今回のお相手:福原 永斗さん
東京都北区赤羽にある、「AERU COFFEE STOP」というコーヒーショップのバリスタ。店主でもある。オーストラリアでコーヒーについて学び、バリスタとして働き始めた。子どものころは野球少年だった。人と話すことや挑戦することが好きで、コーヒーだけではなくデザインの仕事にも力を入れている。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.9 わー:
にわとりの世話を頑張っている。書道の級が上がったことが嬉しかった。
No.15 ぜん:
勉強や友だちと遊ぶ工夫を考えることを頑張っている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。
生活をするためにお金を稼ぐ仕事のことを「生業」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。
今回のゲストは福原永斗さん。バリスタです。バリスタって、いったいどんなお仕事なのでしょう?
ケイティ・わー・ぜん:
よろしくお願いします。
福原さん:
よろしくお願いします。
両親の背中を見て育った子ども時代
ケイティ:
子どもの頃、どんな大人になりたいと思っていましたか?
僕のお父さんとお母さんは2人とも美容師で、自分の家が美容室だったんです。ちょっとイメージが難しいかもしれないけど、仕事が終わったら美容室を片付けて、部屋として使っていました。
ケイティ:
えー!そうなんですね!
学校から帰ってきたら、家で両親がお客さんの髪を切っていました。そんな環境で育ったから、美容師になりたいと思ったこともありました。両親みたいに、「お客さんを相手にする仕事に就くんだろうなぁ」と思ったのは覚えています。子どもの時に一番強く残っている記憶はそれかな。
ぜん:
憧れていた人はいますか?
両親の働く姿を見て育ってきたので、両親に憧れていました。2人みたいに、楽しそうに仕事をしている大人になりたいと思っていました。
ケイティ:
事前アンケートに「イチロー選手に憧れていた」って書いてあったんですが、どんなところに憧れてましたか?
僕は中学校の3年間、野球部に入っていました。その頃日本で一番有名なプロ野球選手といえば、イチロー選手だったのね。ちょうど彼が海外に行って野球をやってたくらいの時だったと思うんだけど。日本人の選手が、海外に行っても活躍をしていました。
僕も野球をやっていたし、イチロー選手になりたいとまではいわないけど、すごいなと思っていました。
イチロー=元オリックスブルーウェーブ(現オリックスバファローズ)&メジャーリーガーのイチロー選手のこと
わー:
職業名は何ですか?
バリスタです。今、zoomの背景になってるのが僕が経営してるお店です。飲食店の経営者でもありながら、バリスタとして働いています。みんなバリスタって聞いたことはある?
経営=会社などの目的を達成するため、計画したり実行したりして進めていくこと
わー:
はい。
ぜん:
うーん、聞いたことがありません。
バリスタは、コーヒーをおいしく淹れて、お客さんに提供する仕事をしている人のこと。スターバックスには行ったことがあるかな?
提供=相手に差し出すこと
わー:
はい。
イメージしやすく言うと、スターバックスでエプロンを付けて、接客して、コーヒーを淹れている人がバリスタです。それを僕も自分のお店でやっています。
接客=お客さんの対応をすること
東京都北区にある、福原さんのお店「AERU COFFEE STOP」
コーヒーを淹れるだけがバリスタじゃない
ぜん:
お客さんにおいしいコーヒーを淹れるには、どんな工夫が必要なんですか?
商品をお客さんに提供する時は、その商品のことをよく知ってないと、おいしいもの、いいものは提供できない。
コーヒーをよく知らない人が適当にコーヒーをいれても、おいしくなくなっちゃう。おいしいコーヒーを提供するためには、コーヒーについてよく知ることが必要だと思います。
ぜん:
福原さんは、これまでにどのくらいの種類のコーヒーを飲みましたか?
ものすごく多い!数え切れないかもしれない。何百種類も飲んでいると思うな。
ぜん:
ひえー!
ケイティ:
ええー!
実はコーヒーは、細かく分けるといろんな種類があります。例えば、エチオピアっていう国を聞いたことがあるかな?
ぜん:
はい、あります。
エチオピアはアフリカにあるんですが、おいしいコーヒー豆が採れる、世界でも有名な国です。そのエチオピアの中でも、収穫する場所によって種類が違う。それにコーヒーはエチオピアだけではなく、いろんな国の、いろんな場所で収穫されています。だからそれぞれを一種類と数えたら、コーヒーってものすごくたくさんの種類があるのね。
僕が飲んだだけでも、百種類は超えてると思いますよ。
収穫=育った作物を採ること
ぜん:
日本でも飲めるんですか?
飲めますよ。日本には、いろんなコーヒーがありますよね。缶コーヒーや、さっき言ったスターバックスみたいにたくさん店舗があるカフェのコーヒー。それに僕がやってるような、小さな個人のお店が出しているコーヒーもある。
いろんなところでいろんな種類のコーヒーを提供してるので、日本でも飲むことができます。
個人=この場合は、自分でお店をやっている人
世の中には数えきれないほどの種類のコーヒーがある
わー:
事前アンケートに、「お客さんとお話しをするのもバリスタの仕事」と書いてあったんですけど、どんな話をするんですか?
お客さんとはいろんな話をしますね。それができない人は、バリスタはできないと思う。
わー:
そうなんですか?
コーヒーをおいしく淹れるだけでは、バリスタはできません。大学生くらいの若い人から、70歳くらいのおじいちゃんおばあちゃんまで、幅広い年齢の人がお店に来てくれます。その人たちと会話のきっかけを探して、コーヒーを提供したり、お客さんがコーヒーを飲んでいたりする間に、いろんな会話をする必要がある。
自分の話だけしてもいけないし、お客さんから話を引き出すことが大事です。なんとなくわかるかな?
全員:
はい。
お客さんの話に対してリアクションができないと、バリスタをするのは難しいと思う。お店によっては、会話はなしで、コーヒーだけ淹れているバリスタももちろんいるんだけど。お客さんと距離が近いお店のバリスタは、お喋りする能力も必要ですね。
リアクション=反応
いつも笑顔で接客している
ぜん:
福原さんは、子どもの頃から人と話すのが好きな子だったんですか?
どうだろう……好きだったかもしれないな。家が美容室だったから、お客さんとあいさつやお話をする機会がありました。そんな風に、自然と誰かとお喋りしてコミュニケーションを取ることは多かったですね。お喋りが好きだった記憶はないけれど、苦手意識は全くありませんでした。
ぜん:
僕もお喋りがとても好きです。
そうだ、ぜん君はコーヒーも好きなんでしょう?
(ぜんが将来生業にしたい職業は、おいしいコーヒー屋さんです)
ぜん:
はい!でも、まだコーヒーは飲めません。淹れてあげるだけです。
ああ、そうなんだ。家族に淹れてあげてるの?
ぜん:
はい。
えらいじゃん。すごいね。バリスタに向いてるかもね。
ぜん:
ありがとうございます。
メルボルンで学んだコーヒー
ケイティ:
福原さんは、なぜその仕事をしようと思ったんですか?
きっかけは……僕、海外に2年間留学した経験があるのね。
全員:
えー!
25歳くらいの時から2年間留学していました。まずはカナダに1年間住んで、その次にオーストラリアに1年間。オーストラリアではコーヒーの仕事をしました。オーストラリアって、カフェが有名なんですよ。東京のコンビニくらい、たくさんカフェがある。どのカフェも、お客さんがいっぱい入っていてすごく忙しいんです。
ケイティ:
ええー、そんなに。
世界的に見ても、オーストラリアはカフェ文化が盛んで、おいしいコーヒーが街に溢れています。カフェ文化が盛んだと、コーヒーの文化も盛んです。
僕はメルボルンという街に、1年間コーヒーの勉強をしに行きました。そこで実際にバリスタになることができて、働いてみたら、すごく自分に合っているなと思いました。
コーヒーを淹れられるのは楽しかったし、自分が淹れたコーヒーをお客さんが「おいしい」と言ってくれたときは、嬉しかったです。コーヒーを淹れて、お客さんが飲んでいる時に会話をするんだけど、それもすごく楽しいなと思って。
自分に向いているのかもと思い、この仕事を始めて、もう7年くらい続けています。やっぱりバリスタという職業が自分に合ってたんだろうね。
文化=人々が社会の中でつくりあげてきた、ものごとや考え方など
メルボルンで出会ったバリスタの仕事
ケイティ:
じゃあカナダでは何をしてたんですか?
カナダでは、コーヒーを淹れたことはなかったんです。海外で生活してみたいという、それだけの理由で行ったから、何の目的もありませんでした。カナダではシェフとして料理を作っていましたよ。
ケイティ:
え!すごい。
海外でも日本食が食べられるレストランがあるんだけど、最初は全然英語が話せなかったから、日本人がいるところじゃないと働けませんでした。英語が話せないと、海外で仕事するのは難しいんです。日本食が食べられるレストランに行けば、日本人がいるから働けると思いました。
ケイティ:
もともと料理は作れるんですか?
一人暮らしをしていた期間が長くて、よく料理を作っていました。上手ではなかったけど、包丁を使ったり、フライパンを使ったりはできたかな。カナダで働きながら料理を教えてもらって、ちょっとずつ上手になっていきました。
わー:
福原さんは、なぜコーヒーが好きになったんですか?
20歳を超えてから、缶コーヒーを飲むようになりました。もちろんスターバックスなどのカフェのコーヒーも飲んでいたから何となく好きでしたね。コーヒーって、なんかカッコいいじゃない?大人の飲み物みたいな感じで。
ぜん:
かっこいい!
最初はかっこつけて飲んでいたんだけど(笑)。だんだん好きになっていきました。そこから「もっとおいしいコーヒーはないのかな?」と思って、いろんなお店に行くようになりました。
わー:
バリスタには、どうやったらなれるんですか?
コーヒーを提供しているお店で働いて、コーヒーが淹れられるようになったら、バリスタになれます。
わー:
そうなんですね!
例えば学校の先生になろうと思ったら、大学に通って、資格を取らないと先生になれない。警察官になりたいと思ったら、警察官になる学校に行って、資格を取らないと警察官になれない。
でもバリスタは、資格がないとなれないわけではありません。お店で働いて、そこでコーヒーを淹れられるようになって、お客さんに提供できるようになったらもう、バリスタなんです。だからね、他の仕事と比べると、なるのは簡単だと思います。
もちろん、知識と技術は必要ですけどね。
バリスタには知識と技術が必要
ぜん:
誰が一番のバリスタかを決めるのって、難しいですか?
そうだね。それはすごく難しいと思う。ただバリスタの大会は、日本にも世界にもあります。その大会に挑戦してチャンピオンになったら、一番にはなれる。日本人でバリスタの世界チャンピオンは、今までに2人くらいいるんですよ。
ぜん:
2人も!
けど、その大会に出るにはすごくお金もかかるし、時間も必要です。あとは自分の技術を高めないといけないから、かなり大変な世界なんだけどね。もし一番になりたいと思ったら、そういう大会で優勝するしかないかな。
ぜん:
難しそう。
そう、難しいと思う。
ぜん:
どうやって一位を決めるんですか?
コーヒーの味や、淹れる仕草を見る審査員が10人くらいいます。約10分間、自分が持ってきたコーヒーを「これはこういうコーヒーです」「こうやって淹れるからおいしいんですよ」と説明をしながら、審査員の目の前で淹れます。
だから、ものすごく緊張すると思います。審査員にコーヒーを提供して、審査員が実際に味をみて、淹れる仕草にも点数をつける。一番点数が高かった人が、一位になれるわけです。とても大変だよ。
仕草=動きや態度
ぜん:
うーん、なれるかどうか、わからないなあ……。
日本で一番、世界で一番になりたかったら、そういう大会に出場するのが一番の近道ですね。
おいしいコーヒーを淹れるために、いまでも勉強中
ケイティ:
コーヒーを淹れるには知識と技術が必要と言っていましたが、どんな知識と技術が必要ですか?
コーヒーは、歴史が長いんです。大昔から飲まれてる飲み物だから、歴史も知っていなきゃいけない。そして今目の前にあるコーヒーが、どの国のどの場所で、どんな人がつくったものかも知らないと、お客さんに説明できないよね。コーヒーの歴史や豆の種類、つくられる国や生産者のこともそうだし、「目の前にあるコーヒーをどうやって淹れたらおいしくなるのか」を知ることが大切です。
適当にコーヒー豆を細かくして、上からお湯をかければおいしくなるというものではありません。豆を何グラム使って、何℃のお湯をどのくらい使って……とかね。大変な世界ではあるんだけど、おいしく淹れるために、資格が必要なくらいコーヒーの知識と技術が必要な仕事です。
わー:
知識や技術って、どんなところで学べるんですか?
ひとつは、カフェの専門学校で学べます。もうひとつは、コーヒーを提供しているお店で働いて、そこで教えてもらうこともできます。だから、絶対に学校に行かなきゃいけないものでもない。みんながお家でたくさんコーヒーを淹れる練習をしたら、きっとおいしいコーヒーを淹れることができます。
ケイティ:
なるほど。
今は本やインターネットに、情報がたくさん載っています。自分で勉強して、実際にお家にある道具を使って、「どうやったらおいしくなるかな?」と、自分で研究することもできますね。
オーストラリアでの生活や、バリスタとしての心得についてお話ししてくださった福原さん。後編ではおいしいコーヒーへのこだわりや熱い想い、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。
福原さんのお店
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、わー、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO