第21回　 子どもも大人も笑顔になれるまちづくり「まちづくりコーディネーター」 並木優さん【後編】

今回のお相手：並木なみき優ゆうさん

子ども取材班しゅざいはん

小さな積つみ重かさねがまちをよくしていく

わー：
お仕事しごとの魅力みりょくと、大変たいへんだと思おもうことは何なんですか？

みちくさくらすでもクオルでも、いろんな人と関かかわれることが魅力かな。まちのことを考かんがえていく中で、たくさんイベントをひらいて、関係者とやりとりをします。

どちらも人が集まる仕事なので、いろんな人と知り合いになれます。ただ生活をしているだけでは出会わないような、魅力的てきな人に出会えたりする。これが一番いちばんの魅力だと思いますね。

わー：
魅力的な人って、具体ぐたい的てきにどんな人ですか？

みちくさくらすはワークショップをやったり、カフェとして場所ばしょを使つかってもらったりしています。私わたしはまちづくりや建築けんちくをやっていますが、イベントをすることで、私とは全まったく違ちがう仕事をしている人たちと出会える。近所きんじょのお寺てらのお坊ぼうさんが遊びに来てくれたり、喫茶きっさ店てんのマスターと仲なか良よくなったりもしていますよ。

まちにはいろんなスキルを持もった人や、まちをよくするために活動かつどうしている人がいます。そういう人たちは、とても魅力的です。

今いまはコロナ禍かで全然ぜんぜんイベントができていないんですが……これはワークショップをやっている様子ようすです。ワークショップをすると、子ども同士どうしの出会いもありますね。

わー：
大変たいへんだと思うことはありますか？

いろんな人が集あつまってくるので、困こまることもあるんです。例たとえば怪あやしい勧誘かんゆうの人が来たり、意見いけんの違ちがいがあったり。人が多おおいほど意見いけんがぶつかることもあるので、その調整ちょうせいも大変です。

まちづくりは、その地域ちいきの人たちとやりとりを続つづけることが大事だいじ。やったことに対たいして、明日あしたすぐに結果けっかが出るというわけではありません。毎日の小さなことの積み重ねが、まちをよくしていくことにつながります。

小さなやりとりがすごく多いので、それも大変ですね。

虹太：
生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか？

生まれ変わっても、まちに関わる活動はやりたいと思います。

今自分じぶんがやっていることを振ふり返かえると、自分の家族かぞくがやっていたことにつながっているなと思おもいました。祖父そふは町長だったので、自分のまちでどうやってまちづくりをしていくのか、決きめる役目やくめがありました。私がまちづくりに関わっているのは、もしかしたら祖父の血ちを受うけ継ついでいるからかもしれません。

それに私が子どもの頃ころ、祖母そぼと母ははは英語えいごの先生せんせいをしていました。その頃は英語教室というのは珍めずらしかったので、夕方ゆうがたの時間じかんになると私の家に毎日のように子どもが集まっていました。その風景ふうけいが心こころの奥底おくそこにあって、いつか私も子どもが集まる場所をつくりたいと思いました。

家族がやっていたようなことを、今自分もやっている。家族のいい部分を引ひき継いでいると、大人になってから改あらためて思い、家族に感謝かんしゃをしています。

お金には代えられない価値がある

わー：
まちづくりの仕事は、今の子どもにもおすすめできますか？

おすすめできます。すごく楽しいです。

大きな会社に勤つとめている人も社会しゃかいの力になっているし、おもしろいことをやっていると思う。でも個人こじんや小さな団体だんたいでも、自分のやりたいことを、しかも社会にとっていいことをやっていこうという考えを持もっている人が、私の周まわりに増ふえています。私は今33歳さいなんですが、特とくに同おなじ年代ねんだいの人たちが多いですね。

これからの時代じだい、お金には換かえられない価値かちが、どんどん大事だいじになっていくんじゃないかな。場所も、人も、ものも、みんなでシェアして、みんなで価値を共有きょうゆうしていく。お金だけでは図はかれないところにやりがいを見いだしたり、自分じぶんで挑戦ちょうせんしてみたいと思ったりする人が増ふえていくと思います。

2人が就職しゅうしょくする年齢ねんれいになったとき、まちづくりに関わる仕事は増えていくだろうし、注目ちゅうもくされていくんじゃないかな。

虹太：
これからやっていきたいことは何ですか？

自分の子どもが楽しく生きられる世界せかいをつくりたいです。新宿しんじゅく区くに住すんでいる人間として、周辺しゅうへんのまちや人を巻まき込こんで、新宿を元気にしていくのが今後こんごの目標もくひょうですね。

コロナ禍かになってしまったことは、まちづくりの活動においてもインパクトがありました。2年前にはできていたことが、全然ぜんぜんできなくなっちゃった。みちくさくらすも、コロナ禍の前ほどイベントができていません。

いろんなことを考えると、物事ものごとはなかなか進すすみません。感染かんせんが広ひろがってもいけないし、思うように活動ができてない部分ぶぶんもありました。今後も新型しんがたコロナウィルスのような感染かんせん症しょうと付つき合あいながら、生活していくことになるんでしょうけどね。

虹太：
そうだと思います。

今、愛知あいちと茨城いばらきにいる２人と話せているのは、Zoomズームがあるおかげです。コロナ禍になって、オンラインでできることの幅はばが広がったと思うので、それはすごくいいことだと思います。

でも対面たいめんで会って話をすることや、集まって活動することの楽しさや価値は、今後も絶対ぜったいにあるはず。会ってコミュニケーションをとることで生まれる価値を大事だいじにしながら、活動を続つづけていきたいです。

わー：
楽しく生きられる世界をつくりたいって、具体的にどんな世界にしたいですか？

保育ほいく園えんや学童がくどうの人数がいっぱいで、なかなか入れないという話をしましたね。さらに新型コロナウィルスの影響えいきょうで学校が休校になったり、イベントがなくなったりと、今の子どもは社会の影響を強つよく受うけてしまっていると思うんです。私は、この状況じょうきょうを何なんとかしたい。

東京とうきょう都内とないにはいろんな人が住んでいます。マンションの隣となりの部屋へやに住んでいる人を知しらないこともある。

また、電車でも心配しんぱいなことがあります。小さい子どもは、まだ上手じょうずにお話ができません。泣いたり大きな声を出したりして、自分の気持ちを伝えます。でも周まわりの人にはそれがうるさく感じられることも。だから、子どもを連つれて電車に乗のるだけで、迷惑めいわくそうに冷つめたい目で見られることもあります。

親おやだけで子育そだてをしなくちゃいけない世よの中だと、子どもも生きづらいんじゃないかな。

もっとまち全体で、子どもを育てる意識いしきを持もてるといいですね。まちの人、一人ひとりが「まちをよくしていこう」「子どもを見守まもろう」という意識を持ったら、きっと犯罪はんざいも減へると思います。

うちの子どもは、わーちゃんと虹太くんと年齢ねんれいが近ちかいので、2人にとっても楽しく生きられる世界にしたいな。

わー：
なるほど。

まちに顔かお見知りの人がたくさんいると、子どもも安心あんしんできるし、毎日まいにちが楽しくなると思うんですよ。だから、まち全体ぜんたいで子どもを育てるのが当たり前で、今よりも子どもがいろんな大人と関かかわれる世の中になったらいいなと思います。

2人はNARIWAIにも積極せっきょく的てきに参加さんかしているから、きっとすてきな大人ともたくさん出会っているんでしょうね。これからはそれが当たり前になって、大人と子どもが出会える機会きかいも増ふえていくといいんじゃないかな。

どうせなら楽しく働いて、いきいきしたい！

虹太：
ここからは、「働く」ということと「お金」の関係かんけいについて聞いていきます。「働く」ということについてどう思いますか？

私にとって仕事は、趣味しゅみや興味きょうみ、楽しいと思うことと重かさなります。だから「働くこと＝楽しい」。毎日働いているのか趣味でやっているのか、いい意味いみでわからなくなるほど楽しいです。

でもそういう人ばかりじゃなくて、お金を稼かせぐために割わり切きって働いている人もいると思うので、考えは人それぞれ。ただ一般いっぱん的てきに1日8時間は働くだろうから、仕事がつまらないと、1日の多おおくの時間が楽しくなくなりますよね。

1日の大部分を使って、わざわざ子どもを保育園に預あずけてまで働いていますからね。どうせなら楽しいことをやりたいと思うし、みんなが楽しいと思って働いたら、いきいきした社会になるのになと思います。

わー：
「お金」についてはどう思いますか？

最低さいてい限げん生きていくお金は誰だれでも必要だと思うので、その分のお金は稼がなきゃいけないと思います。わーちゃんと虹太くんのご両親りょうしんもきっと、2人を育てるために働いたり、貯金ちょきんしたりしていると思う。

私も親おやなので、子どもに不ふ自由じゆうをさせず、自分もちゃんと生きていけるお金が必要です。でもいっぱいお金が欲ほしいからって、毎日まいにち毎日残業ざんぎょうして働いて、つらい思いをたくさんして、全然プライベートを楽しめないのは違ちがうかな。

私だったら、楽しさと、お金と、どうやったら社会やまちにいいことができるかが大切。その3つが、うまくバランスが取とれて納得なっとくのいくところを選えらんで働いています。

虹太：
お金を「稼ぐ」ことについてはどう思いますか？

稼げなかったら生きていけないので、最低限稼ぐことは必要だと思います。でもさっき言ったように、お金には換かえられない価値もある。私の場合は、人が集まる場所でいろんな人と知り合いになれます。人がつながっていくことで、新しい発見はっけんができるし楽しい。

出会いの中で、「この人に頼たのんでみよう」「この人と一緒いっしょにプロジェクトをやったらおもしろいことが生まれるかも」と、新しいプロジェクトが生まれることもあります。

そういうつながりをたくさん持っていると、もっとおもしろいことができたり、もしかしたら新しいお仕事が生まれて、お金になったりするかもしれない。私はお金には換えられない価値を大事にしていきたいので、稼ぐことにはこだわらなくてもいいのかな、とも思います。

わー：
お給料きゅうりょうはどうやって決まるんですか？満足まんぞくしていますか？

クオルのお給料は、会社からの評価ひょうかで決まります。社長と３ヶ月かげつに１回面談めんだんをして、成果せいかが認みとめられたらお給料も上がります。前に働いていた会社では、年齢で金額きんがくが決きまるという、納得がいかない評価もありました。だから、今は満足していますよ。

虹太：
並木さんは、何のために働いていますか？

最低限のお金を稼ぎつつも、楽しくまちに関わって好きなことをして、楽しく働いている母ははの背中せなかを自分の子どもたちに見せるためです。

わー：
「働く」と「お金の関係」について思うことを教えてください。

私は社会と関かかわる活動をしているので、仕事が直接ちょくせつお金になりにくいというジレンマもあります。活動がもっと世の中に評価されて、お金が集まるような仕組みになっていればいいのにな、と思うことがよくあります。

どんなに魅力みりょく的てきな活動でも、お金が全くなくては続けられませんからね。

わー：
最後さいごに、子どもたちへのメッセージをお願ねがいします！

私はわりと何も考えないで、子どもの頃ころから大学までぼーっと過すごしてしまいました。もっと社会を見て、いろんな人と会って、自分は大人になったら何がしたいのか真剣しんけんに考えればよかったなと思います。

仕事をするにも、趣味を楽しむにも、子どもとの時間を過ごすにも、結局けっきょくは人の縁えん。魅力的な人と出会い、一緒になにかをやり遂げることで、きっと自分の可能かのう性せいは広がります。

だから子どもや若者わかものには、いろんな大人にたくさん会って話をして、いろんな活動に飛とびこんでみてほしいです。私も子どもが生きていく環境かんきょうをいいものにできるよう、一人の大人として、そして母として全力を尽つくします。

勉強も大事ですが、いろんな考え方の人に出会って、自分の世界を広げていってくださいね！

わー・虹太：
ありがとうございました！

【子どものためのおしごとメディアＮＡＲＩＷＡＩ】
子ども取材班：わー、虹太
編集部：スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング：吉川ゆゆ
サムネイルデザイン：南 裕子
編集：スナミアキナ
編集長：吉川ゆゆ
主催：ＹＯＫＡＲＯ