今回のお相手:川口ゆりさん
リレーションデザイナーという仕事を生業としている。人と人をつないでビジネスや地域の出発点をつくることを中心に、コミュニティマネージャー、人事、MC・司会、広報ライター、イベントファシリテーションなどいくつかの仕事をかけ合わせて働いている。北海道出身で北海道と東京の2か所で活躍中。好きな食べ物はスープカレー。
子ども取材班
No.1 ケイティ:
空手や書道を一生懸命がんばっている。空手で館長賞を取ったことが嬉しかった。
No.9 わー:
にわとりの世話をがんばっている。書道の級が上がったことが嬉しかった。
自分の好きなことや楽しいことは何か、を知ろう
わー:
どうやったら、川口さんのような仕事、生き方ができるんですか?
私の場合は、10代の頃から自分の好きなことや、どんなときに楽しい気持ちになるのかを考えていました。それを心の中にずっと置きながら、まず自分がどんな生き方をしたいのか、と思いながらいろんなお仕事を自分で探していました。小学生の時になりたかったのは、ラジオのパーソナリティと、料理人。それらは実際に仕事や暮らしの中で大きな存在になっています。
「この仕事だったら自分のよさが活かせるかもしれない」と思ったことに自分から飛び込んでみたり、周りの人と協力したりして働いています。
わー:
そうなんですね。
好きな気持ちや楽しい気持ちを中心に考えるといいかもしれません。
自分がやりたいと思ったことを、すべて挑戦してやってみるのも大事。可能性を自分で決めるんじゃなくて、やってみて、うまくいかなくても大丈夫。目の前で起きていることを全ておもしろがりたいですね。
ケイティ:
川口さんはやりたいと思ったことに挑戦してますか?
子どもの頃からずっと、たくさん挑戦していますね。私は、小学生の時に生徒会長をしていました。自分しかやる人がいなかったので仕方なく手を挙げて会長になりましたが、それもひとつの挑戦でした。
あと高校生の時は、部活で空手をしていました。
ケイティ:
えっ!
みんなにびっくりされるけど、本当にやっていたんだよ。型ではなくて、闘う空手がかっこいいと思って挑戦していました。
大人になってから挑戦していることもたくさんあります。新しい仕事にチャレンジするのもそう。今私は27歳ですが、10代の頃から今まで、ずっと何かに挑戦しています。最近はジムに行って本格的に鍛えたり、美味しいご飯をつくりたくて、料理も真剣にやったりしています。
大好きなことや、楽しい!と思う素直な気持ちを大切にしている
わー:
川口さんのお仕事は、資格が必要ですか?
必要ありません。資格があるほうが可能性は広がると思うけれど、資格がなくても自分がチャレンジしようという気持ちがあれば、新しい道が開ける。だから資格は必ずしも必要ではありません。
今は何をしていても楽しいし幸せ
ケイティ:
この職業の魅力と大変だと思うことは何ですか?
魅力は、自分が興味あるものすべてに触れられることです。忙しくて大変だなと思うときもある。それも充実している証拠なので、大変なことも全部含めて、とても幸せです。
でも、だからこそ、悩むことは多いですね。
わー:
人や物事の魅力とか悩むことって、具体的にどんなことですか?
いくつかの仕事を一緒にしていると、いろんなことに気を使わないといけないです。例えば世の中は、自分と同じ考えを持った人ばかりではありません。学校生活でも、自分と全然考えやタイプが違う子がいると思います。外で遊ぶのが好きな子もいれば、室内で本を読むのが好きな子もいるよね。
全員:
います。
社会に出てもそう。自分とは違う考えの人と一緒に何かをするときに、自分の気持ちだけを優先させても、どこかでぶつかっちゃうことがたくさんあります。みんなそれぞれ大事にしていることが違いますから。でもみんなで仕事をしているから、それでも仲良くしないといけないこともある。人との違いも楽しいことだけど、そういうときは大変さもありますね。
優先=他のことよりも先にすること
人との出会いは大変なことも多いけれど、魅力も多い。
わー:
生まれ変わってもまたこの仕事がしたいですか?
したいですね。したいけど、新しく違うことをやってみたい気持ちもあるかも。とにかく好奇心旺盛なので(笑)。
私は今の仕事をするようになって、すごく幸せだなあと思います。何をしていても楽しいし幸せだと思うけど、一つのことを極める職人さんのようなことをしてみたい気持ちもあります。今いろんなことをしているからこそ、逆に一つのことに集中する仕事がしてみたいな。
美容師もいいですね。理由は、人がよりすてきになっていく姿をそばで見ることが好きだから(笑)。誰かがきれいになる手伝いはすてきだと思います。きれいになると自分も嬉しいし、周りも嬉しい。そうするとみんながハッピーですよね。
ケイティ:
この仕事は、今の子どもにおすすめできますか?
おすすめできます。私の場合も、今までの一つひとつの経験が、リレーションデザイナーの仕事に活かされています。リレーションデザイナーになるのは大変かもしれないし、なってからも大変かもしれない。でも何よりも、いろんな物事に関われるって、いい人生だなと思います。
地元の北海道に貢献したい
ケイティ:
これからやっていきたいことは何ですか?
いろいろあるけれど、地元の北海道のよさを誰よりも知り、北海道に住んでみたい人にそのよさを広める仕事や、北海道の人々がつながる仕組みをつくる仕事がしたいと思っています。私は子どもの頃から、北海道の札幌に長く住んでいました。そのあと、お仕事やプライベートなどいろんな理由が重なって、20代で東京に引っ越してきましたが、今でも北海道がすごく好きです。自然が豊かだし、食べ物もおいしいですよ。
せっかく北海道というすてきな場所に生まれたので、そこに貢献するお仕事がしたい。北海道に行きたいと思う人が増えるようなお仕事がしたいですね。
2人とも、北海道に来たことはありますか?
ケイティ:
ないです。
わー:
1回だけあります。
お、わーちゃんは来たことがあるんですね!北海道のどこに行きましたか?
わー:
十勝です。
十勝!どの季節に行ったの?
わー:
夏です。
ちょうどいい季節ですね。十勝もいい場所だよね。
満月の晩に、東京で月に1回だけ夜に開店するコーヒー屋さんにて。東京も川口さんにとって大切な場所のひとつ
早く社会に出て働きたかった学生時代
わー:
ここからは、「働く」と「お金」の考えについても聞いていきます。「働く」ということについてどう思いますか?
私のお母さんとお父さんは、よく働く人でした。小学生の頃は、大変そうだけど家族のために働いてくれるのはありがたいなと思っていました。今思えば、両親の働く姿を見て尊敬していましたね。
働くのがつらいと思っている人は、世の中にたくさんいると思います。でも私は、働くことは楽しいことだと思います。2人も『NARIWAI』でいい大人にいっぱい会っているから、もしかしたら働くのが楽しみかもしれないですね。
全員:
はい。
私も働くことが楽しみすぎて、高校生の時はアルバイトをいくつも同時にしていました。当時は大学で4年間勉強するよりも、早く社会に出たかったので短大に行きました。もっと勉強したくなったら、大人になってからまた大学にいけばいいと思って。
小学生のみんなには、「早く大人になって、こっちの世界においで!」と言いたいくらい、働くことは楽しいですよ。
ケイティ:
働くことの、どんなところが楽しいと思いますか?
できなかったことができるようになる実感と、理想を追いかけるのが、楽しいですね。
例えば私は、自分から人事の仕事をやろうと思ったわけではありません。周りの人から、「ゆりちゃんは人事に向いているんじゃない?」と言われてやり始めた仕事です。
最初は、人としゃべったり面接をしたりできなかったんですよ。それがだんだん回数を重ねるうちに、いろんな人としゃべれるようになった。できるようになってくると、「あんなにできなかったのに、ここまでできるようになった」と自分でも成長がわかって嬉しくなりました。
成長して、人と話すことも楽しめるようになった
ケイティ:
そうなんだ。
私の場合は、学校で勉強するだけだと、なかなか自分で成長を感じられないような気がしていました。あったとしても、体育の時間に「前よりうまく走れるようになったな」「走るのが速くなったな」と感じるくらいで、そんなに多くはなかったと思います。
できなかったことができてくると、仕事はだんだん楽しくなるんですよ。それが働くことのいい点だと思っています。
わー:
「お金」についてはどう思いますか?
実際はお金がなくても、人間は幸せに生きられると思います。少なくても幸せな生き方はできるかもしれないけれど、お金があるに越したことはないですね。
お金があれば、本当に価値のあるものにお金を払うことができたり、人に感謝を伝えるときに気持ちよくお金を払えたり、困った人を助けたりすることができます。
お金は自分を救ってくれるし、誰かを救うこともできる。お金を大事にすることは、決して悪いことではないと思っています。
人とのつながりを大切にしている
ケイティ:
「お金を稼ぐ」ということについてはどう思いますか?
いいことだと思います。とはいえ、稼ぐことだけにとらわれて、心が共感できない働きを続けるくらいなら、好きなことを本気で一生懸命するほうがいいですね。私は自分ができないことを無理に克服するよりも、自分ができることや得意なことを思い切り伸ばすことが幸せです。
そのお金で、自分ができないことを得意とする人に、仕事をお願いしたり、社会に還元したいです。自分の好きなことをして、自分も楽しくて、周りも幸せになって、それで結果的にお金を稼げたなら、みんなにとってとても幸せなことだと思います。
稼ぐことを目標にするのではなく、まず自分ができることを丁寧に、地道にやれば他に変えられない価値になり、稼ぐことにつながるんじゃないかな。
価値=どれほどすばらしいか、またどれくらい大切かということ
お金があれば可能性は広がる
わー:
お給料はどうやって決まりますか?
基本的には、フリーランスという働き方は、自分がどれだけ周りや会社に貢献できたかで、報酬は決まります。決まったお給料はないんです。私は今27歳ですが、30歳、35歳、40歳と年齢を重ねるごとに、どんどんお給料が上がっていくわけではありません。なので実は結構大変です(笑)。
「私はこれだけの成果を出せるし、これだけ貢献できるので、〇〇円でお願いします」と、自分から言わないといけません。会社員だったらそんなことはなく、会社が金額を決めてくれます。自分で給料を決めるのは、なかなかない経験だと思いますね。
報酬=仕事などで、やったことに対していただくお金
わー:
今の報酬に満足していますか?
まだまだ満足はしていないですね。お金を得る、ということは全然悪いことじゃないから。私は「お金がないことで人生を諦めるのはもったいない」と思っています。だからこそ自分の力でお金を得て、可能性を決められる大人になるのが楽しみでした。
どんな背景があっても「自分の価値は自分で決めて、豊かに暮らしていきたい」という生き方です。お金があれば、何かをやりたいと思ったときに、チャレンジできる可能性が広がります。
わー:
家族に対して、どんな風にお金を使いたいですか?
例えば、感謝の気持ちを伝えるときに使いたいと思います。親孝行や家族孝行の時に、温泉旅行やモノをプレゼントするとかね。あとは、「おいしいご飯を食べさせてあげたいな」「母の日にお花をあげよう」という時にも、気持ちよくお金を使える人でありたいですね。
働くことで可能性を広げている
ケイティ:
川口さんは、何のために働いていますか?
なんのために働いているんでしょうね。
働くことで、自分も周りも幸せにするために働いている気がしますね。仕事以外でも趣味はたくさんあるので、働かずに毎日のんびり暮らして遊んでいても、多分毎日楽しいと思います。
でも働くと、困っている誰かを助けることができます。助けられたとき、助けたとき、どちらもすごく幸せを感じます。
わー:
「働く」と「お金」の関係についてどう思いますか?
働くと必ずお金が発生するので、切っても切り離せないものだと思います。
発生=この場合はお金が関わってくるという意味
わー:
では最後に、この記事を読んでいる子どもたちへメッセージをお願いします。
とにかく自分がやりたいと思ったことは、人の目を気にせずに何でもチャレンジしてもらいたいです。これから先、やりたいと思っても勇気が出ないこと、自分には無理だと思うことがたくさんあると思います。学校の中だったら委員会の立候補もそうだし、学校の外だったら新しい習い事を始めるのもそうです。
子どもたちは、これからいろんなことがあると思います。中学生や高校生になると、「無理」「どうせ失敗するだろう」「周りよりも出遅れちゃったかな」と思うことも絶対ある。でもだいたいのことは、ちょっとうまくいかなくても大丈夫なので、何度も諦めずにどんどんチャレンジしてもらいたいです。うまくいかなくて当然なんです。
私も失敗することもたくさんありました。試合に負けちゃったこと、うまくいかなかったこと、途中でやめちゃったことが、たくさんあった。空手で怪我したときも、3年間続けたかったけれど、もう無理だと心が折れてしまいました。
ケイティ:
そうなんだ……。
でも、チャレンジしてよかったと思っています。チャレンジしたからこそ、多くのことを学べました。あと、ミス・ユニバースやミス・インターナショナルなどの世界につながっているミスコンテストにもチャレンジしたことがあります。
実は10代の頃は、地元のモデルオーディションに受からなくて。普通ならそこで「才能がないのかも」と諦めると思うんですが、もっと自分が輝ける場所が別にあるのかもしれないと思い、一生懸命コンテストを調べて、そのコンテストも、諦めずに3回受けました。その結果、3000人ほどエントリーする日本大会のファイナルの、22人まで残りました。
チャレンジするまでは自分には無理だと思っていましたが、挑戦していくにつれ自分の強みや弱みが分かってきて、気づいたら前よりも自分のことが好きになっていました。自分のいいところだけではなく、周りの人のいいところにもたくさん気付きましたしね。
挑戦してよかったなあと思うことがたくさんあるので、2人もぜひ何かやってみたいことがあったら、「やってみたい」と口に出してみてください。そうしたら、必ずできるから!
ミスコンテスト=女性の美しさを競うコンテスト。見た目だけではなく、心やコミュニケーションの力なども見られる
オーディション=作品などに合う人を選ぶための審査
ファイナル=決勝
全員:
はい!
それと、何をするかも大事だけど、どんな時に自分が「幸せだな」と感じるかどうかが、本当に好きな仕事を見つけるコツだと思います。世の中にはいろんな幸せがあります。いろんなことに挑戦してみて、どんな時に自分が楽しいと感じるかをたくさん見つけてください。
私は、自分が完璧な人間だとは思いません。むしろ、できないことや落ち込んだりすることも多くて、今までの人生では周りの人に助けられてきました。だからこそ、その人たちを大事にしたい、恩返しをしたいという思いが強い。
豊かな人間関係をつくり、その関係から仕事をしたり、言葉や表現に表すことが人生で一番の幸せなので、今の仕事をしています。やりたいことがあってもなくても大丈夫です。それよりも、自分にしかない喜びを知っている人が、きっと一番自分の人生を楽しめると思うのでどんどんチャレンジしていってね。
全員:
ありがとうございました!
こんなお話もしました
ケイティ:
川口さんの好きなものは何ですか?
うーん、何だろう?ちなみに2人の好きなものは何ですか?
ケイティ:
漫画ですかね。『スパイファミリー』っていう漫画が好きです。
そうなんだね!読んでみよう。教えてくれてありがとう。漫画は、いつも読んでいるの?
ケイティ:
はい。
いいね、私も漫画大好き。わーちゃんは何が好き?
わー:
私は本が好きです。『怪盗クイーン』シリーズが、すっごくおもしろくて好きです。
読んでみますね。2人ともありがとう。本は私も大好きなの。
そうだな、あとは音楽が好きですね。聞くのも好きだし、実は自分で演奏するのも好き。ピアノとドラムができます。私は普段、何かしらずっと音楽を聞いています。コンサートやライブにはよく行くし、音楽を聞きながらお話をしたり、美味しいご飯を食べたりすることが好きですね。
ケイティ:
好きな食べ物はありますか?
一番好きな食べ物は、何だろう? あ、スープカレーが好きです。スープのようにさらりとしたカレーなんですよ。食べたことあるかな?
ケイティ:
食べたことあります。
おいしいよね。スープカレーは北海道発祥なので、なおさら大好きです。多いときは毎週食べちゃう(笑)。
リレーションデザイナーってどんな仕事?
・リレーションデザイナーとして、人事、MC、広報ライター、イベントファシリテーターの仕事をしている(川口さんの場合)
・人に何かを伝えたり、誰かのために何かをしたりする、人に関わる仕事
・【人事】会社の中で新しく人を受け入れたり、採用するときに面接をしたりする
・【人事】会社で働いている人たちの幸せは何かを考えて、働きやすいように会社のことを工夫して整える
・【MC】イベントで司会をする
・【広報ライター】世の中にあるものの魅力を見つけ、言葉にして伝える
・【イベントファシリテーター】人に話を聞いたり思いを引き出したりして、イベントを進めていく
リレーションデザイナーの魅力
・自分が興味あることすべてに触れられる
・常に多くの人と出会えて、多くの人や物事の魅力に関われる
・楽しいし学びがある
・自分の仕事で、周りがより幸せになる
大変なこと
・自分でいくつものスケジュールを同時に調整しないといけないほど忙しいこと
・自分とは違う考えの人と一緒に仕事をするときに、どうやったらいいかと深く考えるすることがたくさんある
「働く」と「お金」の関係について
・働くことは楽しいこと
・できなかったことができてくると、仕事はだんだん楽しくなる
・お金は本当に価値のあるものに使えるのはもちろん、人に感謝を伝えたり、困った人を助けたりもできる
・お金は人を救えるけれど、稼ぐためだけの生き方をすると何のために生きているかわからなくなる
・まず自分ができること、人よりも楽にできることを見つけて打ち込んでみることが、自信や能力につながって、社会の価値となり、稼ぐことにつながる
川口さんが思う大切なこと
・人との関係や出会いを大切にする。親しき中にも礼儀正しくいる
・自分の仕事で、周りがより幸せになること
・自分をまず幸せにする
・人の話をよく聞く(全部を人の意見に合わせない)
・なるべく優しい言葉を使う。表現を選ぶ
・最初の一歩はダメで当然
・好きな気持ちや楽しい気持ちを中心に考える
・自分がやりたいと思ったことは勇気を出して口に出し、すべて挑戦してやってみる
・どんな時に自分がリラックスしていて、幸せだと感じるかを見つける
【子どものためのおしごとメディアNARIWAI】
子ども取材班:ケイティ、わー
編集部:スナミアキナ、吉川ゆゆ
ライティング:吉川ゆゆ
サムネイルデザイン:南 裕子
編集長:吉川ゆゆ
主催:YOKARO