インタビュー記事

第18回 動物と地域の問題解決に取り組む 「ITハンター」 吉田 隼介さん【後編】

今回のお相手:吉田よしだ しゅんすけさん

ITアイティー企業きぎょうつとめながら、「カリラボ」というりの会社かいしゃをやっているハンター。東京とうきょう埼玉さいたまけん横瀬よこぜまちの2かしょみながら活動かつどうしている。動物どうぶつからの被害ひがいらし、地域ちいきの力になることをしている。ITの力を使って、より狩りがしやすくなるようにかんがちゅう大学だいがくせい高校こうこう生の子どもがいるパパ。

子ども取材班しゅざいはん

No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命いっしょうけんめいがんばっている。空手で館長賞かんちょうしょうを取ったことがうれしかった。

No.10 ばん:
バスケのドリブル練習・二重とびをがんばっている。誕生日にレストランに行ったこと、大繩でみんなで目標達成したことが嬉しかった。

No.11 アメリ:
漢字かんじの勉強を頑張っている。公園で新しい友達ともだちをつくったこと、モデルの仕事がたことが嬉しかった。

No.15 ぜん:
勉強や友だちと遊ぶ工夫を考えることを頑張っている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。

だれでもなれるようでなれない「猟師りょうし」という職業しょくぎょう

アメリ:
どうやったら猟師りょうしになれるんですか?

やる気があればだれでもなれるけれど、狩猟しゅりょう免許めんきょというりをするための免許が必要ひつようです。狩猟免許は、18さい以上いじょうじゃないとれません。18歳になって、どうけん試験しけんもうみをして、試験にかったら狩りができるようになる。

いま、狩猟免許はすごく人気にんきがあって、申し込んでも抽選ちゅうせんたった人だけが試験しけんを受けることができます。全国ぜんこくてきに猟師がりなくなっているので、ぼく人数にんずう制限せいげんしないでほしいとおもっているんですが。今のまりでは、1ねんかんに試験を受けられる人数が決まっています。

アメリ:
狩りをするのに、ほかにはどんな資格しかくが必要ですか?

さっきった狩猟免許以外いがいにも、どういうりょうをするかによって、必要な免許があります。わなじゅうなど、それぞれを使うための資格を取らなくちゃいけない。

銃の場合ばあいだけは特別とくべつで、狩りをするときに「銃を使つかっていい」という資格と、銃はあぶないので「銃をっていい」という2つの資格が必要。りょうじゅうっていうと「狩猟よう鉄砲てっぽうなのかな?」と思うかもしれないけれど、テレビで見るような普通ふつうの銃とわらないんだよ。

銃は使いかたちがえると本当ほんとう危険きけんだし、きちんと管理かんりできる人に持たせるべきです。だから銃は、資格を持つ人だけが使えるようになっています。

狩りをするには資格が必要

ケイティ:
吉田さんは銃を使ってるんですか?

使っているよ。危ないので、ガンロッカーという、しっかりかぎがかかってそとからこわせないロッカーがいえにあります。僕だけがけられるようにして、厳重げんじゅう管理かんりしています。僕のおくさんですら、ロッカーは開けられません。

厳重=いいかげんにしないで、きびしくすること

ばん:
資格はすぐに取れるんですか?

狩りをする資格は1日で取れます。

ケイティ・ぜん:
えーっ!

ただ、もちろん勉強べんきょうはしますよ(笑)。勉強して、試験会場かいじょうって試験を受けて、合格ごうかくしたら資格は取れます。

でも銃の免許は、取るまでがすごく大変たいへん。「銃の免許を取ります」と警察けいさつとどけ出たら、どんな人なのかを警察に調しらべられます。

身辺みのべ調査ちょうさといって、警察が家族かぞく会社かいしゃ友達ともだちなどに電話でんわして、「吉田さんってどんな人ですか?」「夫婦ふうふげんかでよる大声おおごえを出していませんか?」「近所きんじょでトラブルをこしていませんか?」というようなことを聞かれます。

ぜん:
そんなこまかいところまで言われるんだ。

そう。そして何ヶ月なんかげつ審査しんさされる。それに銃なので、実際じっさいに使いこなせないと意味いみがありません。銃の使い方の訓練くんれん知識ちしきのテストを受けて、それを全部ぜんぶクリアしてはじめて銃が持てるようになります。

でも銃は使い方によっては怖いものになるから、そのほうがいいよね。

ばん:
資格を取るのはむずかしいんですか?

ううん、そんなに難しくはありません。これがきょうしょです。

ぜん:
あつい!

アメリ:
なんか学校がっこうの教科書みたい。

学校の教科書や資料しりょうしゅうみたいだよね。この本には、たとえば、どういう場所で銃を使っていいのかがいてあります。あと、何でもかんでも動物どうぶつっていいわけじゃない。なのでどういう動物なら獲っていいのかも、当然とうぜんおぼえなくてはいけません。

日本にほん大型おおがた野生やせい動物は、クマとイノシシとシカしかいないから覚えやすいです。難しいのはとりですね。カモって、全部おなじように見えるでしょう? でも獲っていいカモと、そうでないカモがいるんです。

獲っていい動物たちも覚えなくてはいけない

ぜん:
ややこしい……。

そうだね。でもこうやって細かいところも覚えていれば、狩りの資格は簡単かんたんに取れます。

アメリ:
わからないことがあったら、メモもしてるんですか?

いっぱいしているよ。ほら、ちゃんと勉強してるでしょ?(笑)

ばん:
銃を練習れんしゅうは、どこでやるんですか?

しゃげきじょうに行って、銃の練習をします。射撃場は、だいたい山の中のような、まちからはなれたところにあります。

バンバン大きい音がしても大丈夫だし、広い敷地しきちで、たま絶対ぜったい外に出ないようになっているよ。

射撃場=銃の練習をする場所

ケイティ:
銃を持つことは、こわくないですか?

怖いですね。銃を持つと「わあ、銃だ!すごい!」と思うんだろうなと想像そうぞうしていました。でも実際は怖くて。仕事をするうえで持っていないといけないんだけど、もしこの仕事をやっていなかったら、早く銃をかえしたいですね。

ちゃんと銃の管理ができていなかったら、ぬすまれる怖さもある。あと単純たんじゅんに、あつかいをちがえると普通ふつうにバンッ!とたまが出てしまうこともある。

今までそういうことがあったわけじゃないけれど、緊張きんちょうはします。

ぜん:
なるほど。

なかには銃にあこがれていて、持っているだけで「興奮こうふんします!」という人もいます。たしかにドラマや映画えいがを見ていると、銃にちょっと憧れない?

ケイティ:
刑事けいじドラマとか?

ぜん:
ちょっと憧れるけど……。

しかも猟銃って、散弾さんだん銃といってボリュームかんもあるからね。かっこいいと思う人も多いね。

若者の力が地域の助けになる

としりと協力きょうりょくしながら、わかい人たちが地域ちいきたすけていく

アメリ:
この職業しょくぎょう魅力みりょくと、大変たいへんだと思うことはなんですか?

魅力は、まず狩り自体じたいがおもしろいこと。あと自分たちの行動こうどうが、日本全体ぜんたいの大きな課題かだい解決かいけつにつながること。

他にも、山の中で何もしないでボーッとするって、なんかおもしろいんだよね。「何がおもしろいの?」って言われるとこまるんだけど(笑)。外で仕事しごとをするのは、気持ちいいんですよ。

今まで気にしなかったような音が聞こえることもあるし、空気も全然ぜんぜんちがいます。山にいると、日本全体や自然、動物のことを考えます。普段ふだん生活せいかつとはちょっとはなれた体験たいけん連続れんぞくなので、それがまず楽しいかな。

みんなは1人で山に入ると危ないから、大人おとな一緒いっしょに行ってくださいね。

課題=解決しなくてはならない問題

全員:
はい。

大変だと思うことは、自然が相手なので、全然思いどおりにならないこともあります。例えば、カリラボを始める前の2019年の8月から、山の中にカメラを仕掛しかけたり、カメラの場所を調整ちょうせいしたりしました。

いざ10月になってカリラボを始めたんですが、その後大きな台風たいふうたんです。木もたおれるし、川のかたちわるし、カメラはながされるし、山の景色けしきも変わっちゃうし。何だいものカメラがこわれました。

あとはイベントをやろうとしていたのに、新型しんがたコロナウィルスの影響えいきょうあつまれなくなった。自然環境かんきょうきゅうな変化に影響される仕事なので、コントロールできないものが多いことが大変ですね。

ぜん:
猟師が少ないことの他に、地域の猟師さんたちは、今どんなことにこまっていますか?

若い人がなかなか狩りをしないから、猟師の集まりである猟友りょうゆう会のメンバーは、みんなおじいちゃんたちなんだよね。僕も猟友会のメンバーなんですが、おじいちゃんたちからすれば若いので、まだまだ子どもみたいなものです。

お年りなので体をこわす人もいるし、「もうこれ以上はこわいから、銃を返そうと思う」と言って引退いんたいする人もいます。そもそも狩りをする人数が少ないのに、さらにり始めているのが一番大きいです。

だからこそカリラボで若い会員さんをれて行くと、猟友会のみんなにとてもよろこばれます。おじいちゃんだと山をのぼるのも、山の中でれた獲物えものを持ち出すのも、解体かいたいするのも大変。そういうのを若い人がやってくれるとうれしい、というこえはよく聞きますね。

ケイティ:
天気てんきわるい日にも、狩りをするんですか?

基本きほんはしません。小雨こさめだったらいいんですが、雨がると動物も雨宿やどりをします。木のかげでじっとしている。じっとしている動物をさがすほど、難しいことはないんです。あとさむいしね。

ケイティ:
寒い?

狩りは、基本ふゆにやるものなんです。地域にもよるけれど、だいたい11月から2月ぐらいまでのあいだに狩りをすると法律ほうりつで決まっています。なのですごく寒いです。

狩りはこまかいことがたくさん決まっている

ばん:
なんでなつにはやらないんですか?

うーん……じつはわからないんです。むかしから、狩りはふゆにするものと決まっていて。冬は農業のうぎょうがあまりできないから、しょくりょうるために猟をやっていたんじゃないか、とか。あとは冬ごもりする前に、動物はおなかあぶらたくわえます。その時期じきは動物のお肉がおいしいから、というはなしもある。

カモの場合ばあいは、10月ぐらいに日本にわたってきます。冬をごしてはるになると、またシベリアといったさむ地域ちいきかえっていくので、それに合わせているという話もあります。

蓄える=ためておくこと

ケイティ:
けど、クマは冬眠とうみんする生き物なのに?

いい質問しつもんだね。実は、冬眠中のクマを獲る猟もあります。冬眠する直前ちょくぜんのクマは、太っています。だから、たくさんのお肉や脂がついている。

全員:
え?どうやって冬眠中のクマを獲るんですか?

あなに入って獲るんだよ。または、けむりおどかしてわざと穴から出して、クマが出てきた瞬間しゅんかんめることもある。でも、かなり危険きけんな猟です。ケイティちゃんが不思議ふしぎに思うのもわかる。

アメリ:
私は、春とかあきに狩りをすると思っていたなあ。

そう思うよね。ジビエ肉は春がおいしいといわれています。山に動物の食べ物がいっぱい出て来るころです。

秋は秋で、動物が太るからお肉がおいしい。アメリちゃんが言ってくれた春や秋は、たしかにジビエ肉がおいしい季節きせつです。でも法律ほうりつで、冬しか狩りをしたらだめなんだよね。

ぜん:
法律で決まってるなら仕方しかたないのか。

狩りには2種類あります。ひとつは、「狩猟しゅりょう」といって、冬に趣味しゅみでやる狩り。もうひとつは、時期に関係かんけいなく「有害ゆうがい鳥獣ちょうじゅう駆除くじょ」という、わるさをする動物を獲る狩り。こちらは一年中できます。

「有害鳥獣駆除」は、特別とくべつ資格しかくっている人しかできなくて、カリラボはその資格を持っています。だからやろうと思えばできるけど、カリラボは狩猟をする会社なので、有害鳥獣駆除の目的もくてきでは狩りをしていません。

んでみてはじめてわかることがある

アメリ:
まれわっても、またこの仕事をやりたいですか?

気持ちは半々はんはんです。大変たいへんだというのもありますしね。ハンターの仕事は、日本全体ぜんたい課題かだい解決かいけつや、こまってる人への手だすけになれるだろうとしんじてやっています。でもまだはじめたばかりで、本当ほんとうにこれがこたえなのかはわかっていません。

答えがもう少し見えてきたら、「生まれ変わっても絶対ぜったいやりたいです」と自信じしんを持って言いたいです。

吉田さんが狩りをする時にふく

ケイティ:
ハンターのお仕事は、今の子どもにもおすすめできますか?

すごくおすすめです。さっき言ったような日常にちじょうとはちが経験けいけんは、みんなどんどんしたほうがいいと思います。日本全体や地域で起きていることって、飛び込んでみないとわからない。知らないことを知ろうとするのは大切です。

特に子どものうちにそういう体験たいけんをしたほうが、将来しょうらいへの影響えいきょうも大きいだろうからおすすめします。

日常=毎日の生活

ばん:
学校の勉強でも、カリラボでやくに立つことはありますか?

例えばさっきの生態せいたいけいの話は、学校の勉強でいうと理科りか生物せいぶつにあたります。それから、狩りは法律の勉強にもつながる。あと「日本で起きている問題もんだいには、どういう原因げんいんや解決さくがあるんだろう?」というような、のうを使うトレーニングにもなります。

これは、いろんなビジネスにも共通きょうつうすることかもしれないですね。学校の勉強は、ちがいなく役に立つと思いますよ。

法律=国の決まり

ぜん:
ぼくは『なめとこ山のくま』という本を読みました。猟師さんの「熊、本当はお前をころしたくなかった」という言葉ことばが心にのこりました。吉田さんは狩りをした生き物にたいして、どんなことを思っているのか教えてください。

宮沢みやざわ賢治けんじ作品さくひんだよね?

宮沢賢治=岩手いわてけん出身しゅっしん詩人しじん作家さっか

ぜん:
はい。

一番最初に獲った獲物えもののことはわすれられません。アライグマでした。アライグマが小さなはこわなに入ったんですが、怪我けがもしていない元気げんき状態じょうたいでした。そういう時は「し」といって、すぐにとどめを刺さなくてはいけません。

でも初めての経験で、やすらかになるまでに時間がかかってしまって、上手じょうずにできませんでした。なるべくくるしまないように、とあたまではわかっていたのに。

うまくとどめを刺せなかったことに対して、すごく反省はんせいしました。狩りをすると決めた時点じてんで、生き物を殺すことに対して決心をしていたはずでした。決心をしたのであれば、準備や勉強をする義務や責任を、もっともっとちゃんと考えなければいけませんでした。

今では、「獲物はジビエのお肉にして食べる」「被害ひがいを止めるために仕留しとめる」と決めた時点で、生き物の命をることへの決心をしています。大事だいじにする、ちゃんと食べるというのは大切だと思うけれど、後悔こうかいまよいみたいなものはあまりないかな。

アメリ:
これからやっていきたいことは何ですか?

いくつかあります。まず、僕らがいるまち計画けいかくすすめているんですが、ジビエ肉をつくる「解体かいたいじょう」という施設しせつをつくろうとしています。解体場があれば、お肉をお店に出したり、売ったりすることができます。

あと、今は横瀬よこぜまちという小さな町でしかやっていないんだけれど、この仕組しくみをどんどん広げていきたい。同じような課題を持ってる町はとても多いんです。日本全国の困っているところでこの仕組みができれば、もしかしたら日本の害獣がいじゅう被害が解決するかもしれません。

みんなの食卓しょくたくにジビエ肉が当たり前にならぶのもいいですね。「今日はシカにする?それともとりにする?」のように、普段ふだん生活せいかつ会話かいわの中でジビエ肉が出てくるといいな。

ジビエ肉で、食事がもっと楽しくなる

ケイティ:
吉田さんがつくっている仕組みを他の地域で広げるために、ITのスキルはかせますか?

活かせます。今、日本ではどれくらい動物の被害が起きているのか、みんな把握はあくができていません。バラバラにあつめたデータから、被害を予想よそうするだけになっている。たとえば猟師からの報告ほうこくを全部ITアイティーしたり、データを1ヵ所に集めたりできるようになると、正しいデータが得られて、もっと解決しやすくなると思います。

今は狩りの期間きかんわったら、猟師が「今年は何とう獲りました」とかみいて出すんだよ。その数が全国から集まってきて、「今年は日本で何十まん頭獲りました」と合計ごうけいが出る。

でも例えば、今ここにいるメンバーでシカを一頭獲ったとします。全員が「シカを一頭獲りました」と紙に書いて出すと、一頭しか獲れてないのに、五頭のシカを獲った報告になってしまうよね。

そういうのも、実は問題のひとつ。解決のためには、カリラボがどんどん入り込んでいかなくちゃいけない。今とは違った形で、さらにITが活用できるようになると思っています。

把握=しっかりとわかること

ぜん:
森や生き物について、今後取りんでいきたいと思っていることはありますか?

難しい質問だね。

動物が町に出てきて、「獣害だ」と言われるのは、あまりよくないと思います。人間が勝手かってに、そのように言ってる状態を早くなくしたい。動物は山の中で過ごせるほうが、かれらにとってはハッピーなわけだから。

だけど獣害とばれたり、森がれてしまったりしている。その問題を解決させて、本来ほんらいいるべきところに動物がいるような、もとの状態にもどしたいですね。

仕事は遊びのように楽しいもの

ばん:
ここからは、「はたらく」と「お金」の関係かんけいについても聞いていきます。「働く」ということについてどう思いますか?

働くって、すごくおもしろいと思っています。僕は仕事が好きです。なので、仕事がつらいというのがしっくりこない。みんなもっと楽しめばいいのにな、と思います。

ケイティ:
「働くこと」のどんなところが楽しいですか?

理由りゆうはあまりないかもしれません。たのしいものは楽しいから。仕事だと、やりたくないことをやらなくちゃいけないこともあります。その中でもワクワクすることや、自分がやりたいことをなるべく大事にして仕事をすると、遊びと同じように楽しくなる。

仕事が楽しいと思うのは、「ゲームをやると楽しい」「おいしいものを食べてるときって幸せ」と思うのと同じですね。

遊びが楽しいように、仕事も楽しい!

アメリ:
「お金」についてはどう思いますか?

お金は大切だし、あればあるほどいい。でも極端きょくたんに言うと、お金はなくてもいいかなと思っているのね。「役に立ったから、そのおれいにお金をあげます」「やってもらった分のお金を払います」といったように、働いた結果けっかとしてお金がもらえます。

僕は「働く」が先にあって、「お金」はそこにくっついてくるものだというかんがえです。たまに「お金がしいから働いています」とくと、「本当にそれでいいのかな?」と思うことがあります。

もちろんお金は必要ひつようだし、それは悪いことではないと思う。ただ僕にとっては、楽しくてやりがいがあることをした結果、お金をもらえるのが一番いい形です。

ぜん:
お金を「かせぐ」ということについてはどう思いますか?

そうだなあ、「お金」について思うことと同じかもしれないね。

ケイティ:
給料きゅうりょうはどうやって決まるんですか?満足まんぞくしてますか?

実は、カリラボでは給料をもらっていないんです。

ぜん:
えー!

カリラボの仕事は、会員かいいんさんと一緒に狩りをしたり、横瀬町の獣害対策たいさくの力になったりすることです。それ自体が僕がやりたいことだし、お金をもらいたくてやっているわけじゃない。だから別に、お金はいらないかな。

実際じっさいは、カリラボを運営うんえいするために僕がお金をはらっています。ただ楽しくてハッピーだとしても、お金がもらえないと生活ができなくなってしまうので、会社員として働いてます。でも会社員の仕事も、お金を稼ぐためだけではなく、会社でもおもしろい仕事をやらせてもらっていますよ。

ばん:
お給料をもらえるとしたら、どれくらい欲しいですか?

難しいね。そうだな、カリラボで今の会社のお給料と同じくらいの金額きんがくが稼げるようになったら、サラリーマンはやめようかなと思っています。

ぜん:
吉田さんは何のために働いていますか?

働くこと自体が楽しいから。会社員ではおもしろい仕事をして、お金をもらえるからハッピーです。カリラボではお金はもらえないけれど、すごく楽しいのでハッピーです。

僕にとって仕事は、遊びと同じ感覚なんだと思います。みんなは、なぜ遊ぶのが好きなの?

ケイティ・アメリ・ばん:
楽しいから。

ぜん:
おもしろいから。

そうだよね。僕もそういう感覚です。仕事は、大人の遊びみたいなものかもしれないね。

アメリ:
吉田さんは、家族かぞくのため、自分のため、どっちのために働いていますか?

まず、自分のため。次に、家族のためかな。どちらかだけじゃ、だめだと思います。家族のために稼ぐことだけを考えていたら、僕は多分楽しくない。でも僕の楽しい気持ちだけだと、家族が食べていけなくなっちゃう。

僕のわがままかもしれないけれど、一番は自分のためですね。

ばん:
「働く」と「お金」の関係について思うことを教えてください。

かえしになってしまうかもしれないけれど、稼ぐために働くという考え方は、あまり長つづきしないような気がします。自分がやりたいことや、やるべきことを頭の中心に置いて、まずそれをやったほうがいいと思う。

やっていても何かがりなかったり、例えば生活ができなかったりするんだったら、やりながら稼げる方法を考える。自分がやりたいことを、あとまわしにしてほしくないですね。

「お金はどうでもいいです」と判断はんだんするのも違うんじゃないかな。仕事とお金は、バランスが大切。決して、稼ぐことを一番上にもってこないでほしい、とは思っています。

ケイティ:
最後さいごに、子どもたちへのメッセージをおねがいします!

これからみんなが大きくなって、仕事をえらぶことがあると思います。その時に、大切なことがたくさんあります。例えばお給料がいいのも、好きなことを仕事にするのも、とても大切なことのひとつだろうね。どれが自分にとって大切なのか、しっかり考えてほしいです。

僕が大切だと思うのは、自分がやりたいと思うことや、自分がやるべきだと思うことを選んでみる。一瞬いっしゅんでもやりたいと思ったのなら、ちょっとでもいいからやってみてほしい。

何か新しいことをやるときに、僕たちはやらない理由や、やれない理由をさがしてしまいます。でもそういうのは置いておいて、「どうやったらできるんだろう?」としっかり考えるくせをつけていくことが大切です。そうすれば、仕事も楽しくなっていきます。

好きだと上手になるし、上手になるともっといい仕事ができる。そうすると稼げるようになるだろうしね。そういうハッピーな循環じゅんかんをつくるためにも、考えすぎずに、いろんなことにチャレンジしてもらいたいです。

全員:
ありがとうございました!

こんなお話もしました

ぜん:
僕はこのあいだ横瀬よこぜまちに行きました。

そうなんだ!

ぜん:
そしたら、道路どうろでサルに出会ってびっくりしました。

そうだよね。いっぱいいた?一匹いっぴきだった?

ぜん:
一匹でした。吉田さんは実際に、横瀬町でどんな害獣がいじゅう被害ひがいにあいましたか?

小さなはたけをやっていたんだけど、野菜やさい結構けっこうやられましたね。何をえてもすぐ食べられちゃうから、どうしようかなと思っていました。あと、動物はうめさくらきで。木を植えたんだけど、毎年が出るたびにパクッって食べられて、えだがただのぼうのようになっていました(笑)。

ぜん:
せっかくそだてているのに、ひどいですね。

逆に言うと、動物が食べに来るわけだから、そこに罠を仕掛しかければつかまえることはできますけどね。

ばん:
山に入るために、吉田さんは体をきたえてますか?

本当は鍛えたほうがいいんです。でも山に入ることで体が鍛えられると信じて、あまりトレーニングをしていません(笑)。もともと山のぼりも、あるき回るのも好きなので、体力たいりょくはわりとあるとは思います。本当は、もっと筋力きんりょくをつけなくちゃいけないんだけどね。

ばん:
力がない人でも、猟師はできるんですか?

できるんだけど、狩りの内容にもよります。例えばさっきのまき狩りは、山のおくで獲物が獲れることがある。そこで100キロのイノシシが獲れたら、みんな1人で引きれていけないよね?(笑)

全員:
はい(笑)。

なので、それは力がないとできません。でも例えば、僕と取材班のみんな5人、6人で力を合わせたら、100キロでも動かせます。小動物相手や、箱罠を仕掛けるのは力がなくてもできる。自分ができる範囲はんいでやれることもあるし、力を合わせるともっといろんなことができるようになります。

僕は力がないほうなんだけど、体重たいじゅうが100キロをえているような、すごく大きな体の仲間もいます。僕はITをやるし、力が必要なことや解体かいたいはその人がやる。みんなで協力きょうりょくして得意とくいなことを持ちって、狩りができるんだよ。

ITハンターってどんな仕事?

・罠や銃を使って狩りをする

・ITと結びつけて、狩りをしやすくする

・狩りをやりたい人と、やってほしい人や場所を結びつける

・地元の猟師さんたちの狩りに、参加できるようにする

・ハンターになるために必要な情報や保険を提供する

・ジビエ肉をみんなに楽しんでもらう

・狩りを通して地域の害獣被害を減らし、地域の力になる

ITハンターの魅力

・狩りがおもしろい

・地域の力になれる

・日本全体の大きな課題の解決につながる

・外で仕事をするのが気持ちいい

・普段の生活とは離れた体験ができる

・ITと掛け合わせて、あたらしい狩りを生み出すことができる

大変なこと

・自然が相手なので、全然思い通りにならないことがある

・自然環境や急な変化に影響される

・コントロールできないものが多い

・危険な思いをすることがある

・銃の取り扱い

「働く」と「お金」の関係について

・働くことは、すごくおもしろい

・ワクワクすることや、自分がやりたいことをなるべく大事に仕事をすると、遊びと同じように楽しくなる

・「働く」が先にあって、「お金」はそこにくっついてくるもの

・楽しくてやりがいがあることをした結果、お金をもらえるのがしあわせ

・「稼ぐために働く」という考え方は、あまり長続きしない

・仕事とお金のバランスが大切

吉田さんが思う大切なこと

・日本全体の課題解決や、困ってる人への手助けをする

・知らないことを知ろうとする

・生き物の命を奪う以上は覚悟をして、そのための準備をしたり、勉強したりする義務や責任が必要

・お肉は大切に食べる

・楽しく仕事をする

・自分にとって大切なことは何なのか、しっかり考える

・やりたいと思えることや、やるべきだと思えることをやってみる

・いろんなことにチャレンジをする

【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、ばん、アメリ、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO