インタビュー記事

第17回 ブランドの世界を表現する 「アートディレクター」 河野 涼さん【前編】

今回のお相手:河野 涼さん

宮崎みやざきけん生まれ、千葉ちばけんそだちのアートディレクター。カメラマンでもあり、合同ごうどう会社がいしゃhyogenヒョーゲン社長しゃちょうでもある。日本のモノづくり(伝統でんとう工芸こうげい)が大き。日本のモノづくりや伝統工芸、文化ぶんか、人をつたえるプロジェクト「JAPANジャパン MADEメイド」の編集へんしゅう長。子どものころはサッカー少年しょうねんだった。

子ども取材班しゅざいはん

No.5 かのぴ:
画力がりょくを上げることを頑張がんばっている。ソラマチできれいなかんざしを買ってもらったことがうれしかった。

No.11 アメリ:
漢字かんじの勉強を頑張っている。公園で新しい友達ともだちをつくったこと、モデルの仕事がたことが嬉しかった。

No.12 虹太:
お母さんが読んでいる新聞を、自分じぶんも読むことを頑張っている。山を散策さんさくして木を切ったことや、ビームライフルの体験たいけんをしたことが嬉しかった。

生活をするためにお金をかせぐ仕事のことを「生業なりわい」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。

今回のゲストは河野 涼さん。アートディレクターです。アートディレクターって、いったいどんなお仕事なのでしょう?

かのぴ・アメリ・虹太:
よろしくおねがいします。

河野さん:
よろしくお願いします。

「この人になりたい」ではなく、自分が何をしたいか

虹太:
子どもの頃、どんな大人になりたいとおもっていましたか?

小学生の頃、サッカーチームに入っていたので、サッカー選手になりたいと思っていました。

かのぴ:
なぜ、サッカー選手になりたいと思っていましたか?

サッカーが好きだったのと、テレビでプロのサッカー選手せんしゅを見てかっこいいなと思ったからです。自分の大好きなサッカーで、プロの選手として活躍かつやくしたいと思っていました。

小学生の頃は、大人がどんなものかまだイメージできなくて。ただ「大人になったら自由じゆうにいろんなことができたり、たくさんの場所ばしょに行けたりするんだろうな」とかんじていました。なので早く大人になりたかったです。

いまかんがえると、その頃はの中の職業しょくぎょうのことは全然ぜんぜんらなかったなあ。

かのぴ:
そうなんですか?

まわりの大人がしている仕事しか知らなかった。サッカー選手という仕事があるのも、テレビで知りました。

世の中にはたくさんの職業があるけれど、知らないものには、なかなかなりたいと思えないですよね。もし子どもの頃、「こんな職業もあるよ」といろんな職業を知っていたら、またちがうものに興味きょうみっていたかもしれません。

早く大人になりたかった子ども時代

アメリ:
子どもの頃、あこがれていた人はいますか?

ぼくが小学生の頃、サッカーの日本代表だいひょうとして活躍していた、中田英寿ひでとし選手という選手がいるのですが……

中田英寿=世界せかいで活躍し、ワールドカップにも何度なんど出場しゅつじょうしたことがあるサッカー選手

虹太:
知ってます!僕もサッカーをやっているから。

おお!知ってるんだ!かれはサッカーかいでは伝説でんせつのような人で、すごく憧れていました。

かのぴ:
今は、誰か憧れている人はいますか?

「すてきだな、かっこいいな」と思う人はたくさんいるけれど、「この人みたいになりたい」という人はとくにいなくて。

かのぴ:
えっ!

子どもの頃からそうだったんです。でも、それはわる意味いみじゃなくて。「この人みたいになりたいな」と思ったら、その人よりもすばらしい人間になるのってむずかしいんです。

自分じぶんじゃない誰かをモデルとして頑張るんじゃなくて、自分が生きたいように生きることが、人生をしあわせにする方法ほうほうだと僕は思っている。どうしたら「自分自身」が幸せに生きていけるかを、考えるようにしています。

かのぴ:
かっこいいです!

ブランドの世界かん写真しゃしん映像えいぞうで「表現ひょうげんする」

アメリ:
職業名はなんですか?

アートディレクター、カメラマンとして働いています。カメラマンとして写真や映像をったり、みなさんが生活の中で目にする「ブランド」の世界観を表現したりする仕事もしています。

ブランド=ある商品しょうひんやサービスを、ほか区別くべつするためのもの。そのブランドの特徴とくちょうやよさを伝えるために、名前・写真・デザイン・キャッチフレーズなどをつくる

世界観=その人やものが持つ世界のこと

写真や映像でブランドを表現する河野さん

かのぴ:
わたしも、外国のブランドなら知っています。シャネルとか。

おお、よく知っていますね。他にも、ルイヴィトン、ナイキ、アディダス、いろんなブランドがありますよね。そういう「ブランド」の世界観を表現するのが、アートディレクターの仕事です。

他にも、そのブランドが考えていること、うつくしいと思うことを、写真やロゴやチラシやWebウェブサイトで、どう表現するかを考えます。

僕はカメラマンとして、そうした仕事に関わることが多いです。写真や映像の技術ぎじゅつで、おきゃくさんがつくりたい世界観やイメージを表現しています。なので「表現する人」ともいえますね。

河野さんが撮影した写真

かのぴ:
河野さんは、何年くらいアートディレクターの仕事をしていますか?

本格ほんかくてきにはじめたのは2019年頃なので、3、4年です。

かのぴ:
意外いがい最近さいきんなんですね。

そうなんです。カメラを始めたのも2016年なので、まだ5、6年です。

虹太:
事前じぜんアンケートに書いてあった、「マーケティング」と「ブランディング」って何ですか?

iPhoneアイフォンたとえていうと、マーケティングは「どうしたらiPhoneが売れるかを考えること」。ブランディングは「どうしたらiPhoneは画期かっきてき商品しょうひんだと、みんなに思ってもらえるか考えること」です。簡単かんたんに言うと「しい!」と思わせることですね。

他にも、飲み物で「アクエリアス」と「ポカリスエット」ってありますよね。2つともスポーツドリンクであじているけど、ついポカリスエットを買ってしまう、なんてことはありませんか?

iPhone=Appleアップルというアメリカの会社がつくっているスマートフォンのこと

画期的=それまでになく新しいこと

かのぴ:
あります。

そういう風に、たくさんの商品がある中で「これを買いたい」と思ってもらう理由りゆうをつくるのが「マーケティング」や「ブランディング」のお仕事です。そのための方法を、マーケター、ブランドディレクター、アートディレクターとばれる人たちがつくっています。僕もそのうちの一人です。

かのぴ:
「社長」というと、会社の中で一番いちばんえらい人というイメージしかなくて。具体ぐたいてきに、社長としてはどんなことをしているんですか?

僕も小学生の頃は、社長って偉い人というイメージでした。でもじつはそんなことはなくて、ただの役職やくしょくの名前なんですよ。

役職=会社での役割

かのぴ:
えっ!?

なので、会社をつくってしまえば誰だって社長になれるんです。かのぴちゃんも社長になれますよ。虹太社長にも、アメリ社長にもなれる。

全員:
ふふふ(笑)。

ただ、会社をつくって何をするか、どのくらいの大きさの会社にするかは人それぞれですね。全国ぜんこくにいっぱい社員がいる大きな会社もあるし、社員が社長1人の会社もあります。

かのぴ:
河野さんはどんな会社の社長なんですか?

僕を入れて、3人のメンバーがいます。

会社は大きければ大きいほどすごいというわけではなくて、いろんなタイプがあります。お金をたくさんかせぐために会社をつくった人もいるし、自分のやりたいことをやるために会社をつくった人もいる。僕は、自分が一緒いっしょに働きたい人たちと、やりたいことをやるために、会社という場所をつくりました。

かのぴ:
イメージがわきました。ありがとうございます!

河野さんと仕事の仲間なかまたち

虹太:
河野さんの仕事内容ないようを、くわしくおしえてください。

カメラを使つかって写真や映像をつくり、ブランドの世界観を表現する仕事をしています。自分が撮影した写真や映像をお客さんにわたして、それにたいしてお金が支払われます。

WebサイトやYouTubeユーチューブようの撮影をすることもあるし、最近さいきんではInstagramインスタグラムで使う写真を撮ってほしいと言われることもあります。

Instagram=写真を使って自分の考えや思いを伝える、インターネットのサービス

かのぴ:
えー!そんな仕事もあるんですか?

あるんです。世の中にはほんとにいろんな仕事があってね。どんな写真を撮っているのか、少しだけお見せしますね。

これは、マツダという車の会社のInstagramです。「マツダマガジン」というタイトルで、まるで雑誌ざっしのように、マツダの車のあるらしとはどんなものかを紹介しょうかいしています。ここにっている写真は、全部ぼくらが撮っています。

マツダのInstagram。河野さんの写真が使われている

虹太:
かっこいい!

マツダという会社が、自分たちの商品である車を、どんなイメージで見てほしいか伝えるためにつくっています。イメージを伝えるためには写真や映像が必要ひつようですよね。

でも、マツダは車をつくるのが専門せんもんであって、写真を撮ったり映像をつくったりするのは専門じゃない。そこで僕らのような撮影や制作せいさくをする会社が、わりにそのお仕事をしています。

専門=プロとしてその仕事をしていること

かのぴ:
なるほど。

みなさんがまちの中で出会う広告こうこくや、YouTubeで見る写真や映像も、誰かがこうしてつくったものです。でも、誰もが全ての会社の写真や映像を撮れるわけではありません。

映像や写真を撮る「視点してん」は、人によって全然違うんです。僕が撮る視点と、虹太くんが撮る視点もきっと違うよね。

世の中にはいろんなカメラマンがいて、かならずその人ならではの「視点」がある。お客さんは、たくさんある視点の中から「この人の視点がいいから、この人にたのむ」とえらんで仕事をお願いする。そんなふうに、僕も自分の視点で見ている世界を撮って、お客さんに提供ていきょうしています。

視点=ものごとの見方

提供=相手に差し出すこと

河野さんの視点で撮影した写真。
伝統工芸を写真や映像で伝えるお仕事も

自分もカメラもどんどんせいちょうさせる

虹太:
カメラはどこのカメラを使っていますか?

SONYソニーのカメラです。

虹太:
SONY!僕も使っています。

お、虹太くんも写真を撮るんですね!何を撮りますか?

虹太:
とりやいろいろなものを撮ってます。

そうなんですね!

同じ鳥を撮るとしても、カメラの種類しゅるいや、撮る角度かくど、撮る人によって、できあがる写真って違いますよね。虹太くんが撮った写真と、僕が撮った写真も、できあがりは違う。だから、自分の視点や、自分の世界を大事にしながら撮っています。

子ども取材班・虹太のカメラ

かのぴ:
テレビの生中継ちゅうけいや、モデルさんの撮影で、カメラを何だいも使い分けてるのを見たことがあるのですが、河野さんも使い分けるんですか?

はい。写真を撮るときと映像を撮るときで使い分けますし、仕事とプライベートでも違うカメラを使っています。

世の中にはいろんな種類のカメラがあって、カメラごとに得意とくいなことが違うんですよ。写真が得意、映像が得意、かるいから持ちはこびしやすいなどの特徴とくちょうがあるので、そのときによって使い分けています。

虹太:
なんでその中でも、SONYのカメラを使っているんですか?

SONYが好きな理由のひとつは、軽さですね。僕は出張しゅっちょうに行って職人さんの撮影をしたり、外で撮影することが多いので、軽くて動きやすいことが重要じゅうようなんです。

もうひとつは、写真の色。同じみどりや青でも、カメラによって色味が少しずつ違うんですよ。僕はSONYのカメラが出す色味が好きです。

出張=仕事のためにいつもとは違う場所に行くこと

虹太:
河野さんのカメラを、見せていただけますか?

今は家なので、プライベート用のカメラならお見せできますよ!SONYでなくて、シグマのカメラですが。小さくて持ち運びしやすいので、ちょっと旅行りょこうに行くときや、友達を撮影するときに使っています。

ミラーレス一眼いちがんレフといわれるタイプで、レンズを交換こうかんできます。これ1台で写真も映像も撮れます。値段ねだんは20まん円くらいです。

プライベート=仕事ではない自分の時間

全員:
ええー!20万!

プロが使うカメラの中では、じつは20万ってけっこうやすいほうなんですよ。プロになると、レンズを交換する必要もあるし、画質がしつのよさも重要になってくる。その分高くなるんです。

画質=写真や映像の画像のきれいさ

かのぴ:
ちなみに、お仕事で使っているカメラの値段はどれくらいするんですか?

今使っているのは、30〜40万円くらいですね。

最初はもう少し安いカメラを使っていましたが、仕事が大きくなると、いただく金がくも大きくなります。なので自分の技術も上げなきゃいけないし、技術を上げるためにいい機材きざいをそろえなきゃいけない。

仕事を頑張って、いい機材を買って、もっと大きい仕事をもらう。それをかえして続けてきました。

機材=機械などの材料

仕事の内容も道具もどんどん成長させていく

最後はカメラトークでり上がった子ども取材しゅざいはんぜんへんでは、河野さんが実際じっさいに撮影した写真を見せてもらいながら、アートディレクターという仕事についてお聞きしました。
こうへんでは、この仕事をはじめたきっかけや、大事だいじにしていること、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。


【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:かのぴ、アメリ、虹太
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:南 裕子
サムネイルデザイン:南 裕子
編集:吉川ゆゆ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO