門じゃない。そこで僕らのような撮影や制作をする会社が、代わりにそのお仕事をしています。
専門=プロとしてその仕事をしていること
かのぴ:
なるほど。
みなさんが街の中で出会う広告や、YouTubeで見る写真や映像も、誰かがこうしてつくったものです。でも、誰もが全ての会社の写真や映像を撮れるわけではありません。
映像や写真を撮る「視点」は、人によって全然違うんです。僕が撮る視点と、虹太くんが撮る視点もきっと違うよね。
世の中にはいろんなカメラマンがいて、必ずその人ならではの「視点」がある。お客さんは、たくさんある視点の中から「この人の視点がいいから、この人に頼む」と選んで仕事をお願いする。そんな風に、僕も自分の視点で見ている世界を撮って、お客さんに提供しています。
視点=ものごとの見方
提供=相手に差し出すこと
河野さんの視点で撮影した写真。
伝統工芸を写真や映像で伝えるお仕事も
自分もカメラもどんどん成長させる
虹太:
カメラはどこのカメラを使っていますか?
SONYのカメラです。
虹太:
SONY!僕も使っています。
お、虹太くんも写真を撮るんですね!何を撮りますか?
虹太:
鳥やいろいろなものを撮ってます。
そうなんですね!
同じ鳥を撮るとしても、カメラの種類や、撮る角度、撮る人によって、できあがる写真って違いますよね。虹太くんが撮った写真と、僕が撮った写真も、できあがりは違う。だから、自分の視点や、自分の世界を大事にしながら撮っています。
子ども取材班・虹太のカメラ
かのぴ:
テレビの生中継や、モデルさんの撮影で、カメラを何台も使い分けてるのを見たことがあるのですが、河野さんも使い分けるんですか?
はい。写真を撮るときと映像を撮るときで使い分けますし、仕事とプライベートでも違うカメラを使っています。
世の中にはいろんな種類のカメラがあって、カメラごとに得意なことが違うんですよ。写真が得意、映像が得意、軽いから持ち運びしやすいなどの特徴があるので、そのときによって使い分けています。
虹太:
なんでその中でも、SONYのカメラを使っているんですか?
SONYが好きな理由のひとつは、軽さですね。僕は出張に行って職人さんの撮影をしたり、外で撮影することが多いので、軽くて動きやすいことが重要なんです。
もうひとつは、写真の色味。同じ緑や青でも、カメラによって色味が少しずつ違うんですよ。僕はSONYのカメラが出す色味が好きです。
出張=仕事のためにいつもとは違う場所に行くこと
虹太:
河野さんのカメラを、見せていただけますか?
今は家なので、プライベート用のカメラならお見せできますよ!SONYでなくて、シグマのカメラですが。小さくて持ち運びしやすいので、ちょっと旅行に行くときや、友達を撮影するときに使っています。
ミラーレス一眼レフといわれるタイプで、レンズを交換できます。これ1台で写真も映像も撮れます。値段は20万円くらいです。
プライベート=仕事ではない自分の時間
全員:
ええー!20万!
プロが使うカメラの中では、実は20万ってけっこう安いほうなんですよ。プロになると、レンズを交換する必要もあるし、画質のよさも重要になってくる。その分高くなるんです。
画質=写真や映像の画像のきれいさ
かのぴ:
ちなみに、お仕事で使っているカメラの値段はどれくらいするんですか?
今使っているのは、30〜40万円くらいですね。
最初はもう少し安いカメラを使っていましたが、仕事が大きくなると、いただく金額も大きくなります。なので自分の技術も上げなきゃいけないし、技術を上げるためにいい機材をそろえなきゃいけない。
仕事を頑張って、いい機材を買って、もっと大きい仕事をもらう。それを繰り返して続けてきました。
機材=機械などの材料
仕事の内容も道具もどんどん成長させていく
最後はカメラトークで盛り上がった子ども取材班。前編では、河野さんが実際に撮影した写真を見せてもらいながら、アートディレクターという仕事についてお聞きしました。
後編では、この仕事をはじめたきっかけや、大事にしていること、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:かのぴ、アメリ、虹太
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:南 裕子
サムネイルデザイン:南 裕子
編集:吉川ゆゆ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO