今回のお相手:吉田 隼介さん
IT企業に勤めながら、「カリラボ」という狩りの会社をやっているハンター。東京と埼玉県横瀬町の2か所に住みながら活動している。動物からの被害を減らし、地域の力になることを目指している。ITの力を使って、より狩りがしやすくなるように考え中。大学生と高校生の子どもがいるパパ。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.10 ばん:
バスケのドリブル練習・二重とびをがんばっている。誕生日にレストランに行ったこと、大繩でみんなで目標達成したことが嬉しかった。
No.11 アメリ:
漢字の勉強を頑張っている。公園で新しい友達をつくったこと、モデルの仕事が来たことが嬉しかった。
No.15 ぜん:
勉強や友だちと遊ぶ工夫を考えることを頑張っている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。
誰でもなれるようでなれない「猟師」という職業
アメリ:
どうやったら猟師になれるんですか?
やる気があれば誰でもなれるけれど、狩猟免許という狩りをするための免許が必要です。狩猟免許は、18歳以上じゃないと取れません。18歳になって、都道府県に試験の申し込みをして、試験に受かったら狩りができるようになる。
今、狩猟免許はすごく人気があって、申し込んでも抽選で当たった人だけが試験を受けることができます。全国的に猟師が足りなくなっているので、僕は人数を制限しないでほしいと思っているんですが。今の決まりでは、1年間に試験を受けられる人数が決まっています。
アメリ:
狩りをするのに、他にはどんな資格が必要ですか?
さっき言った狩猟免許以外にも、どういう猟をするかによって、必要な免許があります。罠や銃など、それぞれを使うための資格を取らなくちゃいけない。
銃の場合だけは特別で、狩りをするときに「銃を使っていい」という資格と、銃は危ないので「銃を持っていい」という2つの資格が必要。猟銃っていうと「狩猟用の鉄砲なのかな?」と思うかもしれないけれど、テレビで見るような普通の銃と変わらないんだよ。
銃は使い方を間違えると本当に危険だし、きちんと管理できる人に持たせるべきです。だから銃は、資格を持つ人だけが使えるようになっています。
狩りをするには資格が必要
ケイティ:
吉田さんは銃を使ってるんですか?
使っているよ。危ないので、ガンロッカーという、しっかり鍵がかかって外から壊せないロッカーが家にあります。僕だけが開けられるようにして、厳重に管理しています。僕の奥さんですら、ロッカーは開けられません。
厳重=いいかげんにしないで、厳しくすること
ばん:
資格はすぐに取れるんですか?
狩りをする資格は1日で取れます。
ケイティ・ぜん:
えーっ!
ただ、もちろん勉強はしますよ(笑)。勉強して、試験会場に行って試験を受けて、合格したら資格は取れます。
でも銃の免許は、取るまでがすごく大変。「銃の免許を取ります」と警察に届け出たら、どんな人なのかを警察に調べられます。
身辺調査といって、警察が家族や会社、友達などに電話して、「吉田さんってどんな人ですか?」「夫婦げんかで夜に大声を出していませんか?」「近所でトラブルを起こしていませんか?」というようなことを聞かれます。
ぜん:
そんな細かいところまで言われるんだ。
そう。そして何ヶ月も審査される。それに銃なので、実際に使いこなせないと意味がありません。銃の使い方の訓練や知識のテストを受けて、それを全部クリアして初めて銃が持てるようになります。
でも銃は使い方によっては怖いものになるから、そのほうがいいよね。
ばん:
資格を取るのは難しいんですか?
ううん、そんなに難しくはありません。これが教科書です。
ぜん:
分厚い!
アメリ:
なんか学校の教科書みたい。
学校の教科書や資料集みたいだよね。この本には、例えば、どういう場所で銃を使っていいのかが書いてあります。あと、何でもかんでも動物を獲っていいわけじゃない。なのでどういう動物なら獲っていいのかも、当然覚えなくてはいけません。
日本の大型の野生動物は、クマとイノシシとシカしかいないから覚えやすいです。難しいのは鳥ですね。カモって、全部同じように見えるでしょう? でも獲っていいカモと、そうでないカモがいるんです。
獲っていい動物たちも覚えなくてはいけない
ぜん:
ややこしい……。
そうだね。でもこうやって細かいところも覚えていれば、狩りの資格は簡単に取れます。
アメリ:
わからないことがあったら、メモもしてるんですか?
いっぱいしているよ。ほら、ちゃんと勉強してるでしょ?(笑)
ばん:
銃を撃つ練習は、どこでやるんですか?
射撃場に行って、銃の練習をします。射撃場は、だいたい山の中のような、街から離れたところにあります。
バンバン大きい音がしても大丈夫だし、広い敷地で、弾が絶対外に出ないようになっているよ。
射撃場=銃の練習をする場所
ケイティ:
銃を持つことは、怖くないですか?
怖いですね。銃を持つと「わあ、銃だ!すごい!」と思うんだろうなと想像していました。でも実際は怖くて。仕事をするうえで持っていないといけないんだけど、もしこの仕事をやっていなかったら、早く銃を返したいですね。
ちゃんと銃の管理ができていなかったら、盗まれる怖さもある。あと単純に、扱いを間違えると普通にバンッ!と弾が出てしまうこともある。
今までそういうことがあったわけじゃないけれど、緊張はします。
ぜん:
なるほど。
なかには銃に憧れていて、持っているだけで「興奮します!」という人もいます。たしかにドラマや映画を見ていると、銃にちょっと憧れない?
ケイティ:
刑事ドラマとか?
ぜん:
ちょっと憧れるけど……。
しかも猟銃って、散弾銃といってボリューム感もあるからね。かっこいいと思う人も多いね。
若者の力が地域の助けになる
お年寄りと協力しながら、若い人たちが地域を助けていく
アメリ:
この職業の魅力と、大変だと思うことはなんですか?
魅力は、まず狩り自体がおもしろいこと。あと自分たちの行動が、日本全体の大きな課題の解決につながること。
他にも、山の中で何もしないでボーッとするって、なんかおもしろいんだよね。「何がおもしろいの?」って言われると困るんだけど(笑)。外で仕事をするのは、気持ちいいんですよ。
今まで気にしなかったような音が聞こえることもあるし、空気も全然違います。山にいると、日本全体や自然、動物のことを考えます。普段の生活とはちょっと離れた体験の連続なので、それがまず楽しいかな。
みんなは1人で山に入ると危ないから、大人と一緒に行ってくださいね。
課題=解決しなくてはならない問題
全員:
はい。
大変だと思うことは、自然が相手なので、全然思いどおりにならないこともあります。例えば、カリラボを始める前の2019年の8月から、山の中にカメラを仕掛けたり、カメラの場所を調整したりしました。
いざ10月になってカリラボを始めたんですが、その後大きな台風が来たんです。木も倒れるし、川の形が変わるし、カメラは流されるし、山の景色も変わっちゃうし。何台ものカメラが壊れました。
あとはイベントをやろうとしていたのに、新型コロナウィルスの影響で集まれなくなった。自然環境や急な変化に影響される仕事なので、コントロールできないものが多いことが大変ですね。
ぜん:
猟師が少ないことの他に、地域の猟師さんたちは、今どんなことに困っていますか?
若い人がなかなか狩りをしないから、猟師の集まりである猟友会のメンバーは、みんなおじいちゃんたちなんだよね。僕も猟友会のメンバーなんですが、おじいちゃんたちからすれば若いので、まだまだ子どもみたいなものです。
お年寄りなので体を壊す人もいるし、「もうこれ以上は怖いから、銃を返そうと思う」と言って引退する人もいます。そもそも狩りをする人数が少ないのに、さらに減り始めているのが一番大きいです。
だからこそカリラボで若い会員さんを連れて行くと、猟友会のみんなにとても喜ばれます。おじいちゃんだと山を登るのも、山の中で獲れた獲物を持ち出すのも、解体するのも大変。そういうのを若い人がやってくれると嬉しい、という声はよく聞きますね。
ケイティ:
天気が悪い日にも、狩りをするんですか?
基本はしません。小雨だったらいいんですが、雨が降ると動物も雨宿りをします。木の陰でじっとしている。じっとしている動物を探すほど、難しいことはないんです。あと寒いしね。
ケイティ:
寒い?
狩りは、基本冬にやるものなんです。地域にもよるけれど、だいたい11月から2月ぐらいまでの間に狩りをすると法律で決まっています。なのですごく寒いです。
狩りは細かいことがたくさん決まっている
ばん:
なんで夏にはやらないんですか?
うーん……実はわからないんです。昔から、狩りは冬にするものと決まっていて。冬は農業があまりできないから、食料を得るために猟をやっていたんじゃないか、とか。あとは冬ごもりする前に、動物はお腹に脂を蓄えます。その時期は動物のお肉がおいしいから、という話もある。
カモの場合は、10月ぐらいに日本に渡ってきます。冬を過ごして春になると、またシベリアといった寒い地域に帰っていくので、それに合わせているという話もあります。
蓄える=ためておくこと
ケイティ:
けど、クマは冬眠する生き物なのに?
いい質問だね。実は、冬眠中のクマを獲る猟もあります。冬眠する直前のクマは、太っています。だから、たくさんのお肉や脂がついている。
全員:
え?どうやって冬眠中のクマを獲るんですか?
穴に入って獲るんだよ。または、煙で脅かしてわざと穴から出して、クマが出てきた瞬間を仕留めることもある。でも、かなり危険な猟です。ケイティちゃんが不思議に思うのもわかる。
アメリ:
私は、春とか秋に狩りをすると思っていたなあ。
そう思うよね。ジビエ肉は春がおいしいといわれています。山に動物の食べ物がいっぱい出て来る頃です。
秋は秋で、動物が太るからお肉がおいしい。アメリちゃんが言ってくれた春や秋は、たしかにジビエ肉がおいしい季節です。でも法律で、冬しか狩りをしたらだめなんだよね。
ぜん:
法律で決まってるなら仕方ないのか。
狩りには2種類あります。ひとつは、「狩猟」といって、冬に趣味でやる狩り。もうひとつは、時期に関係なく「有害鳥獣駆除」という、悪さをする動物を獲る狩り。こちらは一年中できます。
「有害鳥獣駆除」は、特別な資格を持っている人しかできなくて、カリラボはその資格を持っています。だからやろうと思えばできるけど、カリラボは狩猟をする会社なので、有害鳥獣駆除の目的では狩りをしていません。
飛び込んでみて初めてわかることがある
アメリ:
生まれ変わっても、またこの仕事をやりたいですか?
気持ちは半々です。大変だというのもありますしね。ハンターの仕事は、日本全体の課題解決や、困ってる人への手助けになれるだろうと信じてやっています。でもまだ始めたばかりで、本当にこれが答えなのかはわかっていません。
答えがもう少し見えてきたら、「生まれ変わっても絶対やりたいです」と自信を持って言いたいです。
吉田さんが狩りをする時に着る服
ケイティ:
ハンターのお仕事は、今の子どもにもおすすめできますか?
すごくおすすめです。さっき言ったような日常とは違う経験は、みんなどんどんしたほうがいいと思います。日本全体や地域で起きていることって、飛び込んでみないとわからない。知らないことを知ろうとするのは大切です。
特に子どものうちにそういう体験をしたほうが、将来への影響も大きいだろうからおすすめします。
日常=毎日の生活
ばん:
学校の勉強でも、カリラボで役に立つことはありますか?
例えばさっきの生態系の話は、学校の勉強でいうと理科や生物にあたります。それから、狩りは法律の勉強にもつながる。あと「日本で起きている問題には、どういう原因や解決策があるんだろう?」というような、脳を使うトレーニングにもなります。
これは、いろんなビジネスにも共通することかもしれないですね。学校の勉強は、間違いなく役に立つと思いますよ。
法律=国の決まり
ぜん:
僕は『なめとこ山の熊』という本を読みました。猟師さんの「熊、本当はお前を殺したくなかった」という言葉が心に残りました。吉田さんは狩りをした生き物に対して、どんなことを思っているのか教えてください。
宮沢賢治の作品だよね?
宮沢賢治=岩手県出身の詩人・作家
ぜん:
はい。
一番最初に獲った獲物のことは忘れられません。アライグマでした。アライグマが小さな箱罠に入ったんですが、怪我もしていない元気な状態でした。そういう時は「止め刺し」といって、すぐにとどめを刺さなくてはいけません。
でも初めての経験で、安らかになるまでに時間がかかってしまって、上手にできませんでした。なるべく苦しまないように、と頭ではわかっていたのに。
うまくとどめを刺せなかったことに対して、すごく反省しました。狩りをすると決めた時点で、生き物を殺すことに対して決心をしていたはずでした。決心をしたのであれば、準備や勉強をする義務や責任を、もっともっとちゃんと考えなければいけませんでした。
今では、「獲物はジビエのお肉にして食べる」「被害を止めるために仕留める」と決めた時点で、生き物の命を取ることへの決心をしています。大事にする、ちゃんと食べるというのは大切だと思うけれど、後悔や迷いみたいなものはあまりないかな。
アメリ:
これからやっていきたいことは何ですか?
いくつかあります。まず、僕らがいる町で計画を進めているんですが、ジビエ肉をつくる「解体場」という施設をつくろうとしています。解体場があれば、お肉をお店に出したり、売ったりすることができます。
あと、今は横瀬町という小さな町でしかやっていないんだけれど、この仕組みをどんどん広げていきたい。同じような課題を持ってる町はとても多いんです。日本全国の困っているところでこの仕組みができれば、もしかしたら日本の害獣被害が解決するかもしれません。
みんなの食卓にジビエ肉が当たり前に並ぶのもいいですね。「今日はシカにする?それとも鶏にする?」のように、普段の生活や会話の中でジビエ肉が出てくるといいな。
ジビエ肉で、食事がもっと楽しくなる
ケイティ:
吉田さんがつくっている仕組みを他の地域で広げるために、ITのスキルは活かせますか?
活かせます。今、日本ではどれくらい動物の被害が起きているのか、みんな把握ができていません。バラバラに集めたデータから、被害を予想するだけになっている。例えば猟師からの報告を全部IT化したり、データを1ヵ所に集めたりできるようになると、正しいデータが得られて、もっと解決しやすくなると思います。
今は狩りの期間が終わったら、猟師が「今年は何頭獲りました」と紙に書いて出すんだよ。その数が全国から集まってきて、「今年は日本で何十万頭獲りました」と合計が出る。
でも例えば、今ここにいるメンバーでシカを一頭獲ったとします。全員が「シカを一頭獲りました」と紙に書いて出すと、一頭しか獲れてないのに、五頭のシカを獲った報告になってしまうよね。
そういうのも、実は問題のひとつ。解決のためには、カリラボがどんどん入り込んでいかなくちゃいけない。今とは違った形で、さらにITが活用できるようになると思っています。
把握=しっかりとわかること
ぜん:
森や生き物について、今後取り組んでいきたいと思っていることはありますか?
難しい質問だね。
動物が町に出てきて、「獣害だ」と言われるのは、あまりよくないと思います。人間が勝手に、そのように言ってる状態を早くなくしたい。動物は山の中で過ごせるほうが、彼らにとってはハッピーなわけだから。
だけど獣害と呼ばれたり、森が荒れてしまったりしている。その問題を解決させて、本来いるべきところに動物がいるような、もとの状態に戻したいですね。
仕事は遊びのように楽しいもの
ばん:
ここからは、「働く」と「お金」の関係についても聞いていきます。「働く」ということについてどう思いますか?
働くって、すごくおもしろいと思っています。僕は仕事が好きです。なので、仕事がつらいというのがしっくりこない。みんなもっと楽しめばいいのにな、と思います。
ケイティ:
「働くこと」のどんなところが楽しいですか?
理由はあまりないかもしれません。楽しいものは楽しいから。仕事だと、やりたくないことをやらなくちゃいけないこともあります。その中でもワクワクすることや、自分がやりたいことをなるべく大事にして仕事をすると、遊びと同じように楽しくなる。
仕事が楽しいと思うのは、「ゲームをやると楽しい」「おいしいものを食べてるときって幸せ」と思うのと同じですね。
遊びが楽しいように、仕事も楽しい!
アメリ:
「お金」についてはどう思いますか?
お金は大切だし、あればあるほどいい。でも極端に言うと、お金はなくてもいいかなと思っているのね。「役に立ったから、そのお礼にお金をあげます」「やってもらった分のお金を払います」といったように、働いた結果としてお金がもらえます。
僕は「働く」が先にあって、「お金」はそこにくっついてくるものだという考えです。たまに「お金が欲しいから働いています」と聞くと、「本当にそれでいいのかな?」と思うことがあります。
もちろんお金は必要だし、それは悪いことではないと思う。ただ僕にとっては、楽しくてやりがいがあることをした結果、お金をもらえるのが一番いい形です。
ぜん:
お金を「稼ぐ」ということについてはどう思いますか?
そうだなあ、「お金」について思うことと同じかもしれないね。
ケイティ:
お給料はどうやって決まるんですか?満足してますか?
実は、カリラボでは給料をもらっていないんです。
ぜん:
えー!
カリラボの仕事は、会員さんと一緒に狩りをしたり、横瀬町の獣害対策の力になったりすることです。それ自体が僕がやりたいことだし、お金をもらいたくてやっているわけじゃない。だから別に、お金はいらないかな。
実際は、カリラボを運営するために僕がお金を払っています。ただ楽しくてハッピーだとしても、お金がもらえないと生活ができなくなってしまうので、会社員として働いてます。でも会社員の仕事も、お金を稼ぐためだけではなく、会社でもおもしろい仕事をやらせてもらっていますよ。
ばん:
お給料をもらえるとしたら、どれくらい欲しいですか?
難しいね。そうだな、カリラボで今の会社のお給料と同じくらいの金額が稼げるようになったら、サラリーマンはやめようかなと思っています。
ぜん:
吉田さんは何のために働いていますか?
働くこと自体が楽しいから。会社員ではおもしろい仕事をして、お金をもらえるからハッピーです。カリラボではお金はもらえないけれど、すごく楽しいのでハッピーです。
僕にとって仕事は、遊びと同じ感覚なんだと思います。みんなは、なぜ遊ぶのが好きなの?
ケイティ・アメリ・ばん:
楽しいから。
ぜん:
おもしろいから。
そうだよね。僕もそういう感覚です。仕事は、大人の遊びみたいなものかもしれないね。
アメリ:
吉田さんは、家族のため、自分のため、どっちのために働いていますか?
まず、自分のため。次に、家族のためかな。どちらかだけじゃ、だめだと思います。家族のために稼ぐことだけを考えていたら、僕は多分楽しくない。でも僕の楽しい気持ちだけだと、家族が食べていけなくなっちゃう。
僕のわがままかもしれないけれど、一番は自分のためですね。
ばん:
「働く」と「お金」の関係について思うことを教えてください。
繰り返しになってしまうかもしれないけれど、稼ぐために働くという考え方は、あまり長続きしないような気がします。自分がやりたいことや、やるべきことを頭の中心に置いて、まずそれをやったほうがいいと思う。
やっていても何かが足りなかったり、例えば生活ができなかったりするんだったら、やりながら稼げる方法を考える。自分がやりたいことを、後回しにしてほしくないですね。
「お金はどうでもいいです」と判断するのも違うんじゃないかな。仕事とお金は、バランスが大切。決して、稼ぐことを一番上にもってこないでほしい、とは思っています。
ケイティ:
最後に、子どもたちへのメッセージをお願いします!
これからみんなが大きくなって、仕事を選ぶことがあると思います。その時に、大切なことがたくさんあります。例えばお給料がいいのも、好きなことを仕事にするのも、とても大切なことのひとつだろうね。どれが自分にとって大切なのか、しっかり考えてほしいです。
僕が大切だと思うのは、自分がやりたいと思うことや、自分がやるべきだと思うことを選んでみる。一瞬でもやりたいと思ったのなら、ちょっとでもいいからやってみてほしい。
何か新しいことをやるときに、僕たちはやらない理由や、やれない理由を探してしまいます。でもそういうのは置いておいて、「どうやったらできるんだろう?」としっかり考える癖をつけていくことが大切です。そうすれば、仕事も楽しくなっていきます。
好きだと上手になるし、上手になるともっといい仕事ができる。そうすると稼げるようになるだろうしね。そういうハッピーな循環をつくるためにも、考えすぎずに、いろんなことにチャレンジしてもらいたいです。
全員:
ありがとうございました!
こんなお話もしました
ぜん:
僕はこの間、横瀬町に行きました。
そうなんだ!
ぜん:
そしたら、道路でサルに出会ってびっくりしました。
そうだよね。いっぱいいた?一匹だった?
ぜん:
一匹でした。吉田さんは実際に、横瀬町でどんな害獣被害にあいましたか?
小さな畑をやっていたんだけど、野菜は結構やられましたね。何を植えてもすぐ食べられちゃうから、どうしようかなと思っていました。あと、動物は梅や桜も好きで。木を植えたんだけど、毎年芽が出るたびにパクッって食べられて、枝がただの棒のようになっていました(笑)。
ぜん:
せっかく育てているのに、ひどいですね。
逆に言うと、動物が食べに来るわけだから、そこに罠を仕掛ければつかまえることはできますけどね。
ばん:
山に入るために、吉田さんは体を鍛えてますか?
本当は鍛えたほうがいいんです。でも山に入ることで体が鍛えられると信じて、あまりトレーニングをしていません(笑)。もともと山登りも、歩き回るのも好きなので、体力はわりとあるとは思います。本当は、もっと筋力をつけなくちゃいけないんだけどね。
ばん:
力がない人でも、猟師はできるんですか?
できるんだけど、狩りの内容にもよります。例えばさっきの巻狩りは、山の奥で獲物が獲れることがある。そこで100キロのイノシシが獲れたら、みんな1人で引き連れていけないよね?(笑)
全員:
はい(笑)。
なので、それは力がないとできません。でも例えば、僕と取材班のみんな5人、6人で力を合わせたら、100キロでも動かせます。小動物相手や、箱罠を仕掛けるのは力がなくてもできる。自分ができる範囲でやれることもあるし、力を合わせるともっといろんなことができるようになります。
僕は力がないほうなんだけど、体重が100キロを超えているような、すごく大きな体の仲間もいます。僕はITをやるし、力が必要なことや解体はその人がやる。みんなで協力して得意なことを持ち寄って、狩りができるんだよ。
ITハンターってどんな仕事?
・罠や銃を使って狩りをする
・ITと結びつけて、狩りをしやすくする
・狩りをやりたい人と、やってほしい人や場所を結びつける
・地元の猟師さんたちの狩りに、参加できるようにする
・ハンターになるために必要な情報や保険を提供する
・ジビエ肉をみんなに楽しんでもらう
・狩りを通して地域の害獣被害を減らし、地域の力になる
ITハンターの魅力
・狩りがおもしろい
・地域の力になれる
・日本全体の大きな課題の解決につながる
・外で仕事をするのが気持ちいい
・普段の生活とは離れた体験ができる
・ITと掛け合わせて、あたらしい狩りを生み出すことができる
大変なこと
・自然が相手なので、全然思い通りにならないことがある
・自然環境や急な変化に影響される
・コントロールできないものが多い
・危険な思いをすることがある
・銃の取り扱い
「働く」と「お金」の関係について
・働くことは、すごくおもしろい
・ワクワクすることや、自分がやりたいことをなるべく大事に仕事をすると、遊びと同じように楽しくなる
・「働く」が先にあって、「お金」はそこにくっついてくるもの
・楽しくてやりがいがあることをした結果、お金をもらえるのがしあわせ
・「稼ぐために働く」という考え方は、あまり長続きしない
・仕事とお金のバランスが大切
吉田さんが思う大切なこと
・日本全体の課題解決や、困ってる人への手助けをする
・知らないことを知ろうとする
・生き物の命を奪う以上は覚悟をして、そのための準備をしたり、勉強したりする義務や責任が必要
・お肉は大切に食べる
・楽しく仕事をする
・自分にとって大切なことは何なのか、しっかり考える
・やりたいと思えることや、やるべきだと思えることをやってみる
・いろんなことにチャレンジをする
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、ばん、アメリ、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO