今回のお相手:吉田 隼介さん
IT企業に勤めながら、「カリラボ」という狩りの会社を運営しているハンター。東京と埼玉県横瀬町の2か所に住みながら活動している。動物からの被害を減らし、地域の力になることを目指している。ITの力を使って、より狩りがしやすくなるように考え中。大学生と高校生の子どもがいるパパ。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.10 ばん:
バスケのドリブル練習・二重とびをがんばっている。誕生日にレストランに行ったこと、大繩でみんなで目標達成したことが嬉しかった。
No.11 アメリ:
漢字の勉強をがんばっている。公園で新しい友達をつくったこと、モデルの仕事が来たことが嬉しかった。
No.15 ぜん:
勉強や友達と遊ぶ工夫を考えることをがんばっている。友達に「大好きだよ」と言ったら「僕もだよ」と言われたことが嬉しかった。
生活をするためにお金を稼ぐ仕事のことを「生業」といいます。おしごとメディアNARIWAIでは、働く大人に「仕事」と「お金」の関係についてお話を聞いていきます。
今回のゲストは吉田 隼介さん。ITハンターです。ITハンターって、いったいどんなお仕事なのでしょう?
ケイティ・ばん・アメリ・ぜん:
よろしくお願いします。
吉田さん:
よろしくお願いします。
おじいちゃんみたいな大人になりたかった
アメリ:
子どもの頃、どんな大人になりたいと思っていましたか?
みんなと同じ小学校3、4年生ぐらいのときには、映画監督になりたかったです。みんな『スター・ウォーズ』って知ってる?
スター・ウォーズ=ジョージ・ルーカスの映画作品。
全員:
はい。
僕が小さい頃、『スター・ウォーズ』の第一作目が始まったんです。今はCGがあるのが当たり前の世界でしょう?でも当時は、実際にはないものを映像でつくれることにびっくりしました。
他にも『インディー・ジョンズ』のように、今でも有名な映画のシリーズがちょうど始まって、映画技術が世界中で進化した時代でした。僕は単純だから、それで映画監督になりたいと思ってたの。結局ならなかったんだけどね(笑)。
CG=コンピュータグラフィックス。コンピュータを使って、画像や映像を生み出す技術
インディー・ジョーンズ=ジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグが考えた、冒険映画のシリーズ
進化=成長しながら変化していくこと
ばん:
その頃、憧れていた人はいますか?
僕のおじいちゃんです。小学校2年生のときにおじいちゃんの家の隣に引っ越して、よく遊んでもらったし、いろんなところに連れて行ってくれました。
おじいちゃんはまじめで、怒ると怖くて、でもものすごく優しかった。小さい頃から「おじいちゃんのような大人になりたいな」と思って憧れていました。
ケイティ:
おじいちゃんのどんなところが好きでしたか?
まっすぐで、嘘をつかないところです。やってはいけないことや悪いことをしてしまうと、ちゃんと怒ってくれました。気持ちに嘘がないから、怒られても全然嫌な気持ちになりませんでした。それに普段は温かくて優しい人なので、そういう人柄を尊敬していました。
人柄=性格や、どういう人かということ
ぜん:
吉田さんの職業名は何ですか?
2つあるんだけど、1つは会社員。東京都内で、IT企業に勤めている普通のサラリーマンです。
もう1つは、2019年に「カリラボ」という会社を立ち上げたハンターです。埼玉県秩父郡の横瀬町というところで、狩猟サービスの会社をやっています。狩猟とは狩りのことなんだけど、どんなサービスかわかるかな?
IT=インフォメーション・テクノロジー。コンピュータやインターネットに関する技術のこと
企業=会社のこと
ぜん:
僕は、カリラボのホームページで見ました。
おお、ありがとう。どんなことやってるかわかったかな?
アメリ:
知りたいです。
狩りをやりたい人と、やってほしい人や場所を結びつけるサービスです。あと、狩りで取れた獲物のお肉である「ジビエ肉」を、みんなに楽しんでもらえるように運営しています。
野生動物のお肉「ジビエ肉」
動物による被害を減らして地域の力になりたい
アメリ:
吉田さんの仕事内容を詳しく教えてください。
カリラボは、地域の害獣被害を減らし、地域の力になるための会社です。
まず、狩りをやってみたいけどできない人たちが、「巻狩」に参加できるようにしています。巻狩とは、山に入って犬を放して、犬から逃げてきた獲物を銃で撃つ狩りのことです。あと、罠って何かわかるかな?
害獣被害=動物による被害
ケイティ:
はい。
罠を使った狩りをしたい人も多くいます。そういう人たちには実際に秩父に来てもらって、罠を買うためのお金と、運営の力と、獲物のお肉を分け合う。一緒に罠をかけ、その罠を見回って、獲物が獲れたらみんなで分けています。
他にも、ジビエ肉の販売や、地元の猟師さんたちの狩りに参加できるサービス、ハンターになるために必要な情報、保険などを提供するクラブのようなものを運営しています。
提供=相手に差し出すこと
仲間たちと一緒に狩りをしている
ケイティ:
「運営の力」って何ですか?
狩りには、「獲物を追いかけて獲る」とか、「罠を仕掛けて獲って、お肉をみんなで楽しむ」という目的があります。
ただそれだけじゃない。今は日本中で、野生動物がものすごく増えています。みんなもテレビで見たことがあるかもしれないね。例えば、野生動物たちが畑を荒らしたりとか、街に出てきて人を怪我させたりとか。
野生動物のことを「獣」、獣による被害を「獣害」といいます。ニュースで見るのは、獣害被害の一部分でしかない。実際には、もっと大きな問題が起こっています。何が起こっているかというと、山の中で食べ物がどんどん減っていって……悪循環ってわかるかな?
野生動物=ペットのように人間に飼われているのではなく、自然の中で生きている動物のこと
ぜん:
わからないです。
悪いことが起こって、それがもっと悪いことを起こして、悪いことが関係し合って大きくなっていく。とても悪い状態が続いていくことを、悪循環といいます。
まず、山に人があまり入らなくなりました。例えば、昔は山の中に住んで炭焼きする人とか、木こりとか、山に人がいたんだよね。でも次第に人が街に下りていって、動物を獲る人がいなくなった。そうすると動物が自由に動き回って、山のものを食べるようになるので、だんだん動物の数が増えていきます。
数が増えるから、今度は動物の食べ物が足りなくなる。山の中で、今まで食べなかったようなものを食べるようになります。食べ物は減っていくのに、動物の数は増えていく。そうすると、動物はどんどん山から下りてきます。
炭焼き=木を焼いて炭をつくること
木こり=木を切ることを職業にしている人
ケイティ:
そうなんだ……。
悪循環になっているよね。これをどうにかしないと、日本中の山がきれいな山じゃなくなってしまう。さっき言っていた「地域の力になる」というのは、自然を守ったり、動物の被害で地元の人が困ったりするのを食い止めること。
でも狩りをやりたい人は、地元の人ではなく、都会に住んでいる人が多いんです。秩父のような田舎には、若い人が少ないから、いろんな人に来てほしい。来てもらうことで、秩父の自然は守られます。実際に泊まってお金を使ってくれたり、移住してくれたりする人もいますしね。
そうやって地域に関わってくれる人が増えると、動物の被害が減るし、地域もにぎやかになります。それに狩りに関わっている人は、地域で楽しく過ごしてもらえるし、自分たちで獲ったお肉を食べることもできる。
そういう場をつくることが運営の力でできることなのかな、と思います。
移住=その土地に引っ越して住むこと
運営の力で悪循環をなくしたい
ぜん:
害獣被害のデータを見たんですけど、本当にたくさん被害があってびっくりしました。でも「害獣被害」っていう言い方は、なんだか動物がかわいそうで。どうして動物たちは山から下りてきてしまうと思いますか?僕は人間のせいなんじゃないかな、って思っています。
そう思うのは、すごく大切なことだよね。ぜんくんが言っていることは、ほぼ正解。なんで山から下りて来てしまうかというのは、さっき説明したように、人が山に入らなくなったから数が増えちゃって……というのももちろんある。生態系ってわかるかな?
全員:
わからないです。
例えば土から草が生えて、その草を草食動物が食べて、草食動物を肉食動物が食べて、肉食動物の死骸が土に返って、と命はめぐっているよね。命と自然の仕組みのようなものが、生態系。
けれど人間が、その生態系を崩す原因のひとつになっています。もともと人間は、もう少しおとなしく生きていたはず。でも多くの人が集まって生活するようになり、やたら水を使ったり木を切るなど勝手なことをしはじめました。
生態系のバランスが崩れる原因を、人間がつくってしまったんです。その影響がだんだん大きくなって、いろんな原因が重なり、獣害被害に結びついている。
だから、ぜんくんの言うとおり、「獣が一方的に悪いことをしているから、獣害っていうのはどうなのか?」というのは、僕もそのとおりだと思う。人間が関係してるという意見は正しいと思うよ。
死骸=死体のこと
ぜん:
資源を手に入れるために山を削ったり、新しい建物やダムをつくったりしているんですよね? 前に、「サルにエサをあげないで」という看板を見ました。でも人が食べ物をあげて覚えさせてしまってるから、下りてきてしまうんじゃないかって思いました。
そうだね。例えば、「わあ、かわいい」って、サルに食べ物をあげちゃう人もいるね。それに、出荷できない野菜を、畑の横に捨てる農家さんもいます。なぜなら、形がいいものじゃないと売り物にならないから。そうすると、捨てた場所に動物が集まってくるので、自然とエサを与えていることになってしまいます。
人間は、すごく栄養のある作物をつくっています。野生の動物からすると、そういうものはおいしいし、自分の体に必要なものだってわかっちゃう。そしたらもちろん、食べに来るよね。僕らだっておいしいものが簡単に手に入るなら、そこに行くじゃない?
ぜん:
行きます。
人間がわざわざ動物をおびき寄せるようなことをしてしまっている。そして人間が山を切り開いて、動物が住みづらい環境にしていることも、動物が山から下りてきてしまう原因のひとつです。
ITとハンターをかけ合わせてできること
IT会社のサラリーマンとしても働いている
ぜん:
会社員としては、どういう仕事をしてますか?
大きな会社では、何千人、何万人もの人が働いていますよね。その人たちのお給料の計算って、すごく大変な作業なんです。それをITでできるように、システムをつくっている会社で働いています。僕はシステムをいろんな企業に紹介する仕事をしています。
ばん:
吉田さんを合わせて、狩りは何人くらいやるんですか?
カリラボの会員さんは、約30人います。1回の狩りに出る人数は、地元の猟師さんも含めて、だいたい15人から20人ぐらいかな。
ケイティ:
多いなあ。
結構たくさんいますよ。狩りというのは、まず山に犬を放って、動物がどこに逃げてくるかを予想するんです。動物が逃げてくるであろう道に、鉄砲を持った猟師さんを配置します。
なので、ある程度人数がいないと、その間に動物が逃げていっちゃう。だから最低でも10人は必要なんです。
配置=合うと思う場所に置くこと
ばん:
どういう動物を捕まえてるんですか?
シカとイノシシが多いです。あとは、悪さするアライグマやテンなどの小動物も。
ぜん:
テン?オコジョみたいなのですか?
そうそう、よく知ってるね。オコジョやイタチとも似ています。ちょっと細長くて、かわいらしい顔をした動物です。
ぜん:
かわいいのに。
そうだね。かわいいんだけど、ものすごく凶暴で、捕まえるとガブっと噛まれてしまうこともあります。小動物は増えるのも早いし、狭いところにも入って何でも食べちゃうから、畑が荒らされる被害が多いんだよね。
小動物による被害も多い
ケイティ:
ITの仕事と狩りの仕事は、お互いにいい影響を与えていますか?
すごくいい影響を与えています。猟師は昔ながらのお仕事なので、「山に入って、気合いで歩き回って獲物を探すぞ!」というところがあります。でもそれだと、ずっと山の中にいないとできないですよね。
けれどもITの力を使うと、狩りが楽にできるようになります。ずっと動物を見張っていなくても、カメラが代わりに見張ってくれるんです。
楽に狩りができると、疲れないし参加もしやすくなります。「ずっと山の中にいないと狩りはできないよ」と言われると、参加できる人は少ないと思う。でもカメラを使えば、1日3時間手伝うくらいだったらできるよっていう人も結構います。
実際にITの力で何をやっているかというと、山の中にカメラをたくさん仕掛けて、動物がその前を通ると、センサーで写真を撮ります。そのカメラにはメールを送る機能もあるので、撮った写真を送ってくれるんだよね。「今、Aの場所にイノシシが歩いてましたよ」というように、動物の居場所がわかります。
センサー=音や光、温度などに反応する仕組み
全員:
すごい!
それに罠を仕掛けると、毎日罠の様子を見回らなくてはいけません。動物が罠にかかったら、ずっとそのままだと痛いし、かわいそうですよね。でも、罠にもセンサーをつければ、罠が作動すると、ひもが外れるようになっています。そうすると、メールで「A地点の2番で罠が作動したよ」と教えてくれます。居場所がわかると、すぐに動物のところに行けるよね。
あとは、都心に住んでいる会員さんも多いので、そういう会員さんとはFacebookでやりとりをします。Facebookって、みんなわかるかな?
作動=機械が動くこと
Facebook=SNSのひとつ。インターネット上でコミュニケーションを取ることができる仕組み
ケイティ・ぜん:
はい。
Facebookを使って、みんなで情報を共有しています。誰もが情報を見られるわけではなくて、会員さんだけが見られるグループがあるんだよ。会員さんは交代で見回りをするんだけど、見回りの結果もFacebookに載せるようにしています。
「今日は異常ありませんでしたよ」「この罠が誤作動していたから、今度みんなでかけ直しましょう」などのやりとりをします。こんな風に、狩りとITは相性がいいんですよ。
共有=分け合うこと
誤作動=機械が正しく動かないこと
狩った動物はジビエ肉にしていただく
ケイティ:
狩った後、その生き物はどうしますか?
食べます。
ケイティ:
うわあ。
あはは(笑)。うわあ、ってなるよね。みんな、ジビエ肉を食べたことはあるかな?
ケイティ・ばん・ぜん:
食べたことないです。
アメリ:
私、ジビエ肉を食べたことあるかなあ?
アメリちゃん、食べたことある?
アメリ:
パパに聞いたら、私も食べたことあるって!
おお、すごいね。でも覚えてる?
アメリ:
覚えてないです。
覚えてないか(笑)。
僕は、ジビエ肉はすごくおいしいと思っています。お肉自体が、とても自然な感じでおいしいというのもあるんだけど、何よりジビエ肉にはストーリーがある。
野生動物だから、「こういう山で育ったのかな」「多分こういう育ち方をしていたんだろうな」「だからお肉が柔らかいんだろうな」「だからちょっと木の実の香りがするんだろうな」などと、想像するのもおもしろいです。
ジビエ肉は、好き嫌いがあると思います。スーパーで買うお肉は、飼育された動物が決まったエサを食べて、人間の計画どおりに出荷される。人間の好みの味になっているし、いつも味は変わらないし、見た目もきれいだよね。
それはそれでいいお肉だと思うんだけど、ジビエ肉には、それとはまた違った楽しみがあるんですよ。
ジビエ肉にはストーリーがある
ぜん:
吉田さんは、しっかり大切に味わっているんですね。
そうだね。なるべく、しっかり味わって食べてあげたい。僕の仲間で、獲った動物をジビエ肉にすることにこだわっている猟師がいます。
それを「解体」というんだけど、彼に習って、きれいにさばいたほうがおいしいんです。荒く解体してしまうと、お肉が皮にくっついたり、食べる部分が少なくなったりする。そういう細かいところも、こだわってやりたいと思っています。
ぜん:
狩りをするのは怖くないですか?
ヒヤッとすることは、たまにあります。例えば、シカは攻撃してくるイメージがないかもしれないけど、罠にかかったらシカも当然必死です。いざ「止め刺し」といって、とどめを刺すときも暴れます。ツノもあるしね。
罠を使って動物を捕まえる方法は2つある
ばん:
罠はどんな種類がありますか?
大きく言うと、2種類の罠を使っています。1つは「くくり罠」といって、ワイヤーみたいなものを地面に埋めておいて、それを踏むと、ワイヤーが獲物をつかんで逃げられなくなる罠。
もう1つは、網でできている大きな箱のようなものを置いておいて、動物が入るとガシャンと落ちる箱型の罠。
画面の右にあるのが、箱型の罠。結構大きいんです。罠の一番上は、大人の身長よりも高いですね。動物がモグモグとのん気に食べてるでしょう?
全員:
はい。
でも自然の中にこういうものはないので、警戒していますね。エサを少しばらまくと、食べはするけど、罠の中に入りそうで入らない。ちゃんと中に入った状態で罠の扉を閉めないと、逃げられてしまいます。
まだ箱は落ちてませんよね。でもこの動物は安心しきっているので、箱の中に入ったらいつでも捕まえられる状態です。
だんだん箱型の罠の中に警戒せずに入ってくるようになるので、獲りたいときにストッパーを外しておけば、捕まえやすくなります。
ケイティ:
結構時間がかかるんですね。
そうですね。安心させておいて、獲りたいと思ったときに罠がガシャンと落ちるようにしています。くくり罠だと、動物が踏んだ瞬間に作動するので、いつ引っかかるかわかりません。
そのように道具を使い分けたり、場所によって方法を変えたりする。会員さんと一緒に、「ああでもない、こうでもない」と考えながら一緒にやっています。
ぜん:
罠は全部、狩りをしている人たちでつくっているんですか?
罠をつくっている会社の罠を買って、仕掛けています。
ぜん:
カリラボでは捕まえた動物を食べると言っていましたが、それ以外に、動物園にエサとして渡すことは考えていますか?
おもしろい発想だね。動物園にエサとして渡すことは、考えていません。動物園に出すには量がちょっと少ないんです。動物園の動物は、毎日ちゃんと食事をします。狩りの肉は、毎日決まった量を獲れないんだよね。だから難しい。
だけど、人が食べられない部分のお肉をペットフードにして、販売する計画を考えています。
ぜん:
そうなんだ!
例えばシカのお肉は、脂が少なくてタンパク質が多いので、健康にいいといわれています。特に若い女性は、シカのお肉はヘルシーだから好きだという人が増えています。最近では動物にも、太っている犬や猫がいますよね。そうならないためにも、ヘルシーなお肉をペットフードにするのはいいと思う。
いくら「悪いことをしている動物だから獲りました」といっても、さっきぜんくんが言ってくれたように、ちゃんと大事に食べてあげるのは大切なこと。人間が食べられないんだったら、せめて犬や猫が食べられるようにしてあげよう、と考えています。
ぜん:
なるほど、そっか。
動物園はだめなのに、なんでペットフードはOKなの?と思うかもしれないね。ペットフードだと、使う量は多くない。主食というよりは、おやつ用です。
動物園ではおやつを出していないので、基本的には食事だけ。毎日決まった量のお肉を提供できないといけないから、難しいですね。
問題解決のためにカリラボを始めた
みんなで罠についてアイデアを出し合っている
アメリ:
吉田さんは、なぜその仕事をしようと思ったのかを教えてください。
もともと僕は、趣味で狩猟をしていました。さらにそれとは別で、いろんな生活や働き方をしたいと思って、秩父と東京の2か所で生活をしていました。
その生活でわかったのは、実際に狩りを趣味でやろうとしても、なかなかできる場所がないということ。それに仲良くなった地元の猟師さんが、地域に若い人が全然いなくて困っていることもわかった。畑をしているおばあちゃんにも「獣がいっぱいで大変だから、獲ってちょうだいよ」と言われました。
やりたいけどできないと僕が思っていたことと、みんながやってほしいと思っていることがつながった。それに気づいたのがきっかけで、カリラボをやってみようかなと思い、この仕事を始めました。
ケイティ:
何で狩りを始めようと思ったんですか?
あまり覚えていないんだよね(笑)。
僕は料理や食事、お酒が大好き。その中でも、ジビエ肉が好きでした。でも自分でジビエの動物を獲ろう、と思ったきっかけは覚えていません。
多分テレビで狩りをしている人を見て、興味を持って、調べながら狩りを始めました。昔から猟師に憧れていたわけではありません。
たまたまテレビで見た映像が、カリラボという会社につながっている。きっかけというのは、本当に偶然の連続だと思います。
ぜん:
おじいちゃんが、狩りをやってたのかと思ってました。
そう思うよね。おじいちゃんは全くやってないんだよ。今言ってくれたみたいに「祖父がやっていたので、僕もやりたいと思いました」「祖父がやっていたので、私もやっているんです」という人は多いです。
ケイティ:
なんで自らカリラボをやろうと思ったんですか?
獣害は日本中の問題になっているという課題意識を、何となく自分の中で持っていました。それに、自分で狩りを体験することで何か解決できるかもしれない、と気づいてしまった。
だから、これはやらなくちゃいけないという義務感も半分ありました。もう半分は、おもしろそうだったからなんだけどね。
誰かが始めないと、誰もやらないんだろうなと思っています。
義務感=しなくてはならないという気持ち
ケイティ:
確かにそうなのかもしれないですね。
問題解決のためにカリラボを始めた
ぜん:
カリラボをやろうと思ったとき、はじめから罠のセンサーとかメールシステムも思いついていたんですか?
カリラボつくったらおもしろいかもと思ったときは、まだ思いついていませんでしたね。実際始めようとしたときに、「毎日見回りに行くのも大変だな」「もっと便利に、もっとおもしろくできないかな」と思いました。そこから、カメラを仕掛けておくとどうなのか、センサーを使ったらいいんじゃないかといったアイデアを少しずつ思いつきました。
ー動物と人間のかかわり方の変化やジビエ肉、罠を使った狩りの方法を詳しくお話ししてくださった吉田さん。後編では、ハンターにとって大切なこと、そして働くことや「仕事」と「お金」の関係についても聞いていきます。
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、ばん、アメリ、ぜん
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
編集:スナミアキナ
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO