今回のお相手:福原 永斗さん
東京都北区赤羽にある、「AERU COFFEE STOP」というコーヒーショップのバリスタ。店主でもある。オーストラリアでコーヒーについて学び、バリスタとして働き始めた。子どものころは野球少年だった。人と話すことや挑戦することが好きで、コーヒーだけではなくデザインの仕事にも力を入れている。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.9 わー:
にわとりの世話を頑張っている。書道の級が上がったことが嬉しかった。
No.15 ぜん:
勉強や友だちと遊ぶ工夫を考えることを頑張っている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。
自分がおいしいと思うものを提供する
ぜん:
この職業の魅力と、大変だと思うことは何ですか?
自分が努力して淹れたものを、目の前でお客さんが「おいしい」って言ってくれたり、楽しんでくれている姿を見れたりするのは、幸せです。それがバリスタという仕事の魅力であり、すばらしいところです。
大変なところは、知識や技術が必要なので、一回勉強して終わりじゃないんですよね。毎年新しいコーヒーが出てくるし、「こうしたらおいしい」という情報もどんどん新しくなってくる。
だからずっと勉強しなきゃいけないのが大変。おいしいコーヒーを淹れるためには、どんどん新しい情報を勉強して、インプットしなくてはいけません。大変だけど、すごくいい仕事だと思います。
インプット=自分の中に取り入れること
ケイティ:
おいしいコーヒーを淹れるための、こだわりはありますか?
こだわりかぁ。こだわりは、絶対に自分がおいしいと思ったものを提供すること。例えば、自分がおいしいと思わなくても、誰かがおいしいと思ったとします。でもそのコーヒーは提供しない。
これは自分のお店だからできることです。みんながどこかのお店で働くとしたら、お店がおいしいと思ったものを提供する必要があると思う。でも僕は自分のお店だから、僕がおいしいと思ったものしか提供しないように心掛けています。そこが結構、こだわりかな。
同じく東京都北区にある2号店のapollonでも、こだわりのコーヒーが飲める
ケイティ:
コーヒーは、豆から淹れていますか?
豆から淹れています。注文が入ったら、豆を挽いて粉にして、そこから淹れます。作り置きは一切していなくて、注文が入ってから淹れています。そのほうが、コーヒーはおいしいんだよ。
挽く=道具を使って粉々にすること
作り置き=一度にたくさん作って置いておくこと
ぜん:
豆はどうやって選んでいるんですか?
焙煎って分かるかな?コーヒー豆って、黒いイメージがありますよね。あれ、実は黒くなる前って緑色なの。
焙煎=水や油を使わずに、火だけで乾燥させること
全員:
ええっ?
コーヒー豆は、赤いさくらんぼみたいな、小さな「コーヒーチェリー」と呼ばれる果物の種なんです。その種だけを使ってコーヒーにするんだけど、種はもともと緑色なのね。その種を仕入れて、黒く焙煎する仕事をしている人がいます。僕の知り合いにも焙煎をしている人がいて、その人から仕入れています。
ぜん:
そうなんですね。
豆は、その人が持っている種類の中から選んでいます。エチオピアや、ブラジルなど数種類の豆の中から「じゃあ今週はこれとこれをください」と注文しています。
好きと楽しいを大切にしたい
わー:
生まれ変わっても、またバリスタになりたいですか?
そうだね。バリスタになりたい気持ちはもちろんあるんだけど、違う仕事を経験してみたいなとも思う。両親が美容師をやっていたから、僕もやってみたかったなぁという気持ちも少しあります。学校の先生っていいな、と思っていたこともありますしね。
だからまたバリスタをやりたい気持ちもあるけど、他の仕事も経験してみたいです。
わー:
なぜまたバリスタをやりたいって思うんですか?
バリスタをやっていて楽しいからです。大人の中には、楽しくないと思いながら働いてる人もいます。だけど僕は楽しいと思って働いているから、この仕事が合っているんじゃないかな。生まれ変わっても、またこの仕事でもいいかなと思えます。仕事は、楽しくできる場所を選ぶといいよ。
わー:
バリスタは今の子どもにもおすすめできますか?
正直に言うと、コーヒーが大好きだったらおすすめしたい。だけど、「何となくバリスタになりたいな」という気持ちでバリスタになるのはおすすめしません。なぜかというと、あまり稼げる仕事ではないから。大人になったら仕事をしてお金を稼ぎたいし、お金持ちになりたいじゃない?(笑)
全員:
はい(笑)。
バリスタという職業は、なかなか稼げる仕事じゃない。だから、コーヒーのことが好きじゃないと、そしてバリスタの仕事が好きじゃないと、続かない職業だと思います。
ぜん:
ケーキなどのお菓子も自分で作っているんですか?それともどこかのお店と協力して作ってるんですか?
僕の店で出しているパウンドケーキなどの焼き菓子は、僕の奥さんが作っています。奥さんもバリスタなので、コーヒーも淹れられるし、ケーキも作れます。
全員:
えー、すごい!
奥さんと一緒にお店をやっていて、コーヒーと、奥さんが作ってくれたケーキをお客さんに提供するお店です。
ぜん:
奥さんと協力してやっているんですね。
福原さんの奥さんがつくる焼き菓子
プロデュースやデザインもやっていきたい
ケイティ:
これからやっていきたいことはありますか?
お店のプロデュースをしてみたいです。プロデュースというのは、「お店をつくりたいけど、つくり方がわからない」という人のお手伝いをする仕事のことです。僕はお店をつくったことがあるから、どうやったらお店をつくれるのかがわかる。だからやってみたいと思って。
あと、デザインをするのも好きなんです。例えば、Tシャツにキャラクターをデザインするような仕事。それと名刺ってわかる?自分の名前や電話番号などが書いてある、自己紹介カードみたいなもの。そういうデザインの仕事もしていきたいと思っています。
ぜん:
自分でデザインしたお店のグッズもありますか?
いっぱいあるよ。お店の看板も自分でつくっています。これまでつくったことあるのは、トートバッグという肩にかけるカバンや、Tシャツなど。これからも、お店のグッズをたくさんつくっていきたいですね。
ぜん:
福原さんがデザインしたグッズは、どこで見ることができますか?
今はまだ見られる場所はないんです。AERU COFFEE STOPのオンラインショップという、インターネット上で買えるサイトがあるので、これから載せていく予定です。載せたら見てみてくださいね。
お店の看板も自分でデザインした
ケイティ:
どうして、お店の名前を「AERU COFFEE STOP」にしたんですか?
アエルには、3つの意味が込められています。まず1つ目は、「出会う」の「会う」。人と人が会える。
2つ目は「合わさる」。モノとモノが合わさる。例えばAという食材と、Bという食材が合わさっておいしいものができるように、「合える」という意味。
3つ目は「和える」。「野菜を和える」などで使う言葉です。人とモノを和えて混ぜるという意味。
お店にいる人と人が出会ったり、食材と食材が合わさっておいしいものができたり、人とおいしいものが混ざり合ったり。そんなお店にしたいと思ったので、「AERU」という名前にしました。
ぜん:
すごいこだわりですね。
そう。自分のお店だからね。自分のお店はちゃんとこだわったほうがいいと思います。
apollonにも福原さんのこだわりがたくさん!
働くって、楽しい!
わー:
ここからは、「働く」とお金の関係について質問します。働くことについてどう思いますか?
働くことは、楽しいことであるべきだと思います。働くのがつらかったり、仕事に行きたくなかったりする大人はたくさんいるんだけど、それって何だか悲しいと思います。
多くの大人は、週に5日間働いています。7日間のうちの5日間を、「つらい」「つまんない」と思って過ごすのと、「楽しいな」と思って過ごすのでは、全然違うと思うんです。
お休みの2日間だけ楽しい思いをして、あとの5日間はつらい思いをするのは、自分の人生として悲しく感じます。働いている5日間も楽しかったら、すごく幸せな人生になると思わない?
だから、働くことは楽しいことであるべき。好きなことを仕事にするのは簡単なことじゃないんだけど、とてもいいことだと思います。好きなことは楽しいですから。
ケイティ:
福原さんも「つらいな」とか、「つまらないな」と思ったときがあるんですか?
あります。お客さんから、直接ではなくインターネットでお店の悪口を書かれることがあります。それを見ちゃうと悲しい気持ちになるし、つらいよね。
でも悪口を書くような人は、何回もお店に来ることはない。何回もお店に来てくれる人は、お店のことが好きな人ですよね。だからその人たちとの時間を大切にするようにしています。悪口を書かれたらつらいけど、楽しいことのほうが多いから、そっちに目を向けるようにしています。
ケイティ:
そうなんですね……。では、お金についてはどう思いますか?
「お金がないと幸せじゃない」というわけではないんだけれど、お金があったほうが、欲しいものを買えます。したいこともできる。我慢することも減ると思うから、お金は生きていく上で必要だと思います。
めちゃくちゃたくさんある必要はないけれどね。自分が食べたいもの、欲しいものをある程度我慢せずに買える、食べられる、という稼ぎはあったほうがいいですね。
ぜん:
お金を稼ぐということについて、どう思いますか?
子どもの時から勉強すべきことだと思う。小学校でも中学校でも、高校でも大学でも、日本の学校ではお金を稼ぐことを教えてくれません。だから僕は、大人になってから自分で勉強しました。
でも、お父さんお母さんに聞けば、子どもの時から勉強できる。「お金ってどうやって稼ぐの?」って、あとでぜひ聞いてみて。きっと教えてくれるから。そんな風に子どもの時から、なんとなくでいいから「どうやってお金を稼げるのか」を知っておくと、大人になってから役に立つと思います。
例えば今、社会人になったばかりの人に「お金ってどうやって稼ぐんですか?」と聞いても、うまく答えられない人がたくさんいると思う。本当はみんなのような小学生でも勉強できるし、勉強するべきです。
お金の稼ぎ方を勉強していると、周りの人から「えっ?」と思われることもあるかもしれません。でも大人になったら絶対に必要だから、勉強しておいたほうがいいよ。
ぜん:
福原さんは、お金の稼ぎ方をどうやって学びましたか?
僕はインターネットで調べて勉強したし、知り合いに自分のお店を持ってお金を稼いでる人がいたので、その人に話を聞いて教えてもらいました。お金を稼ぐ方法は、ひとつじゃなくて、たくさんあります。
「お金を稼ぐ」というと、働いた分だけ給料としてお金をもらうイメージがあるんじゃないかな?実はそれ以外にも、お金を稼ぐ方法はいっぱいあるんですよ。
みんなは、まだ働けないですよね。お店でアルバイトもしてはいけない。でも、小学生でもお金を稼げる方法はたくさんある。勉強してみるといいと思うよ。
ぜん:
そうかあ。
お店を好きでいてくれる人たちを大切にしたい
わー:
お給料はどうやって決まりますか?満足していますか?
僕は自分のお店で働いています。会社から働いた分を給料としてもらうのではなく、お店の売上で僕の給料が決まります。だから毎月、金額は違う。お店が忙しければ、お金はたくさんある。お店が暇だったら、お金は減ってしまいます。
売上=お客さんにサービスや商品を提供した時にもらう代金のこと
わー:
お給料が増えたら、そのお金で何がしたいですか?
自分が欲しい物を買いたい気持ちもあるんだけど、もっとお店をよくしていきたいとも思っています。例えばお店で何かが壊れたとき、もう一度買いたくても、値段によっては売上が上がらないと買えないものもあります。お店の売上が上がったら、お店で必要なものや、壊れちゃったけどもう一回欲しいと思うものを買いたいです。
たくさん発見しよう!
ぜん:
福原さんは、何のために働いていますか?
自分が幸せになるためでもあるけど、両親や僕の奥さん、兄弟など、自分の家族も幸せになれるように頑張って働いてます。人生を豊かにしたいですね。
わー:
自分と家族の人生を、どんな風に豊かにしたいですか?
家族のことを守れるようになりたいです。
例えば、兄弟が急に病気になったとします。その病気を治すには、たくさんのお金が必要です。お金があれば治してもらえるけど、お金がなかったら治せないこともある。その時に僕がお金を持っていたら、治してあげられますよね。
お金がすべてじゃないけど、僕が頑張って働いた結果、守れる人が増えるのならば、それはすごく幸せなことだと思います。ちょっと難しいけど、わかるかな?
わー:
わかります。ありがとうございます。
ぜん:
「働く」と「お金」の関係については、どう思いますか?
お金を稼ぐためには、働く必要があります。さっき、お金を稼ぐ方法はいろいろあると言ったけど、どれも働く必要がある。そこは、切っても切り離せません。
働いたら給料をもらえます。でも、働かなかったら給料はもらえない。働くことと稼ぐことは、ずっとくっついているような関係だと思います。
ぜん:
最後に、子どもたちへメッセージをお願いします!
みんな今、興味があることや好きなことがありますよね。それに関わるお仕事が、世の中には絶対にあると思います。例えば絵本が好きだったら、絵本を描く仕事。電車が好きだったら、電車をつくる仕事や運転をする仕事。
まずは、どんな仕事があるのかを知ってほしいと思う。有名な仕事はみんなが知っているけれど、知らない職業もたくさんあります。だから、まずはどんな仕事があるのかを知るために、自分が興味を持っていることや、好きなものに関わる仕事を調べたり、おうちの人に聞いたりしてみてください。今まで知らなかった発見があると思います。
「こんな仕事もあるんだ」という発見が大事です。その発見の数が多ければ多いほど、将来自分が大人になった時に、選択肢も多くなります。もし仕事を3つしか知らなかったら、3つの中からどれになるかを決めることになる。
そうじゃなく、どんな仕事があるのかをたくさん知っておく。仕事って、本当にたくさんあるんです。僕が知らない仕事も、きっとあるはず。
だからまずは、自分の好きなこと、興味があることに関係のある仕事ってどんなものがあるのかなって、知ってほしいと思う。そして、「つらいな」「仕事したくないな」と思う仕事じゃなくて、楽しく働ける仕事を選んでほしいと思います。
ぜん:
あたたかいメッセージをありがとうございます。頑張ってみます。
頑張ってください。応援しています。
全員:
ありがとうございました!
こんなお話もしました
ぜん:
僕はコーヒーを淹れるだけじゃなくて、みんなが気持ちよく過ごせるカフェをつくりたいです。大人もゆっくり、子どもたちも楽しく過ごせる快適なカフェにするには、どんな工夫が必要だと思いますか?
すごいね。そこまで考えてるんだ!
そうだね、お店の中にはテーブルやイスがありますよね。それをいろんな人が使えるように、いろんな種類のものを置くといいかもしれない。例えば、高さのあるイスばかりだったら、子どもは座りにくい。落ちちゃうかもしれないし、危ないです。子ども連れの家族が来たら案内できるような、ソファの席をつくるのもひとつ。
みんなが快適に過ごせることを目標にするのなら、いろんなお客さんをイメージしてお店をつくるといいと思いますよ。
ぜん:
分かりました。
あと子どもが来たとき、コーヒーしかなかったら飲むものがありません。だから子どもが飲めるような、オレンジジュースやリンゴジュースなども用意するといいかもね。
ぜん:
僕は、ラッシーという飲み物を提供したいと思ってます。
おいしいよね。いいと思う!子どもが来ても提供できるものを工夫して、メニューを考えるのも、みんなが快適に過ごせるカフェをつくるのにとてもいいと思うよ。
ぜん:
ありがとうございます!
バリスタってどんな仕事?
・コーヒーをおいしく淹れて、お客さんに提供する
・お客さんから話を引き出す(福原さんの場合)
・コーヒーの知識と技術を磨く
バリスタの魅力
・自分が努力して淹れたものを、目の前でお客さんが「おいしい」と言ってくれる
・お客さんが楽しんでくれてる姿を目の前で見れる
・コーヒーが大好きな人にぴったり
大変なこと
・知識や技術が必要なので、一回勉強して終わりではない
・どんどん新しい情報を勉強して、インプットしていかないといけない
・お店の悪口を書かれることがある
「働く」と「お金」の関係について
・働くことは、楽しいことであるべき
・お金がないと幸せじゃないわけではない
・お金があったほうが、欲しいものを買えるし、したいこともできるし、我慢することが減る
・お金は生きていく上で必要なもの
・頑張って働いた結果、守れる人が増えることもある
福原さんが思う大切なこと
・商品をお客さんに提供する時は、その商品のことをよく知る
・知識と技術を身につける
・自分がおいしいと思ったものを提供する
・仕事が楽しくできる場所を選ぶ
・お店を好きでいてくれる人たちとの時間を大切にする
・子どもの時からお金の稼ぎ方を勉強する
・自分が興味持ってることや、好きなものに関連する仕事を調べたり、おうちの人に聞いたりする
・「こんな仕事もあるんだ」という発見をたくさんする
福原さんのお店
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、わー、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO